5戦連続の1-0で「ウノゼロ劇場」ここに完結! 一致団結、粘りの正智深谷が大会初V、オナイウ阿道擁した13年以来となるインハイ全国へ

高校総体県予選・決勝。正智深谷は1-0で武南を下し大会初V。そして日本代表FWオナイウ阿道を擁し4強入りを果たした2013年大会以来7大会ぶりとなる全国出場を決めた。

5戦すべて1-0で「ウノゼロ劇場」ここに完結―。正智深谷・小島時和監督は「失点0で1点で勝つ、1-0のドラマ完結という感じで、ホッとしています。攻撃に関してはまだまだな内容だったんですけど、とにかくこの大会でのしぶとい守備、集中した守備というところでは結構ほつれたところもあった中で、失点0で終われたというのはそこはもう褒めるべき点。

まだ全国で勝つサッカーという意味では、もっとやっていかなきゃなという反省点もあります。ただ8年ぶりの代表、それから初優勝というところの部分では厳しい中でもみんなで頑張って、一致団結しながら、もぎ取ってくれたと思っているので、そこは嬉しく思っています。子供たちはよくやった」と激戦を勝ち抜き、総体予選では初のタイトルを掲げた選手たちを労った。

序盤から攻め込んだのは武南だった。伝統のパスワークを交えながら準決勝同様、DF加藤天尋(2年)、DF重信有佑(2年)が高い位置を取りつつ、鋭いサイドアタックを見せる。前半9分には加藤のアーリークロスから重信と両WBで決定機を創出。またFW水野将人(3年)の仕掛けやDF中村優斗(3年)のミドルシュートなどで相手ゴールに迫った。

正智深谷は準決勝の昌平戦に続き、この日も押し込まれる展開となったが、それでもそういった中でワンチャンスをしたたかにものにする。飲水タイム開けの前半23分、ハーフウェイライン付近でボールを受けたFW山口陽生(3年)はキーパーが前目にポジショニングを取っていることを見るや右足を振り抜く。空中でグングンと伸びたシュートは下がりながら対応した武南GK牧之瀬拓人(2年)の伸ばした手を越えてネットに突き刺さった。推定40mの超ロングシュート。山口は今大会ノーゴールだった中で決勝の大舞台で結果を残した。

後半も1点を追う武南が攻勢に出る。チームの舵取りを任されるMF山田詩太(2年)が配球し、スピード豊かな水野がドリブルからの抜け出しからシュートを試みる。それでも正智深谷は「自分たちはチャレンジ&カバーが強み。チャレンジにいったらもう素早くカバーに入る」(DF森下巧/3年)ことを徹底し、2枚目、3枚目がしっかり足を伸ばしてディフェンス。そして最後の局面では守護神・小櫃政儀(3年)が安定感を持ってゴールは許さない。

武南は終盤、空中戦に強さを持つFW別所龍馬(3年)を投入。クロスボールからゴールを取りにかかるが、ネットを揺らすことが出来ない。アディショナルタイムにはコーナーキックの連続攻撃から最後は水野が決定的なヘディングを放ったが、ここはGK小櫃がファインセーブ。そしてそのまま逃げ切った正智深谷がインターハイ埼玉県代表を掴み取った。

気づけば2回戦から築いた1-0の山は「5」を数えた。小島監督は「勝つ方程式といっているんですけど、0で守って、最後1点取れば勝ちなんだから、とにかく良い守備をして、泥臭くでも1点取れば勝ちだからと。なかなかできることじゃないんですけど、子供たちは今回のインターハイ予選で「0」で終わらせたということはよくやったと言わざるをえない」と目を見張る。

実際、春先まではここまで堅守のチームというわけではなかった。関東大会予選は4試合を戦ってクリーンシートはわずか1。準決勝の西武台戦では0-4と惨敗を喫した。森下も「(西武台戦は)やっぱり個人個人がビビっていたんじゃないかなと思います」と振り返る。

それでもここでチームとしてのスイッチが切り替わる。「関東予選が終わってからやっぱり守備から入ろうとなった」(森下)「その西武台4-0からみんなの意識が変わって、そこからもう練習も一段階ギアが上がった」(小櫃)。もともと『走れる代』と言われていた世代。球際で全員で身体を張るところやセカンドへの反応、素早いカバーリングなどを徹底していくと守備面は驚くほど向上していく。そして正智深谷にとってインターハイ予選初戦となった2回戦の成徳深谷戦では「まさにみんなで守ってみんなで攻めて1-0で勝てた」と小櫃。良い守備からの良い攻撃、そして1-0でも勝つという現在のスタイルが確立された瞬間だった。

3回戦の西武文理戦、準々決勝では自分たちと同じく関東予選4強の浦和西に対しても1-0で勝利。結果は自信を生み、自信はまた結果を生む。「試合をこなすことでやっぱりチームにも自信がついたと思いますし、本当に無失点で勝つということは難しいことで、自分たちもそれを自覚しているので、自信がついたんじゃないかなと思います」と森下。迎えた優勝候補・昌平との準決勝では陣形をコンパクトに保ちながら、最後のところではしっかりと身体を張って封殺。決勝でも変わらぬ自分たちのスタイルを貫き通して8年ぶりのインハイ全国を決めた。

前回出場時は日本代表FWオナイウ阿道(横浜F・マリノス)を擁し全国4強に進出した。

「今回阿道が代表デビューして、ハットトリックして、ちょうどインターハイ予選に入る。その阿道の勢いと、阿道がいた時に3位になったこと。そういう繋がりがあるのかなと勝手に思っていた中で初優勝ということで、いろいろな流れはあるのかなとは思いましたね」(小島監督)

その頃からもちろん選手も変わり、サッカースタイルも変わった。その中でも変わらないものもある。正智深谷の掲げる「一致団結」のスローガン。今大会は選手に加え、スタッフ、そしてスタンドがひとつにまとまり“一致団結”した上で掴んだ優勝。コロナ禍で個々の繋がりが希薄になっているといわれるいまだからこそ、このスローガンはより光って見える。

8年ぶりの全国も一致団結、粘りのスタイルで勝利を狙う。小島監督は「やっぱり埼玉県の代表なので最後まで負けたくない。そういう気持ちで、とにかく目の前の相手を倒していく。“昌平を倒した正智”だと絶対に言われるんですから、こういう粘りがあるのかとか、こういう部分があるのかというところ(自分たちの特徴)をやっぱり出していきたい」。今大会腕章を巻いた森下は「絶対負けないという気持ちを持って、無失点で勝っていくのが理想」とし「阿道くんの代はベスト4まで行っているので、ベスト4超えを狙いたい」と先輩越えを誓った。

石黒登(取材・文)

試合結果

正智深谷 1-0 武南
1(前半)0
0(後半)0