平成30年度全国高校総体 サッカーの部 準決勝 桐光学園 vs 昌平
平成30年度全国高校総体 サッカーの部 準決勝。桐光学園高校(神奈川)と対戦した埼玉第1代表の昌平高校は3ー2で敗れ、初の決勝進出とはならず。後半頭に3点を失うと、その後雷雨で4時間の中断を挟み、FW森田翔、MF須藤直輝が決めたが、あと一歩及ばなかった。
立ち上がりに相手のU-16日本代表FWの西川潤にポスト直撃のシュートを打たれた昌平だが、堀江貴大、吉田航の両サイドバックが高い位置を取り始めると徐々にペースを握っていく。
前半8分にはMF木下海斗がMF渋屋航平とのワンツーから狙っていくも、これはディフェンスの足に当たってサイドネット。昌平は24分に早くも須藤を投入、森田を最前線のポジションに移し、攻撃を加速させる。するとその森田は26分、木下のロングスルーパスにフリーで抜け出して決定的な場面を迎えるが、右足のシュートはわずかにポストの左に外れて顔を覆った。
その後も後方から丁寧にゲームを組み立てながら、原田を起点に中央、両サイドから攻撃を展開していく。前半アディショナルタイムには原田が中央にスライドしながら右足で放ったミドルシュートが枠を捉えたが、ここは相手キーパーの好守に阻まれてゴールとはならない。前半は桐光学園の2本に対し、6本のシュートを放ったが、スコアレスでハーフタイムを迎えた。
すると後半の入りの部分でまさかの連続失点。5分にショートコーナーからファーサイドでヘディングを合わされて先制点を許すと、その2分後には前がかりになったところを最終ラインからの一本のパスから警戒していた西川に振り切られて追加点を喫す。10分には再びコーナーからマークがルーズになったところ決められ、悪夢のような5分間で0ー3とされてしまう。
さらに雷雲の接近により、後半12分に試合が中断。その後風雨が勢いを増す中でなかなか天候が回復せず、試合が再開したのは中断から4時間以上が経過した午後4時半のことだった。
残り25分弱で3点のビハインド。攻めるしかない昌平は守備的MFの丸山聖陽に代えてスピードのあるFW大和海里を投入。木下、原田を中央に並べる攻撃的布陣で最後の時間にかける。
試合は大方の予想通り、攻める昌平と逃げ切りを図る桐光学園という構図に。怒涛の攻撃を仕掛ける昌平は後半20分、大和の仕掛けから最後は森田がゴール前の混戦を沈めて1点を返す。
その後、雷により再度の中断を挟んだ中、昌平は後半アディショナルタイムに堀江のアーリークロスを渋屋が落とし、森田がシュート、こぼれ球を須藤が詰めてついに1点差としたが、直後に試合終了のホイッスル。再開後2点を返した昌平だが、今大会3度目の逆転劇とはならず。2ー3で力尽き、針谷岳晃、松本泰志を擁した2016年大会に続く、3位で終戦となった。
試合を終え、藤島崇之監督は「最後のところで決め切る力」を課題に上げながら、「再開後は2点取りながら、且つ流れの中でもうひとつふたつとみんながワクワクするような展開にすることができたかなという部分はある。そこはしっかりとプラスに変えられればいい」とした。
今大会は技術に裏打ちされた攻撃的なスタイルで、そんな見ている側をワクワクさせるような試合をいくつも演じてきた昌平。「最後はプレーのクオリティーというところをフォーカスしていきたいと思っている。最後はしっかりとした平常心で技術を出すというか、熱い気持ちを持っていても最後は確固たる技術で勝負する。気持ちはあって当たり前。そこに技術をしっかりと積み重ねていくというところをできればもっと良くなる。もっと成長できると思います」。
県内での警戒もさらに高まってきそうな中で、ここで得た自信と課題を糧にレベルアップを果たし、選手権埼玉県予選連覇、そして冬の全国でもう一度「日本一」奪取にチャレンジする。
主将として牽引した関根「優勝できる力はあった。情けない」 守備の立て直し誓う
