赤き血のイレブン、浦和南が5年ぶりの全国へあと1勝!公立校をここ8年で4度のファイナルに導いた名将「接戦に持ち込みたい」

赤き血のイレブン、5年ぶりの全国まであと1勝――。「第102回全国高校サッカー選手権大会 県大会」準決勝が5日、NACK5スタジアム大宮で行われ、浦和南が5-1で聖望学園を下し、2年ぶりとなるファイナル進出を決めた。浦和南は14日の決勝で前年覇者の昌平と対戦する。

「(今日の勝因は)やっぱり良い位置でボールを奪って、速く攻められたというところだと思います。相手陣内で奪っていますから。厳しいディフェンスですよね」(浦和南・野崎正治監督)

「前回立ち上がりが悪くなってしまったので、勢いを持ってやろうと言っていた」(橋本優吾主将)。浦和南はやや重さのあった相手の出足をつき、高い位置での守備から連続して攻め込んだ。

すると前半14分、センターサークル付近でCB齋藤旺徳(3年)がヘディングで跳ね返したボールを左SBの橋本優吾(3年)主将が繋ぐと、準々決勝の狭山ヶ丘戦で決勝アシストを決めたMF濱口陽央(3年)の右足シュートがクロスバーの下を叩いてゴールラインを割り、先制した。

その後もペースを握りながら、今年のチームとして練習してきた横の動かしなども加えて攻撃を展開。26分にはMF荻野凌我(3年)のクロスが相手のハンドを誘いPKに。これを10番MF伊田朋樹(3年)が沈めた。さらに35分には橋本のパスにFW石川慶(3年)が潰れてこぼれたボールを伊田が右足のコントロールシュートで右隅に沈めて、前半だけで3-0とした。

後半も勢いは止まらず、6分にスローインの流れから石川がエリア右外からディフェンスの間隙を縫う目の覚めるような右足シュートを突き刺すと、その1分後には右SB伴美寿希(3年)とのパス交換で抜け出した伊田の右クロスに再び石川がヘディングで合わせて連続得点とした。

石川は今大会初ゴールからの2発。「1点目は先生に「ゴールを見ないで振り抜け!」と言われていたので見ずに振り抜いた。2点目はニアで(志田出帆が)潰れてくれて、ほとんどフリーみたいな状態でピンポイントで出してくれたので当てるだけでした。最近は全然点が取れなくて…。チャンスはあったんですけど、そこで決めきれていなかったので素直に嬉しい」と喜んだ。

一方、聖望学園も10番のMF市原憐(3年)を中心に攻撃を展開し、終盤に連続してゴールに迫る。その中で37分、市原の右足シュートがクロスバーに当たってこぼれたところをDFペイトン有玖主(2年)がヘディングで落とし、途中出場のFW太仲貴哉(2年)が左足で流し込んで意地の1点を返したが、大勢を崩すには至らず。浦和南が5-1で勝利し、決勝進出を決めた。

浦和南はこの8年で4度目の決勝進出。私学台頭の時代で選手を集めることができない公立校では異色だ。昌平との決勝は2018年以来で、この時は逆転で17年ぶりの優勝を果たしている。

その際、野崎監督は「『塊』は土偏に鬼と書く。じゃあ鬼ってなんだ。鬼は非常無比。『魂』はどう書くか。鬼が云ったことを伝えるんだと。俺やコーチが伝えたことを胸にしまってプレーせよ。それが魂ということ。昭和のサッカーと言われても、私が批判を受ければいい。でも、子供たちは本当にその通り、鬼の云うことを、魂を持ってやってくれたなと思います」と話していた。

今回も個々で上回る相手に対し、チーム一丸「塊」になり、グループ力、集団力で戦うことがキーとなる。経験豊かな名将は「向こうは金銀飛車角。いろいろと逆算しながら、接戦に持ち込みたい」。今年は総体予選準決勝で対戦し、勝利しているが、橋本主将は「相手も準決勝で武南を倒してきているので、まったく違う相手だと思う」と前回の勝利はいったん頭から外しつつ「あっちは技術もあるんですけど、やっぱりそういうところを、相手の良いところを潰してやらせないのが南高のサッカーだと思う。相手に良いところを出させないような試合をしたい」と語った。

石黒登(取材・文)

試合結果

聖望学園 1-5 浦和南
0(前半)3
1(後半)2