決めれば勝てたで終わらせない 成徳深谷MF稲積俊音主将はもう一度「この負けがあって良かった」と思えるように成長する

再びこの経験を糧に成長し、インターハイ、選手権へ。正智深谷との“深谷ダービー”となった決勝戦、成徳深谷は2度のビハインドを追いつきながらもPK戦の末に涙。MF稲積俊音(3年)主将は表情に悔しさも見せつつ、「この負けがあって良かったなと思えれば」と前を向いた。

今大会はセットプレーからゴールを量産。最初の同点弾もセットプレーの流れで、DF山谷康太朗(2年)のクロスをMF西村優悟(3年)が落とし、10番のMF福島雪翔(3年)が決めた。

「新人戦前はセットプレーでほとんど得点できなかった中で、本当にここ最近、関東大会に入ってから順調に毎試合取れていたので、そこはすごい強みとして出たんですけど、逆に流れからの点がないので、そこは関東、インターハイまでに修正してやっていきたいっていうのはあります」

好調のセットプレーの要因は、マーカーを剥がす動きにあったと話す。「映像を見てもらえればわかると思うんですけど、成徳の選手って(セットプレーの瞬間に)ほとんど相手の前を取れている。それがひとり取れれば決める確率が30%ずつだいたい上がっていくので、それをいつでも100%に近づけて、ボールが来た時にチャンスを決めきるっていうふうに意識しています」

延長前半11分に再び勝ち越しゴールを許したが、その2分後にDF藤村岳渡(3年)、後半からボランチに上がったDF増田蹴人(3年)の2人で右サイドを崩し、クロスに今大会途中出場から3点を奪っていたスーパーサブのFW大森壮馬(3年)が滑り込んで再度同点に追いついた。

しかし、PK戦で敗戦。2018年以来、2度目の関東予選タイトルとはならなかった。前半から圧力をかけてチャンスも作っていただけに残念な敗戦となったが、稲積主将は「決めれば勝てたっていう一言で終わらせたくないですし、終わらなくて良かったなって自分は思いました」と話す。

「全然守備もハマっていなかったし、これじゃあ昌平、西武台には絶対に通用しない。逆にあそこで決まっちゃってて、自分たちのダメなところがわからず、関東本戦、インターハイ、リーグ戦を迎えるより、新人戦の負けの時も、あの負けがあって良かったなっていうふうにいまは思えているので、そこはもう切り替えて「この負けがあって良かったな」と思えれば全然良いと思うので。インターハイ、選手権で全国に出ることが一番なので、そこはブレずにやりたいです」

「(個人としても)全然ダメだった。もっと自分が中盤でドリブルだったり、剥がしたり、パスを出してミドルシュートとか、もっとやりたい。いろんなことを、自分ではできると思っているので。絶対本当に関東本戦、インターハイには仕上げて、もっとチームを自分が勝たせたいです」

新人大会では初戦敗退。それでもその敗戦を糧に成長し、“あの日”からちょうど60日目だった今大会1回戦で市立浦和に見事リベンジ。その後も勝ち進み、2度目の関東大会切符を掴み取った。もう一度、あの日の敗戦が自分たちを強くしてくれた――、そう言えるように成長していく。

石黒登(取材・文)