西武台新座中が尾間木中に続き、V候補・南浦和中を撃破! 「奇跡を起こすなら…」勤勉で真面目な代が初の関東切符もたらす

27日、令和5年度学校総合体育大会県大会準決勝が浦和駒場スタジアムで行われ、西武台新座中とさいたま南浦和中が激突。PK戦に及ぶ激闘の末、西武台新座が初の関東大会出場を決めた。

「奇跡を起こすなら、こういう子たちなのかなとずっと思っていて……。あまりサッカー的な能力は高い子たちではなかったですが、すごいサッカー以外のところでも一生懸命やって、サッカーももちろん一生懸命やる。本当に入学時と比べると、伸びて、伸びて、伸びて、たくさん伸びてくれた。だからこそ、こういうギリギリのところで奇跡を起こしたのかなって。僕の言ったこととか、たまになんだそれって思うこともあったかもしれないですけど、ついてきてくれた子たちに本当に感謝したいし、本当におめでとうと言いたいですね」(西武台新座・山﨑健吾監督)

準々決勝の新人戦覇者・さいたま尾間木中に続き、優勝候補の一角とみられた南浦和も連破。西武台新座はこの日も各々が与えられたタスクをやり遂げ、個で勝る相手をチーム力で上回った。

「テクニカルなところも含め、長いボールがすごく強く、それに対してしっかりと対応しないとやられてしまうので、ロングボールをまずは抑える。そうなってくると必ずドリブルとかは出てくるからそれを粘り強く、最後は絶対にコーナーキックだよというのは言っていたので、1本はやられてしまいましたけど、2つ3つはやらせずにちゃんと守ってくれたので良かった」(監督)

前半15分、前日も良質なキックで2アシストを記録している南浦和MF中川璃玖士(3年)の直接コーナーキックから失点したが、その後は粘り強く対応。「相手はコーナーキックがめちゃくちゃ強い。そこは絶対にコーナーキックにさせないことを意識した」というDF二ノ宮剣(3年)は「(酒井)駿とかバック陣も強力なので自分でもガンガン行けた」と持ち味のフィジカルの強さを生かして身体を当て、そのままグイッともぐらせてマイボールに。実際、前半与えたコーナーキックは失点シーンの1本のみだった。DF酒井駿(3年)、DF高野惺太(3年)も準々決勝に続き、安定した守備。そして最後のところではGK太田陽斗(3年)が立ち塞がった。

攻撃面では相手の内に絞った中盤の両サイドを起点にショートカウンターからアタック。一方で「速く攻めるけど、スルーパスだけになっちゃっているので、ハーフタイム、クーリングでペナの前でもうひとつ、相手がガッツリ来るところでワンタッチ、ツーアタッチで、もうワンクッションできると多分チャンスになるよと言っていた」(監督)。同点弾はまさにその形からだった。

後半3分、西武台新座は右サイドで途中出場のFW齋藤勢那(2年)がボールを持つと、直接裏を狙うのではなく、10番FW佐藤拓実(3年)、MF林良樹(3年)を経由し左WBの吉田琉星(2年)のもとへ。「あのコースは自分のコースだった」(吉田)。左斜め45度からのシュートは県大会でゴールを決めるためにずっと練習していた形だった。「ボールをもらう前からもう振り抜くというのは決めていて、シュートを打った瞬間に入ったなと思った」。少し内に切り込みながら右足で放ったシュートは狙い通りの軌道を描き、ネットに吸い込まれるゴラッソとなった。

試合は延長戦でも決着がつかず、勝負の行方はPK戦へ。ここで躍動したのがキーパーの太田だ。昨年から守護神を務める太田だが、PKに関してはひとつ上の代からほとんど負けなし。「いつも1本は絶対に止めていたのでPKになったら100%勝つ」という自信を持っていたという。PKは「相手の心を読むというか、割きに跳んで防ぐ」直感派。「プレーをしながら、この選手はよく巻くなとか、この選手はまっすぐなシュートを打ってくるなとか、そういうのを見ていて、そういうのが大体PKになっても出てくる」。先に先行の味方が防がれた2本目、緊張感のかかる中で背番号1は右に跳んで止め返し大きくガッツポーズ。さらに3本目も再び右に跳んで連続ストップし、吠えた。最後は途中出場のDF新井唯斗(3年)が沈めて激戦に終止符を打った。

1年前は3回戦で南浦和と当たり、1-4と完敗。太田は「1年前は守備が甘くて、いまのチームとは真反対だった。このチームはあまり目立ってうまい子とかもいない。だけど、自分たちに一番できるのは真面目さとか、そういうところで最後まで守備を継続できるのが、一番成長したところかなと思います」と話す。今大会は3回戦以降、聖望学園中、尾間木、南浦和と個を特徴とした相手と対戦する中で、チーム力で勝ち上がってきた。MF植村風海(3年)主将は生徒会長、最後のキッカーを務めた新井は学級委員を務めるほか、勉強面でも頑張れる選手の多いという「勤勉で真面目」(監督)な今年の代はそれぞれが与えられたタスクを60分にわたり、しっかりと着実にこなしながら、チームとして繋がり、個で上回る相手を次々と撃破。そしてその3年生たちに引っ張られるように2年生たちも積極的にトライ。初の関東大会出場を掴み取った。

新たなチャレンジに植村主将は「関東という舞台はチームとしても初めてなので、勝ち上がってなんとしても全国に行きたい」と意気込み。関東でもチーム力で戦い、全員で勝利をものにする。

石黒登(取材・文)

試合結果

西武台新座 1(4PK2)1 さいたま南浦和
0(前半)1
1(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
4(PK)2