全国高校サッカー選手権埼玉県大会 準決勝 昌平 vs 聖望学園

第98回全国高校サッカー選手権埼玉県大会・準決勝(10日、Nack5スタジアム)。新人戦覇者・昌平とインハイ準V聖望学園の一戦は2ー0で勝利した昌平が3年連続の決勝進出を決めた。

互いに攻撃的なスタイルを貫く両チームの一戦。立ち上がりは一進一退といった展開の中、昌平はプレッシャーのきついボランチから攻撃の起点を一列前に移すとアタックが活性化する。

敵陣でポゼッションしながら、準々決勝・正智深谷戦4ゴールのFW小見洋太が抜け出すシーンを作るなど圧をかけていくと前半30分、ゴール前でワンタッチパスを繋ぎ、MF鎌田大夢の右クロスからの混戦を攻撃の起点となったMF紫藤峻が右足できっちりと仕留めて先制した。

1ー0で折り返すとさらに昌平は後半3分、中盤でボールを持ったMF須藤直輝がドリブルでひとつ持ち出して小見にスルーパス。これはディフェンスにカットされたが、こぼれ球に小見の動き出しで空いたスペースに入った紫藤がゴール隅に的確に流し込んでこの日2点目とした。

一方、前半はMF西澤脩瑛のミドルシュート1本に終わった聖望学園も後半中盤以降から反撃。抜群の個を持つMF塚田悠太郎が中盤から持ち上がってシュートで怖さを見せると、間延びした敵陣でパスを繋ぎ、らしい攻撃が出てくる。26分にはスローインから塚田のクロスに長い距離を走ったDF島村颯汰が滑り込んだが、昌平GK牧之瀬皓太ががっちりと掴んでゴールは許さず。終盤にはFW森田悠仁のクロスに塚田が頭で合わせたが枠を捉えることができなかった。

後半は攻め込まれながらも「キワのところの勝負」でしっかりと守り抜いた昌平が武南、正智深谷戦に続き0に抑えて2ー0で勝利。3年連続4度目となるファイナル進出を果たした。

因縁の舞台に戻ってきた昌平 GK牧之瀬「あの悔しさは全国出場でしか晴らせない」

昨年一番悔しい景色を経験した昌平が借りを返すべく、埼玉スタジアムへの帰還を果たす。

昨年はインハイで全国3位に。選手権予選を制し、再び全国でリベンジを掲げた中で浦和南とのファイナルは後半11分にDF吉田航のゴールで先制。しかし21分、31分と連続失点し連覇の夢は手中からこぼれ落ちた。試合後は優勝トロフィを掲げる相手を見上げながら涙にくれた。

MF須藤直輝にとってもあの日の光景はいまも記憶に刻まれている。「自分も何もできずに終わってしまった悔しさもあるし、先輩たちにうまい、強い選手たちが集まっていた代だったので、あの先輩たちと全国に出たかったという気持ちはあったので悔しかった。自分の人生で一番悔しかった瞬間ですし、自分は選手権で全国に出るのを目標で来ているので、やっぱりあの光景は一生忘れない。次は喜べるように強い気持ちを持って1週間練習に臨んでいきたいです」。

下級生として唯一スタメン出場したGK牧之瀬皓太は「あの光景はもう二度と見たくない」と語り、「去年の悔しさは決勝で勝って全国大会に出場することでしか晴らせない」とした。

チームが待ち望んだラストピース 怪我から復帰したMF紫藤峻が大舞台で2ゴール

怪我からカムバックした背番号7が中学年代を過ごしたアルディージャの本拠地で輝いた。

MF紫藤峻は前半自らが起点となった攻撃で混戦を仕留めて大会初得点。さらに後半立ち上がりにはゴール前でこぼれ球に走り込むと「あれはもうイメージ通りでした」と右足でコースに流し込んで勝負を決めた。「前回の試合自分は外していたので今日は決めてやろうという気持ちが強かったですし、今日2点取れてチームに貢献できたので次も頑張りたいです」と喜んだ。

今年は5月に左足首を脱臼骨折を含む複数箇所骨折。さらに靭帯も損傷し、復帰までに4ヶ月を要した。「インターハイで正智深谷に負けて、その時自分は見ているだけしかできなくてチームに迷惑をかけてしまった。その分選手権で取り戻そうっていう気持ちがありました」。

迎えた今大会、最初の3戦はいずれも途中出場だった中、3回戦の武南戦では紫藤の投入後に明らかにリズムが変わり1ー0の勝利に貢献。敵将も「紫藤が入ってきてやっぱりスピードが変わった。わかってはいるけど 体力が辛いところであれだけ勇気を持って安定してドリブルで進入できたらやっぱり強い」と認めた。準々決勝の正智深谷戦からはスタメンに戻ってきた。

「怪我をするまでは自分が点を取れるイメージがあったんですけど、復帰してから今日までまだ1点しか取れてなかったんです。いつか自分が取ってやろうという気持ちはありました」。

この日の円陣では指揮官から「何点取る?」と聞かれて「2点取ります」と宣言。ハットトリックではなく2点というところにリアリストな1面を見せたが、「今週は練習から点が取れていてイメージは良かった。それが今日の試合に出たと思います」。有言実行の2発だった。

昨年はメンバー入りならず応援席で先輩たちの悔しそうな表情を見ることしかできなかった。「今年は自分がやってやろうという気持ちはありますし、去年のリベンジとして絶対に勝ちたいです」と紫藤。チームが待ち望んだ攻撃のラストピースが昌平を2年ぶりの頂点に導く。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 2-0 聖望学園

1(前半)0
1(後半)0