全国高校サッカー選手権埼玉県2次予選3回戦 春日部東 vs 浦和西

選手権2次トーナメント3回戦。昌平高校グラウンド第2試合は第2シードで3回戦からの出場となった浦和西高校と春日部東高校が対戦した。試合はFW高橋岬生の2ゴールを含む3点を奪ったインターハイ出場校・浦和西が3ー1で勝利し、ベスト8進出を果たした。

「最初の10分をどう戦うかで決まると思っていた」と浦和西MF田中隆太郎主将。新人戦では埼玉平成高校に延長戦の末に4ー3、関東予選では本庄第一高校に4ー3、2回戦からの出場となった総体予選では大宮東高校に延長戦で4ー3と今年は県大会初戦で苦しい戦いが続いていただけにその入りが注目されたが、開始直後から積極的に仕掛けて相手を圧倒した。

序盤から得意のセットプレーで何度もチャンスを演出すると、インターハイ後に取り組んできたという「高い位置でのボール回し」で春日部東をハーフコートに押し込みながらFW朝見海斗の前への推進力や高橋の積極的な仕掛けから連続して決定機を作り出していった。

すると前半32分に先制点。朝見の右からのクロスに対し「キーパーが左に寄ったのが見えた」という高橋が左足のインサイドで右側に流し込んだ。「イメージ通りでした。朝見のパスがめちゃめちゃ良かった」と高橋。攻めながらも得点が奪えない状況に「少し焦りもあった」というが、「みんな僕を信じてパスをくれた。応援してくれているメンバーや3年生たちもいたのでなんとしても決めないと」と仲間たちの想いも乗せてゴールネットに突き刺した。

さらに迎えた後半開始直後には追加点。決めたのは3年生の中、ただ一人スタメンに名を連ねた1年生MFの石山凌太郎だ。ハーフタイムに先輩のDFオージ・ヴィクター・シラタに「お前ならできる!」と激励を受けて臨んだ後半開始早々にゴールネットを揺らしてみせた。

後半1分、朝見のクロスからニアに入ったMF加藤淳志にスルーを要求。ボールを受けると「あそこは感覚」と語る個人技から冷静にシュートコースを作って流し込んだ。「自分の足元には自信がある。取られない自信もあるので(ゴール前でも)落ち着いてプレーできる」と石山。市原雄心監督もインターハイのメンバーに入れるか最後まで悩んだという良い意味で“1年生らしくない”浦和レッズ出身のテクニシャンが貴重な追加点を入れて2ー0とした。

その後もMF遠藤寛紀らを中心に攻め込んだ浦和西。後半18分には石山のコーナーキックから「相手のキーパーとディフェンスラインの連携が良くないなと思っていた。あそこに飛び込めばいけるかなと思った」という高橋がヘディングを叩き込んでリードを3点に広げた。

なんとか一矢報いたい春日部東は後半33分、カウンターからFW大畑拓真の左からのクロスに後半途中出場のMF小牧宏太郎が頭で意地の一撃を決めるも反撃もここまで。後半だけで11本、合計17本のシュートを打った浦和西が3ー1で勝利して準々決勝に駒を進めた。

この日2ゴールとチームを勝利に導いた高橋。「それだけかけていた」というインターハイでは2回戦の京都橘高校戦のスタメンから外れた後の態度を指揮官に見咎められBチーム行きを命じられた。「チームのために謙虚になれと。勘違いするんじゃないぞということで簡単には戻すつもりはなかった」と市原監督。夏の遠征にも帯同させなかった。

それでも腐らずに下で結果を残し続けてトップチームに復帰。「こうやって使ってくれている監督やみんなのためにも結果を出したい」と臨んだ大会初戦。ハットトリックとはならなかったものの、最後まで貪欲にゴールを狙い続け、誰よりも謙虚にチームのために動き続けた。すでに春に負った両足の疲労骨折は完治、フルコンディションで最後の選手権での爆発を誓う。

今年は「裏に起点を作るサッカー」で新人戦ではベスト8、関東予選ではベスト4、そして総体予選では準優勝と結果を残してきた浦和西。その集大成として挑んだ夏の全国インターハイでは初戦で開催県代表・東北学院高校を下し目標としていた「全国1勝」を飾った。

そんな同校がこの夏取り組んできたのが「高い位置でボールを動かす」スタイルだ。「ショートパスで距離を近くしながらやっていくのはうちが代々やってきたこと。それが最後の最後で形になってできるようになってきたかな」と市原監督。まだまだフィニッシュの精度に問題があるというものの、相手と状況を見てこれまでの「裏を取るスタイル」「セットプレー」という強みも活かす中で攻撃のバリエーションが増加し、チャンスシーンは確実に増えた。

ベスト8の相手は昨年、一昨年と連覇している正智深谷高校に決まった。2年前は選手権1回戦で延長戦の末に敗戦。それを応援席から見ていてという田中は「先輩たちの分というわけではないが、西高にとって正智深谷は負けられない相手。チャレンジャー精神を忘れずに全身全霊をかけて頑張りたい」とし、高橋は「自分が点を取って勝たせます!」と意気込んだ。

5日の準々決勝の舞台は“ホーム”浦和駒場スタジアムだ。これまで何度も後押しを受けてきた大応援団の声援を背に、駒場のスタンドを青色に染め上げて、いざ前回王者狩りに挑む!

石黒登(取材・文)
リベロ伊藤、石黒登(写真)

試合結果

春日部東 1-3 浦和西

0(前半)1
1(後半)2