武南、久々の全国は「悔い」の残る初戦敗退… 求められるのは自分たちのサッカーを最初からやりきるメンタリティの部分

久々の全国はそれぞれに「悔い」の残る結果となった。令和5年度全国高等学校総合体育大会・男子サッカー競技は7月30日に東光スポーツ公園球技場ほかで2回戦を行い、埼玉県代表の武南は1-1からのPK戦の末に金光大阪(大阪)に敗れ、初戦敗退(1回戦シード)に終わった。

県予選を勝ち抜き、9大会ぶり21度目(県勢最多出場)のインターハイ本大会出場を果たした武南。久々の全国大会でも躍進が期待されたが、前半の出来が最後まで重く響く結果となった。

「相手の様子を見て、なんでもかんでも行けよとか、なんでもかんでも仕掛けようとか、そういう強い言葉をあまりかけずに、自分たちで相手の力をちゃんといなしていくというところは今年1年すごく大切にしてきた。だから、なんでもかんでも圧力をかけてやれよということはいままで言ってこなかったんです。だけど、さすがにちょっと今日の前半の出来はあまりにも様子を見過ぎだったので、いや、これじゃダメだよと。なんでもかんでもひとりでドリブルで突っ込むのと、圧をかけるというか、そこに距離感をもうちょっと短くして、プレッシャーに対する距離感を縮めたり、アプローチの速度を上げるとかっていうところが、なんでもかんでも一緒になってはまずいわけであって、そこを判断しきれずに様子を見る時間が多かった」(内野慎一郎監督)

MF松原史季(3年)も「35分✕2の短い中で、自分たちのサッカーが前半から表現できなかった」と悔しがる。前半は相手を見極めようとしすぎるあまりに攻守で積極性を欠く部分も。前に強い相手に対し、セカンドボールの回収率を高めながら組み立てていくことをひとつ狙いとしていたが、なかなかそこで拾えずに苦戦。その中でも松原やFW戸上和貴(3年)が仕掛ける姿勢を見せたが、ゴールに迫りきることができていなかった。守備ではCB小金井遥斗(3年)が決定機的なシュートをゴールライン上で弾き返し、守護神の前島拓実(3年)が好セーブを見せるなど耐えていたが、雨が強まった後半4分、相手の仕掛けから中央を割られ、失点してしまう。

武南は8分、FW杉沢旭浩(3年)を投入。前戦の数を増やし、3-2-3-2の形にすると、プレスもかかり始めボールを拾う機会も増加。しっかりとボールを扱いながら、推進力を見せていく。その中で13分、松原の左CKからCB岸雅也(3年)がドンピシャのヘディングで決めて同点に。終盤もMF飯野健太(3年)のカットインやMF高橋秀太(3年)のミドルシュートからゴールに迫ったが決めきれず。大会規定により、突入したPK戦で3-5で敗れた。システム変更した後半は攻め込む機会も増やしていただけに「もったいないゲーム」(監督)となった。

スタートの部分は今年のチームの課題。前島主将は「春先から課題となっていた気持ちの部分で、スイッチが入らないと自分たちのサッカーができないっていうところが、この夏になっても、この時期になっても露骨に現れてしまった。ハーフタイムの時に監督から「ここままじゃダメだ!」と喝を入れられたんですけど、それも監督から入れられたことであって、選手がやったことじゃない。自分たちからもっと後半のように前でできるサッカーをやらないといけないですし、言われてからやるんだったら遅い。正直、悔いが残るっていうのが大きいです」と話し涙。松原は「メンタリティの部分で、そこをやっぱりもう少し鍛えて、冬までにしっかり持って行けないと、また同じことを繰り返してしまう。せっかくの全国のチャンスというのを初戦というところで逃してしまって、やっぱりもっと上の景色も見てみたかったなっていうのはあったので悔しいですけど、でもここで、埼玉に帰った時に、自分たちでどう練習からやっていくかっていうのは、もう共通認識でみんなあると思いますし、わかっていると思う。やっぱりもっと練習のところから声の部分であったり、技術の部分ももちろんやらなくちゃいけないですけど、メンタリティの部分っていうのがやっぱり全然足りてないなっていうのと、自分のミスで縮こまっちゃう選手っていうのがすごく大きく目立った試合だったので、やっぱりそれじゃ全国では勝てないんだなっていうのは、もちろんこの舞台で経験できたっていうのはありますけど、そういうことがわかったので、それをやっぱり次に繋げて、冬、また全国の舞台に戻ってきたいです」と語った。

10年ぶりの全国大会はそれぞれにとって悔いの残る結果となったが、全国に出なければわからないこともあったし、感じられなかったこともある。それを糧に、全国の舞台でも最初から自分たちのサッカーをやれるような強いメンタリティを身につけて、この冬もう一度全国を目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

金光大阪 1(5PK3)1 武南
0(前半)0
1(後半)1
5(PK)3