滝井監督就任1年目、攻守でイズム見せた埼玉栄が12年ぶりの4強進出!「昌平をやっつけるならうち、という想いで」優勝候補との準決勝に臨む

第101回全国高校サッカー選手権県予選・準々決勝(10月29日/浦和駒場スタジアム)。スコアレスで突入した延長前半に決勝ゴールを挙げた埼玉栄が細田学園を下し、4強進出を決めた。

滝井友和監督就任1年目の埼玉栄が、全国に出場した2010年以来となる4強進出を果たした。

埼玉栄はエースの10番FW安倍颯汰(3年)が前戦で起点を作り、左SHの樋口有斗(3年)主将が切れ味鋭い突破からゴールに迫る形を作っていたが、「立ち上がりは守備がうまくいかず、ボールを持たれてしまった」(滝井友和監督)。基本的には4-4-2で臨んだ中で細田学園のボール保持技術やポジショニングの妙もあり、2トップの安倍、小磯慧秦(2年)がプレッシャーに行けないような状況もできてしまい、なかなか思うように押し込み切ることができなかった。

それを解消すべく、前半38分に小磯に代えて、MF小川史門(3年)をボランチで投入。MF荒井大和(3年)をトップ下に変更し、中盤の構成力を上げる作戦に出る。すると後半はこの形がはまった。中盤を厚くしたことにより、相手のパス回しの中心となっていたボランチにフリーの状況でボールを受けさせず。逆に埼玉栄が前向きでボールを奪う回数を増やし、ペースを握った。

相手の粘り強い守備もあり、80分で勝負を決めることは出来なかったが、良い形で延長戦を迎えると、試合が動いたのは延長前半3分。右サイドで起点を作り、途中出場のMF原虎太郎(3年)のクロスに中で待っていたMF沖中愛斗(3年)がヘディングで合わせ決勝弾となった。前半から積極的に仕掛け、シュートを狙っていた右SHは「いつも自分が決めて勝つみたいなイメージは持っている。練習でも終わった後とかにシュート練習とかに取り組んでいて、「今日は絶対に決める」と仲間に言って臨んだ」と、チームを勝利に導いた有言実行のゴールを喜んだ。

埼玉栄は今年、系列中で15年にわたって指導した滝井監督が就任し、1年目でのベスト4。8強進出チームでは狭山ヶ丘とともに2校の土のグラウンドだが、「土でもうまくなれる」と話す。

「基本的にやっぱり身体を鍛えたり、気持ちでというところもあるんですけど、そんな時間があるんだったら、やっぱり止めて蹴るの、足元の技術を高めた方がいい。もともと栄高校の選手って毎年足元の技術は高いんです。それをでも、サッカーの試合で生かせるテクニックかというとそうじゃなくて、結局持ってから考えてというところがあるから足元でプレーしちゃったり。そうしていると、やっぱり通用しないので、私の中ではその「止めて蹴る」がすべてだと思います」

今年は同監督のもと、「コンパクト」「スピーディー」「モビリティ」を掲げ、人もボールも動くムービングフットボールを展開。この夏は県外の強豪とも練習試合を重ね、手ごたえを得ていた。

また、持ち込んだのは攻撃的な部分だけではない。中学時代も3年間指揮官の薫陶を受け、「滝井イズム」の中軸とも言える樋口は「自分たちが攻める時間とか、逆に攻め込まれる時間も長かったと思うんですけど、やっぱり自分たちが勝てるようになった要因っていうのは、その攻め込まれる時間帯に粘り強くやれるようになったなって感じていて」と、守備面での成長を挙げる。

「練習のポゼッションからもっと切り替えを意識したり、もっと寄せる場所を強く寄せたりという場面があって。あとは気持ちの部分を大切にしてくれる監督なので、やっぱりそこで気持ちが上がってくると、ゴール前やらせないところとか、粘り強さに繋がっているかなと感じます」

3回戦の西武台戦では終盤、セットプレーによる猛攻を受けた中で粘り強く守り切り、昨年大会で敗れた相手にリベンジ。この日も押し込まれる時間をしっかりと耐えたことが大きかった。

次戦の相手は優勝候補筆頭の昌平に。2回戦の後にも指揮官は「昌平とやりたい」と話していた。滝井監督は中学年代、県トレの指導者として当時FC LAVIDAに所属していたMF荒井悠汰やMF佐藤海空斗、MF篠田翼らとは旧知の仲。抽選会では久しぶりに再会し、一緒に写真を撮る一幕もあった。「また相手を分析しながら、自分たちがどれだけチャレンジできるのかっていうのと、「昌平をやっつけるならうち」かなと、そういう想いで頑張ります」と意気込みを語った。

一方、細田学園・上田健爾監督は「栄さんの攻撃力というのは脅威なものがあると思っていたので押し込まれる展開も予想していましたけど、攻撃の部分で良い場面を作ることができなかった」と悔しがる。ボールを保持しつつ、横の揺さぶりを多くし、前で起点を作るところを狙いに、前半はそういった形もいくつかあったが、後半はややテンポダウンし相手にペースを握られた。

その中でも試合を通して、「しぶとさみたいなところは例年以上にある」と指揮官が話していた粘り強い守備を披露した。相手の決定的なシュートにDF鬼丸駿(3年)が必死に食らいつき、3回戦PK勝ちの立役者で上田監督も「この大会でかなりチームを救ってくれている」とキーマンに挙げていた守護神の浅倉達也(3年)は後半ラストの相手の猛攻を耐え、延長戦に繋げた。

「選手については本当によく頑張ってくれたなというふうに思いますし、最後まで諦めずにやったなというふうに思います」。悲願のベスト4進出の夢は、後輩たちへと受け継がれていく。

石黒登(取材・文)

試合結果

細田学園 0-1 埼玉栄
0(前半)0
0(後半)0
0(延前)1
0(延後)0