第95回全国高校サッカー選手権大会 2回戦 正智深谷 vs 関東第一

 第95回全国高校サッカー選手権大会第3日は2日、首都圏8会場で2回戦16試合が行われ、埼玉代表の正智深谷は関東第一(東京B)に2-1で逆転勝ちし、初のベスト16入りを果たした。1回戦に続いての逆転勝利で2連勝。埼玉県勢が2勝したのは、西武台が8強に進んだ第89回大会以来、6大会ぶりとなる。3日の3回戦でベスト8を懸けて創造学園(長野)と浦和駒場スタジアムで対戦する。

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選手をはじめ正智深谷の関係者を除き、観戦した大半の人々が関東第一の勝利を予想していたはずだ。

立正大淞南との1回戦に続き、またしても前半に先行された。関東第一は9分、左CKを短くつないでMF菅屋拓未がクロスを上げた。これをエリア内でのハンドの反則からPKを献上。10分にGK戸田海斗がMF冨山大輔のシュートをいったん止めたが、こぼれ球を詰めていたFW林健太に押し込まれて失点。

悪いことは重なるものだ。26分、ボランチ谷口瑛也が「著しく不正なプレー」との理由で一発退場に追い込まれる。故意ではないが、上げた足がMF石井賢哉の顔面にかかってしまったのだ。

小島時和監督らベンチの首脳陣は慌てた。名参謀の金井豊コーチらと善後策を練り、いろんな選択肢の中から緊急事態に向けた戦略が採用された。まずは埼玉県予選から必ず後半途中に起用され、流れを変えてきたFW田島帆貴を前半29分という今までにはない早い時間帯で送り込んだ。

1人少ない陣容は致命的なハンディではないが、2回戦での正智深谷は11人で戦っていたときからリズムが悪く、本来の速さを生かしたアタックができないでいた。そこへ谷口の退場だから、旗色がますます悪くなるのは当然だ。ジョーカー的存在の田島の投入も有効打とはならず、時間だけが経過していった。

小島監督は「奇跡」という言葉を連発した。そう、確かに奇跡と言ってよかった。完全な負け試合をまず振り出しに戻した。

後半39分に獲得した右CK。主将のMF小山開喜が遠いポストに蹴ると、DF田村恭志が頭で落とし、混戦からDF金子悠野が利き足とは違う右足で豪快に同点ゴールを突き刺した。残り時間は少ない。ロスタイムも3分だ。

小島監督は「このままPK戦に入ると思っていた。それが時間内で決着したのだから、震えた。夢ではないのかと思った」と、ロスタイムに入ってからの勝ち越しが信じられないような口ぶり。言葉は上ずり、次々とまくし立てる口調に興奮冷めやらぬ様子がよく伝わってきた。

3分のロスタイムも2分経過。この戦況下でお返しのPKを獲得し、1回戦に続いて小山がキッカーを務め、1回戦とは反対側の右隅に決勝点を蹴り込んだ。

埼玉県予選でも、初戦の2回戦と3回戦の後半途中から登場しただけのFW上原翔汰が後半24分からピッチに立っていた。後方からのロングキックをFW梶谷政仁がヘッドで落とし、こぼれたボールを上原が強シュート。関東第一のDFがたまらず手を出してハンドの反則から、PKを獲得したのだった。

上原は1回戦でベンチ入りから漏れている。「今回、メンバーに入れてもらったのだから結果を出さないといけなかった。団結すれば勝てると信じていたので、やってやろうと思いました」と起用に応え、ひと仕事やり終えた充実感が広がった。

金子も殊勲者の一人だ。1回戦では得意のミドルシュートが、相手DFのハンドを誘って決勝点となるPKを奪取している。金子は「自分はDFだけど、常にゴールを狙っている。1回戦でもPKを取った? はい、運がいいですね」とおどけた後には表情を引き締め、「10人で厳しい戦いになったが、誰もあきらめなかった。むしろ、やってやろうという気持ちが強かった」と話し、不屈の闘争心で臨んだことを明かした。

3度目の出場で初勝利したら、こんな劇的な勝利で2勝目を挙げた。小島監督は「もう一つ勝って、神奈川(準々決勝)でも勝って、埼玉に帰ってこられたらいいですね」とドラマチックな勝利に気を良くしたのか、ベスト4を視野に入れていた。

河野正(取材・文)

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