第98回全国高校サッカー選手権大会埼玉大会1次予選2回戦 狭山ヶ丘 vs 本庄第一
第98回全国高校サッカー選手権大会埼玉大会1次予選・2回戦。グループXの狭山ヶ丘高校は本庄第一高校を相手に先制を許したものの2―1と逆転勝ちし、代表決定戦にコマを進めた。
1次予選屈指の好カードとなった一戦。立ち上がりは互いに相手の出方をうかがう展開となる中で先にスコアを動かしたのは本庄第一だった。前半15分、MF吉成柊斗の右コーナーキックからニアサイドに飛び込んだMF内田土竜がダイビングヘッドでネットを揺らし、先制した。
一方、狭山ヶ丘は序盤縦へのボールがことごとくディフェンスに弾かれるなど苦しんだが、徐々にボールを持ってリズムを掴むと、前半ラストプレーとなった42分、10番の高木慎太郎のクロスを呼び込んだMF吉野斐斗がキーパーの動きを見ながらファーサイドに流し込んで同点に。
この1点で勢いに乗ると、さらにハーフタイム明けには吉野が今度は逆転弾を叩き込んだ。後半6分、左サイドでボールを持った2年生MFはFW松山ジョセフ丈にボールを預けると、一気に外を回り込みながらリターンを受けてドリブルでエリア内に侵入し、ニアを撃ち抜いた。
後半は相手の出方に対して柔軟に対応しながら、その時間、状況、局面に応じたプレーを発揮。終盤の本庄第一の攻撃も焦らずしっかり跳ね返した狭山ヶ丘が2ー1で逆転勝利を飾った。
キーワードは「勇気」だ。「うちの弱さは大事なトーナメントの苦しい場面で勇気を持ってできないことだった。今日は勇気を持ってやろうと話をしていました」と荒井佑久也監督。インターハイ予選ブロック決勝・細田学園戦はその「勇気」を出すことができず、悔しい想いをした。
この日も序盤は蹴ってくる相手に対し、蹴り返す展開となってしまい自分たちの戦い方ができず先制点を許したが、前半中盤以降はセカンドボールを拾うと前からハイプレスをかけられても恐れずにもう一度作り直し、中盤で時間を作ってサイドアタックなどから攻撃を展開、逆転に繋げた。指揮官も「信じて自分たちが5ヶ月間取り組んできたことが形になった」とした。
今年もこれまでの3大会すべてで県大会に出場し、新人戦ではベスト8にも入った本庄第一を倒して勝ち上がったことは、今後の県の舞台での戦いを見据えてもひとつの指標となるもの。
今年は荒井監督の下、ボールを繋いで主導権を握る新たなスタイルにチャレンジ中。「実際にこの8月の段階でもまだすべてのプレー原則は構築しきれていない。10月に照準を合わせてきた中でかなり苦しかったですけど自分たちもできるんだという自信になったと思います」。
大きな自信を手にまずはしっかりと次戦を勝ちきって、本大会で完成形を見るのが楽しみだ。
内に秘めた「負けず嫌い」の持ち主 2年生MF吉野が2ゴールで逆転劇の主役に!
「先輩をこんなところで引退させないという想いと自分も点を決めたいというのがあった。それが両方できたのですごく嬉しかったです」。値千金の同点弾を吉野斐斗はそう振り返った。
前半からドリブル突破で存在感を放っていた左サイドアタッカーは0ー1で迎えたアディショナルタイム、逆サイドの高木のクロスを呼び込むとしっかりとキーパーの位置を見ながらファーサイドに流し込み直後に前半終了の笛。攻め込みながらもこのまま得点がない時間が続けば苦しい展開に陥りかねなかっただけに、まさにここしかないという時間帯でのゴールだった。
指揮官曰く「内に秘めた負けず嫌い」の持ち主。本人も「1対1とか、そういう自分の武器ではやっぱり負けたくない。練習でも1対1の部分では絶対に負けないとか、そういうのは心がけながらやってきた」という。逆転弾はその「絶対に負けたくない」1対1の仕掛けから。
後半6分、前線の松山に当てて自分についていたサイドバックを剥がすと、自らは一気にスピードアップし大外を回ってリターンを受けてエリア内に侵入。「1点目はファーに決めたのでキーパーが少し外に寄っていた」と、冷静にニアサイドを撃ち抜いて逆転劇の主役となった。
次はインターハイで敗れたブロック決勝だが、「プレッシャーはあると思うんですけど、自分たちならそこに打ち勝てると思う」とした2年生MFは「選手権は全国まである。先輩たちと1日でも長くサッカーができるよう、自分が何点でも、いくらでも決めて勝たせられるような選手になりたい」と意気込んだ。ゴールを積み重ねて、先輩たちとともに「長い冬」を目指す。
石黒登(取材・文)