傾きかけた流れを取り返す力、進化を示した3点目 武南が市立浦和を下し準決勝進出!

28日、「第102回全国高校サッカー選手権大会 県大会」準々決勝1日目が行われ、今季3冠の武南は3-1で市立浦和に勝利し、準決勝進出を決めた。11月5日の準決勝で昌平と対戦する。

両チームは今季、新人戦南部支部、総体予選、そしてリーグ戦で2回と4度対戦し、これが5度目の対決。武南が3勝としていたが、直近の後期リーグでは市立浦和が4-1で勝利していた。

互いに手の内を知る中での一戦。5バックで来る相手に対し、武南はしっかりと繋ぎながら押し込むと前半16分、MF髙橋秀太(3年)が斜めに刺したパスから「やっぱり5枚いるのでサイドはなかなか剥がせない部分が多かった。自分が少し中に入ってボールを受けて、そこから割っていくところが出たかなと思う」と内にポジションを取ったMF松原史季(3年)がディフェンスとうまく入れ替わる形でエリアに侵入し、最後はキーパーを見ながら冷静に浮かせて沈めた。

その後も武南は松原がワンタッチパスやアイデア性のあるヒールパスなどで起点となってアタックを牽引。17分、FW戸上和貴(3年)が惜しいヘディングを放ち、19分には松原のミドルシュートがサイドネットをかすめる。23分にはコーナーキックの2次攻撃からCB小金井遥斗(3年)のヘディングが枠を捉えたが、ここは市立浦和の1年生守護神・堀田悠空が防いだ。

一方、3回戦でプリンス関東2部の西武台にアップセットを演じ、大野恭平監督体制で初めてスタジアムにたどり着いた市立浦和も1失点はしたものの、その後は今大会キャプテンマークを巻く10番のCB石田凜(3年)を中心に粘り強い守りを見せ、最少失点で前半を切り抜ける。

守備の強度を上がった後半は中盤で奪取する機会も増え、途中出場のMF大河内陽友(3年)、MF高橋隼(2年)のところでボールを持てるようになったことで攻撃にリズム。MF横井葵(2年)が得意のドリブルで運び出し、FW田中悠真(2年)が抜け出しを狙う。26分、横井のクロスに大河内が飛び込んだ場面はわずかに左に外れたが、少しずつゴールの匂いを感じさせた。

武南は押し込まれる時間が増えたが、インターハイ以降さらにヘディングの強さが増した小金井や「すごく安定した」(監督)という岸雅也(3年)のCBコンビを中心にしっかりと耐える。前半は裏を取る動きが少なく、相手を崩しきるには至っていない部分もあったが、29分には左SBの三城慶人(3年)の縦パスから途中出場のFW文元一稀(3年)が抜け出し、仕留めた。

それでも食い下がる市立浦和は直後の30分、大河内の右コーナーキックをMF柳澤一郎(3年)がヘディングを叩き込み、再び1点差に。さらに32分には高橋隼がエリア内に切り込み、マイナスのボールから田中が決定的なシーンを迎えたが、うまく合わせきることができなかった。

武南としては嫌な展開。それでも34分、左サイドで一度は相手のものとなったボールを三城が粘りマイボールにするとクロスに「うまく相手と駆け引きしながら相手のマークを外すように裏に入った」という戸上がヘディングでキーパーの逆を突いて決めて3点目とし、勝負を決めた。

内野慎一郎監督は失点を反省しつつ、「ちょっと前の武南だったら、こういうゲームを落としていたと思う。(うまくいかないことで)ガチガチになって、結局最後体力がなくて。最後みたいにちょっと巻き返すとか、3点目が取れるとか、そういう武南に変わってきたと思う」と話す。

伝統のパスサッカー固執しすぎるあまり、機能不全を起こすことがあったが、「そこにいくつかのキーワードが入ってきたことによって、やっぱりもっと進化しなきゃいけないんだというのがいっぱい生まれてきたのでそれをひとつひとつ吸収して1年間がある」。ドリブルやランニング、攻守の切り替え、スペースを埋める動き…。その進化の一端を見せたこの日の3点目だった。

準決勝は対戦を待ちわびた“本物”の昌平が相手。今年は新人戦準決勝で対戦し勝利しているが、その際はMF長準喜(3年)ら主力選手がいない状態だった。リーグ戦も含めトップトップでの対戦はこの3年で初となる。昌平の下部組織であるFC LAVIDA出身の戸上は「昌平戦への想いは自分が一番強い。中学で一緒にやってきた仲間がたくさんいる中で見返してやりたい」と語った。舞台は整った。今大会再注目のNACK5決戦を制し、17年ぶりの選手権に王手をかける。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 3-1 市立浦和
1(前半)0
2(後半)1