第95回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 創造学園 vs 正智深谷

第95回全国高校サッカー選手権大会第4日は3日、浦和駒場スタジアムなど首都圏4会場で3回戦8試合が行われ、埼玉代表の正智深谷は出場2度目の創造学園(長野)に3-0で快勝。初のベスト8へ進み、5日の準々決勝で昨年12月のプレミアリーグ・チャンピオンシップを初制覇し、高校生年代の王者に輝いた青森山田(青森)と等々力陸上競技場で激突する。埼玉県勢の8強進出は、第89回大会の西武台以来6大会ぶりとなる。

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創造学園に1本多い10本のシュートを打たれた。バーをたたいた一撃あり、DFが間一髪でクリアした場面あり、目を覆いたくなるような絶体絶命の状況ながら、シュートミスに2度も救われた。

それでも無失点に封じた。1、2回戦はいずれも前半に先制点を奪われ、後半の2得点で逆転勝ちしてきたが、3試合目にしてようやく自慢の堅ろうに輝きを取り戻した。

小島時和監督は「初のベスト8、初の先制、初の完封ときょうは初もの尽くしでした」と言って喜びをかみ締めた。

前半19分、初出場した2年生MF海老塚宝良が左からのパスを預かると、少しタメをつくって右のスペースへと配給。MF鈴木涼太が右足を振り抜き、豪快な先制弾をゴール左に突き刺した。海老塚は前半ロスタイムにも2点目につながる絶好のボールを供給している。やや体勢を崩しながら、右サイドから中央へグラウンダーの速いパスを出すと、相手DFに先んじられたが、走り込んでいたFW新井晴樹が奪い返し、さらに後方からプッシュアップしてきた主将のMF小山開喜へ渡して2点目もおぜん立てしたのだ。

2回戦で2年生のボランチ谷口瑛也が一発退場となり、3回戦は出場停止。代役として起用されたのが同じ2年生の海老塚だった。埼玉県予選は初戦の2回戦で、後半35分から谷口と交代して5分あまり出場しただけだ。それでも小島監督は金井豊コーチの進言を受けて起用に踏み切った。

「テクニックがあるし、(今大会初先発させたFW)田島(帆貴)との絡みも面白いと思った」と指揮官は抜てきした理由を説明し、「雰囲気にも動じず、よくやってくれた」と賞賛した。

シュートこそ打てなかったが、小気味良いドリブルと視野の広さを生かしたパス出しで攻撃に貢献。さらに守備でもしつこく追い回して重圧を掛けた。「初めは少し緊張しましたが、1点目のアシストをしたことが大きかった。あれで硬さが取れました」と笑顔で答えた。

谷口とは同級生であり、同じポジションでもある。「谷口の分まで勝てて良かった。あいつのためにも頑張ろうという思いが強かった。試合前に『頼んだぞ』と言われ、勝った後はスタンドから『ありがとう』と言われました」と快勝した喜びもさることながら、チームメートのために尽力した充実感も手伝って満面に笑みが広がった。

試合終了間際には、そろって後半途中からピッチに立ったMF須藤寿音が、軽やかなドリブルで敵陣を切り裂いた。FW梶谷政仁が最終パスを左足シュート、GKにはじかれながらもゴールインした。

勝負が決したロスタイム、小島監督は交代枠を目いっぱい活用する。4人目としてJ2千葉から今季、J1浦和へ完全移籍したオナイウ阿道の弟、情滋を送り込んだ。1年生で唯一登録メンバーに入った快足MFである。GK戸田海斗から左でボールを受けると、タッチライン際をロングラン。正智深谷の応援席の前を突進すると、この日一番の歓声がわき起こった。

小島監督は「ベスト8は一つの目標。うれしさよりほっとしている」と述べた後、「これから先は厳しい戦いになる。青森山田にはズタズタにされるかもしれないが、粘れるかもしれない。ともかく埼玉スタジアムに戻ってこられるように頑張りたい」と意気込み、小山は「もっともっと上に行きたい」とベスト8ではちっとも満足していない。

埼玉県勢の準決勝進出は久しくない。武南が国見(長崎)に1-3で逆転負けした第71回大会から、24年も遠ざかってしまった。王国復興の足掛かりにするためにも、勝ってもらいたいと願うばかりだ。

河野正(取材・文)