全国高校サッカー選手権埼玉県大会ラウンド16 武南 vs 昌平

第98回全国高校サッカー選手権埼玉県大会ラウンド16(26日、昌平会場ほか)。ともに今季トーナメントを制している昌平と武南の注目の一戦は、1ー0で勝利した昌平に軍配が上がった。


「個」で上回った新人戦覇者が注目の一戦を制した。昌平は中盤底でスタートしたMF鎌田大夢が展開しながらゲームをコントロール。そこからMF須藤直輝のドリブル突破やFW小見洋太も抜け出しでゴールに迫る。前半10分にはDF柳田亘輝のクロスに須藤がファーで合わせたヘディングはディフェンスに阻まれたが、中盤以降は自分たちのペースで試合を展開していく。

一方の武南も前線でボールを持てるMF青野翔太、FW大谷涼太が起点となり、序盤はチームスタイルのショートパスを生かして攻撃。しかし昌平のディフェンスも固く、なかなかシュートシーンまで持ち込むことができない。前半26分には攻撃的SBの安野天士が強力な左足で、終了間際にはセットプレーからDF宝満朋矢が狙っていったが、シュートはこの2本のみだった。

すると後半に入り昌平はドリブラーのMF紫藤峻を入れて攻撃のテンポを一段階アップ。紫藤の変幻自在のドリブルや、エリア内での小気味良いワンタッチパスで相手を押し込んでいく。

するとスコアが動いたのは後半25分。須藤の仕掛けからエリア右深くでパスを収めた小見は、相手を背負いながら右に鋭くターンして右足を一閃。ニアサイドに突き刺し、均衡を破った。

守ってはボランチの柴圭汰やDF柳澤直成が相手のカウンターに繋がりそうなボールをことごとくカット。後半はシュート0本に封じた。藤島崇之監督は「割と前がフォーカスされる状況ではありますけど、後半はディフェンスの部分も整理できていていた」と守備の奮闘を称えた。

武南キラーFW小見洋太がスーパーゴール!「今度は自分がいままでの分を還元していく番」

決勝点は相手ディフェンスの反応をも許さぬ、スーパーゴールだった。

後半25分、須藤から横パスが入る直前、FW小見洋太は間接視野で相手の位置を捉えると「最近はシュートが少なかったので打てるところは打とうという意識があった。思い切り振り抜きました」。背負った瞬間に鋭くニアサイドに反転して右足を一閃し、ネットに突き刺した。

今季リーグ戦では前期・後期と武南戦でゴール。選手権前に行われたホーム昌平グラウンドでの後期の試合では2点を先行される中で、後半に小見の2得点で追いつくなど「武南キラー」ぶりを見せていた。「結構自分的にも武南に対しては良いイメージがあった」と小見はいう。

立ち上がりは選手権独特の雰囲気に呑まれて焦りから思うようにプレーできず、そんな中で抜け出した際にキーパーと接触。「相手キーパーに怪我をさせちゃったりして。その瞬間にもうやらなきゃいけないなと思いました」。そこからはしっかりと切り替え。前線でボールを収めつつ、持ち味の豊富な運動量と動き出しで勢いを生み、最後は決勝点を奪って勝利に導いた。

これで1回戦の2ゴールに続き大会3得点目。「動きも軽いし、裏取りの質も日に日に良くなっていると思う。いろいろなバリエーションから点を取れるようにやっていきたいです」。またプレーはもちろんのこと、2年生となり、言葉の端々に責任感も出てきた。「チームが苦しい時に得点で流れを持ってくるのがエースの役目」「プレー以外のところでもチームを引っ張っていくっていうのは監督にも期待されているというか、任されている部分だと思うのでそれを全うしていきたいと思います」。求められる役割をしっかりと認識し、チームを牽引する。

「自分が点を取れない時も仲間たちがカバーしてくれた。今度は自分がチームにいままでやってもらった分を還元したい。自分のゴールもそうだし、周りにゴールを取らせたり、プレー外でもチームを盛り上げて良い方向に持っていけるように、全国に導けるようにしたいです」。

ちなみに今夏は出身クラブのFC LAVIDAが初の全国でベスト8入り。「速報とかも見ていたんですけど(笑)。もう嬉しくて」。刺激を受けているというストライカーは「全国でLAVIDA出身だぞというのを知らせてやりたいっていうのがあるので全国に出たい」と意欲を燃やした。

中盤でカウンターの芽を潰した柴(芝)刈り機。昌平で活躍する中体連の星/柴圭汰

まさに柴(芝)刈り機だ。MF柴圭汰はこの日中盤でボールを刈って刈って、刈りまくった。

相手のカウンターに気づけば右に左に顔を出し、ピッチ上にほかに何体かクローンがいるのではと思わせる奮闘ぶり。運動量ももちろんだが、それを可能にするのが「読み」の良さだ。「自分は身長もそんなに大きくない(162cm)ので、自分より大きい選手と同じ反応をしてしまうとやっぱり劣ってしまう。相手選手よりも少しでも早く反応することを意識しています」。

伊奈小針中の出身。中学2年次には新人戦で準優勝も経験した。高校を選ぶ上で「いろいろな高校を見たんですけど、昌平の練習会に何度か参加させてもらって、まず魅力的なサッカーだった。ここに入ったらどんなサッカーができるんだろう、自分はこのチームでどんなサッカーができるんだろうっていう想いで入学しました」。昌平はクラブチーム出身者がトップチームの多数を占めるが、そこは気にしなかったという。「自分の良いところは最後まで諦めないところ。そこを長所としてやっていけば最後はなんとかなるだろうと思って」と屈託なく笑う。

ちなみに中学年代はバリバリのドリブラーだったそう。「小針中の時はドリブルばっかりしてましたね(笑)。中盤でドリブルして起点を作るタイプでした」。高校でのサバイバルレースを勝ち残るために守備を磨いた。いまでは「当たっている時はもう取れる」と自信を見せる。

そういった中で今年は2年生ながらスタメンに上り詰めた柴だが、守備で欠かせない選手となった一方で「もっと攻撃にアクセントを加えられる選手にならないとこの先は生きていけない」と危機感。「ディフェンスから縦の起点、ボールを取った後に縦に繋がるパスや攻撃ができればもっと怖い選手になれると思う。いまはそんなに攻撃には参加できていないので、そこはもっと狙っていきたいですね」。目指すのは攻守両面で起点となれる中盤のマイスターだ。

次戦はインハイで敗れた正智深谷戦。「あの時は本当に何もできず後悔じゃないですけど、そういうのがあったので正智戦では自分の出せる全力を出して臨みたいです」。中盤で危険な芽を摘むディフェンスはもちろん、奪った瞬間の攻撃にスイッチを入れる縦パスにも注目だ。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 0-1 昌平

0(前半)0
0(後半)1

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