「今年は2年前の悔しさもあって絶対に日本一を取りたいと思っていた。正直本当に優勝できる力はあったと思っているので優勝に導けなくて自分としては情けないかなと思っています」。メンバーで唯一2年前の4強を経験している関根は2度目の準決勝をそう振り返った。
後半ギアを上げてきた相手に対し、一気に3失点。「先制点を取られた後に自分がチームを盛り立てて、立て直していかなくちゃいけなかったんですけど、自分の力がなくて逆にずるずるといってしまった。相手は取られても粘り強さがあった」と立ち上がりの連続失点を悔いた。
「チームとしても0ー2からの逆転だったり、勝負強さ、自分たちの持ち味であるパスワークは十分に発揮することができたんですけど、やっぱり攻撃、攻撃になりすぎて守備のところで課題が出た」。今大会は1回戦から5試合すべてで失点したことはひとつの反省点。それでも関根は「ここからしっかりと立て直していける自信はある」とし「みんなで連携をとって選手権までには必ずいまよりももっと良いチームにしていきたい」と、守備の立て直しを誓った。
反撃の狼煙上げる1点も… 森田「このメンバーでもっと高い景色を見たかった」
4時間の中断を挟む難しい展開の中で、再開後に大和のクロスをねじ込んで反撃の狼煙を上げるもあと一歩及ばず。森田は「このメンバーでもっと高い景色を見たかった」と悔しがった。
「監督もすごく良い声をかけてくれたり、チームみんなの掛け声もあって雰囲気は良かった。自分らのサッカーっていうのがこのインターハイで明確になってきて、そのサッカーをやれば点が取れる、勝てるという自信はあったので、最後の25分にかけようと思っていました」。
「身体がキレていた」というこの日は両軍最多4本のシュートを記録。果敢にゴールに迫ったが、「あの一本が…」と語る前半の決定機を決められず。「やっぱり決め所で決める、絶対に失点してはいけない時間帯に失点しない。桐光学園はその1点が上回っていたと思います」。
「選手権の予選はこのインターハイよりも厳しい戦いになると思う。浮き足立たずに自分たちのサッカーっていうのをさらに深く研究してより良いサッカーを目指していきたい」。個人としては「もっともっと攻撃面を磨いて決め所で決めることが大事」と得点力アップを目指す。
全国強豪と戦う中で『10』の自覚 須藤「もっと10番らしい選手にならなきゃいけない」
ゴールとともに終了の笛。黄金ルーキー、高校最初の全国は3位という結果で幕を閉じた。
「自分がもっと10番らしいプレーをしてチームを救えるようにならなきゃいけないなっていうのは、あの瞬間には自覚しなきゃいけないなっていう想いを持ったし、あれで1点だけじゃなくて2点、3点取れる選手に成長しなければいけないなっていうことはすごく感じました」。
この「10番らしい」という言葉は試合後何度も出てきた言葉。これまであまり番号についてのこだわりは語ってこなかったが、強豪校のエースたちと対峙する中で意識が高まったようだ。「今日の(西川)潤くんとか高知中央の10番(藪陸人)とか、そこら辺の選手はやっぱり10番としての責任を持ってプレーしてチームに貢献していた。自分もそんなような選手にならなきゃいけない。もっともっと10番らしい選手にならなきゃいけないと思っています」と須藤。
この日はU-16代表でともにプレーし、1学年上で同じく10番を背負う西川と対戦したが、「潤くんと比べて自分は全然ゴールに近づけていない。潤くんは常にゴールを狙っているし、一番ゴールに近い存在だと思っているので、そこをしっかりと学んで潤くんより上に行ける選手にならなきゃいけない」。10番として「もっともっとゴールに近い選手、ゴールに貪欲にプレーできる選手に成長して」代表エースを超える危険なアタッカーとなって選手権に帰ってくる。
石黒登(取材・文)
試合結果
桐光学園 3-2 昌平
0 (前半) 0
3 (後半) 2