全国高校サッカー選手権埼玉県大会準々決勝 埼玉栄 vs 国際学院

第98回全国高校サッカー選手権埼玉県大会・準々決勝。国際学院と埼玉栄の一戦は前半に一挙3得点を奪った国際学院が3―1で勝利し、インターハイ予選に続きベスト4進出を決めた。


序盤から攻勢をかけたのは埼玉栄だった中、国際学院は10番のMF佐野佑真の抜け出しなどから徐々にチャンスを作ると前半21分、ゴール前のショートエリアで佐野とMF下口竜空が連続してパス交換。佐野はシュートフェイントで1枚ーがし右足で左隅に決めて試合を動かした。

これで勢いに乗ると前半28分には右コーナーキックのこぼれ球を今大会初出場のFW斎藤彪雅が詰めて追加点。斎藤はさらにアディショナルタイムに自らのシュートのリバウンドが再び溢れてきたところを、体勢を崩しながらも伸び上がって執念のヘッドで決めて3ー0とした。

後半も苦しい時間帯の続いた埼玉栄だが、ここをしのぐとカウンターから途中出場のMF海津遼馬、FW岡田滉士がドリブルで仕掛ける。すると後半33分に岡田との連携で海津がエリア内に侵入。これが相手のファールを誘いPKとなると、海津は落ち着いて左上に決めて1点を返す。

終盤はこの日2人目の退場者を出した国際学院に対し埼玉栄がパワーを持って押し込んだが、最後の部分でネットを揺らすことができず。前半のリードを生かした国際学院が3ー1で勝利し、選手権では第85大会以来13年ぶり、またインターハイ予選に続き準決勝進出を果たした。

初出場の斎藤が抜擢に応える。「2.5人分走る」チーム1のハードワーカーが2ゴール

初の選手権は駒場の大観衆の前。「公式戦自体久しぶりのスタメンでもあってアップでも少しぞわぞわした。ピッチでアンセムを聞くのも初めてなので気持ちも昂りました」。その大舞台でスタメン出場したFW斎藤彪雅は抜擢に応える2ゴールを決めて、チームを勝利に導いた。

28分にコーナーキックから泥臭く選手権初ゴールを決めると、印象的だったのは前半最後に決めた2点目。シュートは一度キーパーに弾かれたが、リバウンドは再び斎藤のもとへ。すると「もう頭でいこうと思って。キーパも前に出ていたのでループ気味で狙おうと思いました」。

すでに1本目のシュートで完全に体勢は崩れていたが、腕と背筋の力で自らの身体をプッシュアップして頭に当てると、ヘディングはふわりとした軌道を描きながらゴール右隅に吸い込まれ「もうやってやったぞという気持ちでした」。最終的にこの2点が勝負決める点となった。

ゴールという形で結果を出した斎藤だが、その真の個性は絶え間ない「ハードワーク」にあると酒井宏治監督はいう。「他の選手が守備をサボってもあいつはサボらない。2.5人分くらい走ってくれる」。本人も「それがなきゃ試合に出られないと思う。しっかり自分の長所を理解してやっていかなきゃチームにも必要ないと思っているのでそこはしっかりやってきました」。

屈強な体躯や得点力、技巧など、決して華のある選手ではないかもしれない。それでもしゃかりきになって食らいついていく姿はチームに勢いを呼ぶ。そしてそういった選手に最後ボールは転がってくる。西武台戦でも背番号13は出場となれば最後の瞬間までボールを追いかける。

ベスト8の壁を越えることはできず。それでも井上主将は「本当に栄を選んで良かった」

またしてもベスト8の壁が立ちふさがった。主将のDF井上孝太朗は「前半立ち上がりから自分たちがボールを握っている中であそこで先制点が取れなかったのが大きかった」と悔やんだ。

今年は支部リーグからのスタート。なかなかモチベーションを持っていくのが難しい中で「県大会で勝ち進めばそれだけ強いところとやれる。それが楽しみでした」と県での躍進を発奮材料に変えて臨み、関東予選では優勝候補と見られた昌平を撃破。インターハイは関東で3ー0で敗れた武南と再びベスト8で相見えた中で2ー3と撃ち合いを演じ、最後まで追い詰めた。

8強の壁は今回も破ることはできなかったが、1年間主将としてチームを牽引した井上は「他の高校からも声がかかったりしたんですけど、本当に栄を選んで良かった。あんな最高の応援部隊の中で、こんな最高の環境の中でプレーできたことが幸せだったし、キャプテンをやってみんなが自分についてきてくれたことが一番嬉しかった」と埼玉栄での3年間を振り返った。

石黒登(取材・文)

試合結果

埼玉栄 1-3 国際学院

0(前半)3
1(後半)0