第12回埼玉県第4種サッカーリーグ選手権大会 決勝 さいたまシティーノース vs ダイナモ川越東

第12回埼玉県第4種サッカーリーグ選手権大会。決勝はさいたまシティーノースFCとダイナモ川越東FCが対戦し、5ー1で勝利したさいたまシティーノースが大会初優勝を果たした。

ともに初Vを狙う両雄の一戦は早々に動いた。前半2分、さいたまシティーノースは磯崎麻玖のクロスに鈴木陽が合わせて先制すると、さらにその2分後には磯崎がエリア前で3人に囲まれながら強引にその間を割って右足で加点。13分にはコーナーキックのこぼれ球を堀内陸大が思い切って狙うと、ボールはキーパーの手を弾きながらゴールに吸い込まれて3点差とした。

一方、序盤は相手の勢いを前に守勢に回ったダイナモ川越東もハーフタイム明けに仕掛ける。前半ポスト直撃のシュートを打った小島颯来が前線から猛烈に寄せて守備にプレッシャーをかけていくと後半1分、敵陣でパスカットした伊藤岳がひとつ運んで右足で決めて1点を返す。

これで再びわからなくなるかと思われたが、さいたまシティーノースは直後の後半2分、岡本稜士が左サイドを駆け上がって左足でゴール右隅に決めて流れを引き戻すと、26分には磯崎のクロスに堀内が頭で合わせて5ー1とし勝負あり。前後半合計16本のシュートを浴びせたさいたまシティーノースが自慢の攻撃力を発揮して、今年度のリーグ戦チャンピオンに輝いた。

最後まで攻撃的姿勢を崩さなかった。全少予選では大宮アルディージャに対し、“よそ行き”の守備的なスタイルで入ってしまい敗れたが、今大会では「いままで積み重ねてきたものをどれだけ出せるか」(西村陽毅監督)にこだわり、結果6戦合計27得点と自慢の攻撃力が光った。

昨年はコーチ、今年は監督と2年にわたりこのチームを見てきた西村監督は「今年は攻撃の選手にタレントが揃っていた。相手よりも1点でも多く取って勝とうというのを掲げてやってきた」。今年の代のスタートにあたり選択したシステムは2ー4ー1。3バックで臨むチームが多い中、キックのうまい岡本、鈴木を両翼に置き、中盤で優位を取れる強気のスタイルを貫いた。

準決勝ではその岡本、鈴木のクロスから磯崎が2得点。決勝戦は出場した10人のフィールドプレーヤー中4人がゴールするなど、どこからでもゴールできる力強さを示して頂点に立った。

「公式戦の決勝は誰もが経験できるわけじゃない。もちろん全国大会も経験させてあげたかったですが、次のステージに繋がっていくには最高の形で締めくくれたんじゃないかと思います」と指揮官。主将として、守備の要としてチームを後方から支えた山中大智は「中学校でもこの経験を自信に変えて頑張っていきたいです」とし、堀内は「ノースで行けなかった全国大会に行って良い結果を残したい」とジュニア年代で叶えられなかった全国での活躍を誓った。

大会通算16ゴールと大暴れした磯崎 指揮官も「日本代表に入るような選手に」と期待

名前は麻玖(マーク)と読む。ガーナ人の父と日本人の母を持つ点取り屋は抜群の身体能力を武器に準々決勝までのすべての試合でハットトリックを決めるなど、計16得点と大暴れした。

決勝では前線で身体を張ってボールを奪い先制点の起点となると、その直後にはディフェンス複数枚に囲まれながらも「絶対に自分で打とうと思いました」とストライカーらしい強引さを見せて自らネットを揺らす。その後も力強いポストワークで味方の攻撃を引き出すと、クロスから堀内のダメ押し弾を演出し、1ゴール、2アシストとタレントの揃う攻撃陣を牽引した。

175cmの長身、瞬発力に加えて、この1、2年で足元も向上。まだ荒削りではあるものの、指揮官も「最終的には日本代表に入るような選手に」と期待を寄せるエースは中学校年代では大宮アルディージャジュニアユースに進む。「(大宮は)全少予選で負けたチームでレギュラー争いも辛いと思うんですけど、そこでレギュラーを取って、ナショナルトレセンや日本代表に選ばれてプロ選手になれるように頑張りたい」と次のステージに向けて意気込みを語った。

小柄なダイナモ・堀内が決勝で2ゴール「ヘディングで決められたのはすごく嬉しい」

身長はクラスでも前から2番目という135cmだが、「走り回っても“もっと”走れる持久力」が持ち味だ。小柄なダイナモ・堀内が大会初得点を含む2ゴールで初のタイトルを手繰り寄せた。

立ち上がりから積極的なプレーを見せると、2ー0で迎えた前半13分にセットプレーのこぼれ球を積極的に振り抜いてゲット。後半も落ちない運動量で前線に顔を出し、26分に磯崎のクロスから「1年ぶりくらい」というヘディング弾でチーム5点目を奪い、ダメを押した。「今日は自分も点を決めたかった。ヘディングで決められたっていうのはすごく嬉しかったです」。

磯崎らと同じく進む大宮アルディージャジュニアユースでは「足元の技術と、あとはご飯をたくさん食べて身長を伸ばしたい」と堀内。中学校3年間でプレーに、身長に大きく成長する。

初の決勝は悔しい大敗も、歴史を作る準優勝 先輩たちの想い背負い来年はタイトルへ

初のファイナルは1ー5の大敗。ダイナモ川越東FC・高杉学監督は「悔しいし、この点数の差はちょっと悔しい以上に……。言葉には表せないですね」と、試合後にその心境を語った。

前半はフィジカルで勝る相手の勢いに飲まれ3失点を喫するも、後半は唯一の5年生選手として出場した小島が前線から積極的にプレスをかけて守備のパスミスを誘発すると開始1分に伊藤が右足で決めて1点を返し、ここからという雰囲気を匂わせた。しかし、直後に4失点目を喫すると、再び流れを引き戻すことはできず連続失点。「雰囲気に飲まれてしまい、鼓舞しあってみんなで盛り上げていくうちの良さが出せなかった」。準決勝の再現とはならなかった。

それでも今大会はこれまで鬼門となっていた準決勝をクリアして初のファイナル進出と、新たな歴史を作った。悔し涙を流した先輩たちの想いも背負い、来年は悲願のタイトルを目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

さいたまシティーノースFC 5-1 ダイナモ川越東FC

3(前半)0
2(後半)1