全国高校サッカー選手権埼玉県大会ラウンド16 国際学院 vs 花咲徳栄
第98回全国高校サッカー選手権埼玉県大会ラウンド16(26日、昌平会場ほか)。インハイ8強の国際学院と花咲徳栄の一戦は1ー1で突入したPK戦の末に国際学院が4ー3で競り勝った。
先にスコアを動かしたのは花咲徳栄だった。前半29分、ディフェンスがエリア内でクリアにもたついているところをFW塩田俊介が果敢にプレスをかけて奪うと、10番のMF七海永遠の左クロスに2年生FW三橋由詩が走りこみながらドンピシャのヘディングで合わせて先制した。
しかし国際学院もすぐさま反撃。失点からわずか3分後の前半32分、左サイドのMF佐野佑真が技術を見せ3人4人と抜いてクロス。これをMF小河原龍太が頭で決めて同点に追いついた。
その後は国際学院が持ち前の攻撃力を見せて攻め込む場面を増やすが、花咲徳栄も1回戦で流れを呼び込んだ保竹利紀、和田遼の両CBを中心とした堅陣でゴール前に蓋をする。花咲徳栄は終盤にセットプレーから好機。七海のフリーキックからファーサイドで和田の放ったヘディングはゴール上部を捉えたが、国際学院GK持田瞬也が好反応を見せて勝ち越しとはならない。
試合は1ー1のまま延長戦へ。国際学院は途中出場のMF中谷力、FW阿部智広が仕掛けるが、花咲徳栄も主将の保竹が気迫のこもったスライディングで決勝点は許さない。両軍ともに終盤まで高い集中力を持って戦った激闘は100分で決着がつかず、勝負はPK戦へと委ねられた。
PK戦も白熱の展開となった。ともに2人が成功した3本目、国際学院GK持田が先に止めれば、続いて花咲徳栄GK高野悠も止め返す。勝負が決したのは5本目。持田がこの日2本目のセーブを見せると、後攻・国際学院はエース佐野がきっちりとネットに蹴り込んで激戦を制した。
酒井宏治監督は「必ずこうやってトーナメントを勝ち上がってきたチームというのはどこも粘り強い」としつつ、「やっぱりうちは1ー1じゃなく点の取り合いにならないと国際らしくないと思うので、そこは徹底してやっていく」。兄と同じ全国を目指す佐野は「自分のところがまだまだできていない。本当に自分がこのチームのエースとして自覚を持って、もっともっと得点であったり、相手が怖いと思うプレーができるようにならなければいけない」とした。準々決勝・埼玉栄戦は国際学院らしい「攻撃サッカー」でインハイ予選に続く4強入りを狙う。
「約束の場所」で激戦を繰り広げた2人。「あいつがいたから」 国際学院GK持田瞬也
国際学院の守護神・持田瞬也は武器の反応で後半相手のセットプレーを防ぎ、「全部自分の間合いでできた」というPKでは3本目と5本目をともに右で仕留めて、チームを勝利に導いた。
この舞台は「約束の場所」でもあった。花咲徳栄GK高野悠とは蓮田市立黒浜西小の同級生。組み合わせが決まると「ベスト16で当たるから負けんな」と最後の選手権での再会を誓った。
そして2人はしっかりと勝ち上がって多くの観客が見守るこの舞台で相まみえることになる。試合はともに前半に1点は許しながらも勝負を決める次の1点は取らせず。持田は後半32分、セットプレーからの相手CBのヘディングをジャンプ一番でセーブ。高野も11本のシュートを浴びながらも最少失点で抑えた。延長戦でも決着はつかず勝負の行方はPK戦にもつれ込んだ。
反応には自信のある持田だが、実はPKはあまり得意ではない。高校2年次のインハイ予選2回戦・深谷第一戦は勝利したもののふた回り目までもつれ込ませた。昨年は関東予選もここ昌平グラウンドでPK戦の末に敗退。酒井監督も「もちろん止めてくれるイメージはあったが、蓋を開けてみるまでわからなかった」と話す。それでも「あいつがいたから」闘志に火がついた。
「もうずっとボールを見て、自分の間合いを作っていて、自分が得意とするゾーン、間合いまで持っていって、ぶっちゃけ全部自分の間合いだったんです。先走って1本だけ外しちゃったんですけど、そのほかは全部自分の間合いだったので、そこは今日良かったかなと思います」。
互いに2本ずつを成功させた3本目。最高潮まで神経を研ぎ澄ますと右に飛んでセーブして大きくガッツポーズ。それでも「あいつがいたから」と思っていたのは持田だけではなかったのだろう。直後、高野も負けじと飛びついてセーブ。「やるな!」という笑顔で抱擁を交わす。
4人目のスポットに立ったのは持田だ。「普通はあまりキーパーは蹴らせないんですけど、蹴れるやつと言ったら顔を上げたのが彼だった」(酒井監督)。これを落ち着いて決めると、迎えた相手の5人目。「いつもだったら多分入っていたと思います」という1本は「最初右手を出したんですけど、届かないなと思って、逆手を出したんですよ。それは自分の判断が良かったのかなと思います」。ゾーン特有の超感覚で出した左手に当たったボールはポストに当たって枠外に逸れ、この試合2度目の雄叫びの後に誇らしげに背番号1をアピールした。
試合後、激戦を繰り広げた盟友からは「頑張って。スタジアム行くからって言われて。もう負けられねえな、ここからだなって。ホッとしちゃった部分もあるんですけど、8に入っただけなのでこれからだなって」。気持ちを新たに持田は友の想いも背負って全国の舞台を目指す。
石黒登(取材・文)
試合結果
花咲徳栄 1(3PK4)1 国際学院
1(前半)1
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)0
3(PK)4