2大会ぶりの頂点へ視界良好、昌平が4発完勝で準決勝へ! 1年生FW鄭志錫が2ゴール

第101回全国高校サッカー選手権県予選の準々決勝が10月29日に浦和駒場スタジアムで行われ、昌平と立教新座が対戦。前後半と2点ずつを奪った昌平が4-0の快勝で4強入りを決めた。

まさに“完勝”という戦いぶりだった。序盤から相手コートでゲームを進めた昌平は前半13分、FC東京内定の10番MF荒井悠汰(3年)のクロスをFW鄭志錫(1年)が頭で流し込み先制。41分にはCKからCB佐怒賀大門(2年)が競り、こぼれ球に鄭が詰めて2ゴール目を決めた。

鄭はほかの多くの選手と同じくFC LAVIDAの出身で、昨年の高円宮杯ではスーパーサブとして4ゴールを挙げ、全国準優勝に貢献した点取り屋。「昌平にはいろいろタイプの違うFWの選手たちがいて競争は激しいんですけど、そこで自分が出るチャンスをもらえたら必ず点を決めて、チームのために貢献しようと思っていたのでゴールという形で貢献できて良かった」と喜ぶ。

後半も攻め続け、11分にインターハイ得点王のMF篠田翼(3年)がゲット。20分にはMF長準喜(3年)が緩急のあるドリブルで侵入し、荒井がニアに走り込んでダメを押した。また、佐藤海空斗(3年)と土谷飛雅(2年)のダブルボランチは試合を通して推進力をもたらし続けた。

藤島崇之監督は「攻撃の時間が長かったので、逆にそこでまた攻撃の中でもちろんゴールを奪うというところをもっとクオリティーを上げなきゃいけないというところの課題は出ましたけど、ただやっぱりしっかりと奪えたというところに関しては評価をしてあげながら、且つそこで見つけた課題をまた良いモチベーションを持って、トレーニングで繋げられるようにしたい」と話す。

終盤にはインターハイの大津戦で負傷し、長期離脱を強いられていた鹿島アントラーズ内定のCB津久井佳祐(3年)が約3ヶ月ぶりの実戦復帰となった前戦に続き途中出場。まだまだ出場時間は短いものの、頼れるキャプテンの帰還に指揮官も「そういったひとつひとつの経験を彼なんかは、また良い意味で取り戻しながらやっていくという部分もすごく大切ですし、あとはやっぱりキャプテンですので、そういったところの信頼に関しては、他の選手と比較しても間違いなくある。その彼の良さをゲームの中で発揮できるようにしてもらえたらいい」と信頼を語った。

今夏のインターハイでは全国3位に。「『3位の悔しさ』というのを良い意味で味わえたというのが、いまに繋がっている」。その悔しさをバネに現在トップチームはプリンスリーグ首位、セカンドもS1リーグ1位を走る。「8月、9月と五分の試合を経験して、その中で粘り強さの部分もそうですけど、自分たちが主導権を握りながら攻守ともにどう対応できるか。そういった部分の経験ができたのが非常に良かったと思いますし、力がついてきているのは選手も実感してくれているので、良いモチベーションでやってくれている」とスケールアップに手応えを見せる。

もちろん全国でのリベンジは目標のひとつだが、そのためにもまずは目の前の一戦を見据える。「全国で戦うよりこの埼玉を勝ち抜く方が難しいとも思いますし、その中で我々にいまできることは「常にベストゲームをしよう」という話はしているので、それが良い意味で更新されるように臨みたい」(監督)。昌平は一戦一戦ベストゲームを更新し、2大会ぶりの埼玉の頂点を狙う。

一方、立教新座・前田和伸監督は「めちゃくちゃ強かったですね…」とため息を漏らした。前半は主将のDF今野朝陽(3年)を中心とした5バックで引いて守り、出方を窺う予定だったが、「選手が必要以上に相手をリスペクトしてしまったかなというか、ちょっと視野はいつもよりだいぶ狭まってしまった印象がある」。後ろ重心になりすぎてしまい、なかなか押し上げられず、大会3ゴールのFW葉葺貴大(3年)や10番MF古里健人(3年)の攻撃力を生かせなかった。

後半は今野をCBから本職のSBに、途中出場のFW齋藤洋大(3年)のロングスローなど飛び道具も用意していたが、ゴールには繋がらなかった。また、今大会はFC LAVIDA出身のMF河下楽、大宮アルディージャU15育ちのDF岡本聡吾ら、主力2年生たちの離脱も重く響いた。

昨年は経験値を持った上級生が中心となって57年ぶりの4強進出を果たしたが、選手が大きく入れ替わった今年は「新チーム発足からここまで来るのは正直難しいだろうなとは思っていた」。その中でも先輩たちが残してくれた初のS1リーグを戦いながら3年連続の8強入り。「ちょっとずつ経験値を高めながら、ここまで来られたというのはよく頑張った方なのかな」とねぎらった。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 4-0 立教新座
2(前半)0
2(後半)0