平成30年度 関東高校サッカー大会 埼玉県予選 決勝 成徳深谷 vs 立教新座

関東大会予選決勝が4月30日に埼玉スタジアム第2グラウンドで行われ、成徳深谷高校と立教新座高校が対戦した。試合は前半31分にMF佐藤蒼太のPKで先制した成徳深谷が、後半の立教新座の攻撃をしのいで1ー0で大会初優勝。成徳深谷は新人戦と合わせて2冠目となった。

 

2つ目のタイトルを目指す成徳深谷か、県内の伝統校を次々と破り初の決勝に駒を進めた立教新座か。序盤の攻防を終えペースを握ったのは成徳深谷。5バックを敷いてきた立教新座の両サイドの裏にロングボールを供給しつつ1トップの戸澤雄飛が迫力を持って押し込んでいく。

前半19分にはコーナーキックからMF石川怜磨のヘディングがサイドネットを強襲。26分にはFW樋口裕也のシュートがゴールに吸い込まれたが、これはオフサイドの判定となった。

試合が動いたのは前半31分。DF長谷玲央の右からのロングスローからDF堀井皓士郎が右足アウトでシュート、さらにこぼれ球に佐藤がヘディングで詰める。ボールは惜しくもクロスバーに嫌われたが、直後に混戦から相手のハンドでPKを獲得。「今日は決められる自信があったので自分でいきました」と佐藤が自らゴール左上に蹴り込んで成徳深谷が先制に成功した。

後半は互いに交代札を次々と切っていく中で、立教新座は途中出場のMF細田翔太がキレのある動きでチームに勢いをもたらす。18分には細田が右サイドの深い位置でフリーキックを獲得すると、MF中川大樹の意表をつくグラウンダーのボールにFW渡邉佑のシュートは左ポストを直撃。こぼれ球に細田が狙っていくも成徳深谷の守護神・神尾龍汰が顔面でブロックする。さらにDF南口周矢のヘディングも神尾が連続してセーブしてチーム最大の危機を救った。

その後もFW稲垣輝一を中心に攻めた立教新座だったが、「最後まで0で抑えたい気持ちがあった。やられても何回も立ち上がってできた」と相手との肉弾戦にもひるむことなく立ち向かった神尾やDF成澤圭梧、堀井ら成徳深谷の最終ラインを完全に崩しきることはできず。最後まで高い守備意識を貫き通した成徳深谷が関東大会予選初制覇、そして今季2冠目を達成した。

新人戦、S1、関東予選と今季は公式戦負けなし。新人戦の頃はまだ懐疑的な見方もあった中で、2冠達成で決してフロックではないことを見せつけた。選手個々の伸びはもちろん、特に「メンタル、精神的に強くなった。タフになったのかなと思います」と為谷洋介監督。ベスト8では新人戦に続き昌平を撃破、準決勝では同スタイルの浦和南との我慢比べをものにした。

堅守を支える成澤も「技術面というよりは精神面、耐える力がついてきたのはチームが伸びている証拠」と手応えを口にする。自信を良い意味で力に変えてさらに粘り強い集団になった。

一方でチームの根底にあるのは「はい上がっていくんだ」という雑草精神。「自分たちが王者っていうことは誰も思っていない。自分たちが下からはい上がっていくんだっていう気持ちで毎試合毎試合やっているので、そこはどのチームが来ても変わらないことです」とはキャプテンの佐藤が今大会を通して言い続けてきたことだ。あくまでも自分たちはチャレンジャー。

チャレンジャーゆえに緩みなし。今年の成徳深谷の強さの一端を垣間見た関東予選だった。

「ピッチ内のもうひとりのスタッフ」キャプテン佐藤が2冠決める決勝弾

「中にもうひとりスタッフがいるような感じ」とは為谷監督評。2冠を達成した成徳深谷で攻守両面、そして精神的な柱として欠かせない存在となっているのがキャプテンの佐藤蒼太だ。

前半31分にロングスローのこぼれ球に反応してヘディングシュート。これはクロスバーに嫌われたが、粘ってPKを獲得すると自らキッカーを志願。右足でゴール左上に蹴り込んで「今大会はまだ点を取れていなかった。決勝の舞台で取ることができてよかった」と笑顔を見せた。

後半は仲間の負傷交代を受けて右サイドハーフから左サイドバックにポジションチェンジ。「自分のミスで裏を取られたり、迷惑をかけてしまった」と反省したが、緊急事態で違うポジションを任せられるというのは監督にとっても相当心強いはず。もともとのFWやボランチでもプレー可能で豊富な運動量と粘り強いプレーでまさに成徳深谷サッカーを体現する選手だ。

「関東大会では一試合一試合自分たちのどこが通用して、どこが通用しないのか、それをしっかり自分たちの力に変えていってインターハイ、選手権で全国に出られるように、その良い経験にしたいと思っています」。次なる目標「全国大会出場」を見据え初の関東本大会に臨む。

1点の重さを知るも発展途上のチーム 稲垣「良い意味で成長していきたい」

「本当にこの試合は何もできなかった」。今大会初スタメンの稲垣はそう決勝を振り返った。

この日は5ー4ー1の「1」で出場。慣れないフォーメーションの中で両軍含めて最多の4本のシュートとひとり気を吐いたが、ゴールを奪うことはできず。「背の高い相手に対して自分がどう対応できるか、少ないシュートチャンスを決めきれる力はこれからの課題」と語った。

今予選は1回戦に始まり準決勝の浦和東戦まですべて1点差ゲームをものにしてきた。「やっぱり成長したなと思うのは1点の重さを自分たちで理解できたことかなと思います」と稲垣。この日の敗戦も1点差。「先制点を決めて守り切る力」「最後の最後で点を決める決定力」「先制されても切り替えられる力」。あらゆる意味で勝負をわける1点の重さを感じた大会だった。

それでも大会を通じて大きな可能性を見せたチーム。「自分自身もそうですし、チームの伸び代っていうのは本当にすごくあると思う。関東大会が終わってインターハイ、選手権と続きますけど、良い意味で成長していきたいと思います」。この経験を糧に再びこの舞台に帰ってくる。

石黒登(取材・文)

試合結果

成徳深谷 1-0 立教新座

1(前半)0
0(後半)0