全国高校サッカー選手権埼玉県2次予選3回戦 昌平 vs 国際学院

選手権予選3回戦が28日に各地で行われた。昌平高校グラウンドでも2試合が行われ、第1試合は今年県内3冠の昌平高校と国際学院高校が対戦。試合は1ー1で迎えた後半34分にMF山下勇希が決めたゴールが決勝点となり、2ー1で昌平が準々決勝進出を果たした。

今年は新人戦、関東予選、総体予選と県内3冠の昌平。選手権予選も第1シードで浦和西高校とともに3回戦からの出場となったが、迎えた初戦は簡単なものとはならなかった。

序盤15分はほぼイーブンの展開。「相手の運動量も多く、最後のところの背後を取る動き、うちの戦術的、戦略的な部分をケアするというところに関してはすごく重視したディフェンスだった」と昌平・藤島崇之監督。国際学院の集中した守備網を前に苦戦を強いられる。

それでも昌平は前半20分過ぎに左サイドで受けたFW佐相壱明から山下、MF髙見勇太と細かくつないで最後は逆サイドのDF塩野碧斗がシュート。これは惜しくもサイドネットとゴールとはならなかったが、同校らしい小気味の良いパス回しから徐々に前に運ぶ回数を増やしていくと、その後迎えた「ワンチャンス」を大会注目のストライカーが決めて試合を動かした。

先制点が生まれたのは前半33分。MF原田虹輝がエリア手前で持ち出すと、塩野のグラウンダーのクロスに佐相がダイレクトで突き刺して均衡を破った。今大会は「決めきるところ」にかけているという背番号9のゴールで昌平が1ー0とリードしてゲームを折り返す。

後半も立ち上がりから3冠王者がペースを握った。開始1分も経たずに佐相のポストプレーから髙見が決定機を迎えると、2分には原田が佐相とのワンツーを狙っていくなど、序盤で2つの好機を作る。しかしその後も敵陣で試合を進める中でチャンスを決めきれずにいると、16分にセットプレーからの混戦を国際学院MF寺島龍平に決められ同点とされてしまう。

警戒していた中での失点。嫌な流れになりそうな中で「そこで一気に気持ちを切り替えて点を取りにいくしかない」(山下)とすぐさま立て直した昌平は相手から再び流れを取り戻す。

後半25分には山下のラストパスから原田のシュートが惜しくもゴール右に。30分過ぎにはセットプレーのこぼれ球を佐相が豪快ボレー、直後には原田のドリブル突破からMF渋屋航平が後半だけで4本目となるシュートを狙っていくなど、怒涛の攻撃で相手を押し込んでいった。

すると後半34分に決勝弾が生まれた。前線で前を向いた佐相が山下につけると、「髙見が良い感じで相手に身体を入れてくれて自分のコースが見えた」。9月のS1リーグ浦和南高校戦で負傷、フルゲームをこなすのは久しぶりだったこともあり、すでに両足がつっていたというが、キックフェイントで相手のタイミングを外しつつ、エリア左から右に滑らかなスライドで侵入すると、角度のないところから右足を振り抜いてゴールの逆サイドに突き刺した。これが決勝点となり、2ー1で勝った昌平が悲願の全国制覇に向け、まずはベスト8に駒を進めた。

実は当日は山下の誕生日。「山下、今日誕生日なんですよ。バースデー決勝ゴールで。誕生日プレゼントみたいな」と笑顔で語った佐相。

山下は「チームが勝てたのが一番」としながらも「ありがたかったです。気持ち良く誕生日を迎えられた」と少しハニカミながら振り返った。

今夏は全国制覇を目指し挑んだインターハイで2回戦敗退。「あの時のチームは崩し切ろうという意識があってシュートの数も少なかった。自分としても前に関わる時間帯が少ないというのもあって。自分たちの良いところが出せずにふがいない結果に終わってしまった」と山下。

夏以降は一列前のトップ下のポジションでより「ゴールに直結するプレー」を意識し、ドリブルのプライオリティが増したことで相手にとってさらに怖い選手となった。「いまはパスが3、ドリブルが7くらい。ボールをもらった時に一番に考えるのはドリブル」だという。

藤島監督も「もともとはそういうタイプの選手。それがある意味ボランチで捌くだけになっていたのがインターハイだった。そこからあいつ自身も自分の課題をちゃんと理解して、もともと持っているものをプレーでチャレンジしているというのはすごくいいこと」とその成長を語るように、ポゼッション志向のチームにあって山下のドリブルは大きなアクセントとなっている。

再びの全国へ向けまずは1勝。もちろん課題もある。この日はなかなか追加点が来ずに難しい展開を招いてしまった。1得点の佐相も「後半の立ち上がりのところで決めきれなかった」と反省した。直前の練習試合では今年の総体優勝校・流通経済大学付属柏高校に1ー1。前半は押し込まれながらも時間が経つにつれて流れをつかみ、終盤の佐相のゴールで同点としたゲームだが、「本当は勝てたと思っています」。上を目指すのであればよりひとつひとつのチャンスが重要度を増す。前述の「決めきる」というのはこの試合で学んだこと。大宮アルディージャ内定と注目度も上がる中で昌平のエースストライカーは得点にもこだわっていく。

石黒登(取材・文)
リベロ伊藤、石黒登(写真)

試合結果

昌平 2-1 国際学院

1(前半)0
1(後半)1