10月28日、「第102回全国高校サッカー選手権大会 県大会」準々決勝１日目が行われ、前回覇者の昌平が初登場。５年連続ベスト８の細田学園との一戦は延長戦に及ぶ死闘となった中で途中出場のMF長璃喜（１年）のゴールで昌平が勝利した。11月５日の準決勝で武南と対戦する。

昌平は前半９分、MF土谷飛雅（３年）の左コーナーキックからニアサイドに飛び込んだFW鄭志錫（２年）がヘディングで決めて幸先良く先制したが、ゲームは簡単なものにはならなかった。

細田学園は３ラインがコンパクトを保ちながら、相手の最警戒エリアである中央で徹底した守備。少しでも距離の空いたところにはすぐさまプレッシャーをかけて限定し、ボールを奪ったところからショート、ロングを含め、昌平のスペースを突いた鋭いカウンターで脅威を与えていた。

昌平は長準喜（３年）、大谷湊斗（２年）の両ボランチを起点に堅守を崩しにかかるが、エリア内に入っていけずに苦戦。また「センターバックからの配球がうまくいかなかった。そこがスムーズに行けば自然と人が溢れてくるような感じになれたと思うが、少しその辺がうまくいかなかった」（村松明人コーチ）というように、ロングフィードからもなかなか形を作れなかった。

昌平は後半開始からU-17日本代表MF山口豪太（１年）に代わり、同16代表の長璃喜を投入。対する細田学園も動く。左SH古部悠（３年）、右SHに10番MF井出壱音（３年）と両翼を入れ替え、FW田中優希（３年）と、スピードと機動力のある選手を次々とピッチに送り込んだ。

「両サイドハーフを変えてやっかいな選手でかき乱す。古部はかなりスピードがあるので、そういう選手が出ていってゲームチェンジする」という上田健爾監督の狙い通り、新しく入った選手でペースアップすると21分、古部のクロスから井出がこぼれ球を蹴り込んで同点に追いついた。

後半も昌平がボールを保持しながら進め、細田学園が組織的な守備からのカウンターで迫る。昌平は42分に土谷のフリーキックが枠を捉えたが、細田学園の守護神・米山巧馬（２年）がビッグセーブを見せてゴールとはならず。試合は80分を越えて10分ハーフの延長戦に突入した。

延長前半も１－１もまま終了。PK濃厚かと思われた延長後半２分、スコアが動く。土谷のパスをエリア左で受けた長璃喜は「（これまでは）中しか行けなかったので、縦突破を練習からやってきて、それが繋がった」。一気に縦に加速すると、そのまま利き足とは逆の左足を振り抜いてニア上に突き刺してこれが決勝点。２－１で勝利した昌平が昨年に続き、準決勝進出を果たした。

「相手もすごく対策してやってきたので、戦いづらいというか、初戦の固さもあるし、組織的なところもなかなか崩れないところはあったので、難しいゲームになった」と指揮を執った村松コーチ。今季からチームは高校年代最高峰のプレミアリーグに所属。それに伴い、今年は初めて準々決勝から登場のいわゆる“スーパーシード”となった中で難しい初戦となったことも事実だ。

腕章を巻くCB佐怒賀大門（３年）は「プレミアとも全然違いますし、雰囲気だったりがやっぱり違う」としたうえで、「球際だったり、いつも練習でできていることができていなかったり、自分たちがやりたいことだけをやっているような感じで、相手の弱点を見てやるとかじゃなくて、自分たちがボールを回してとか、そういうところにフォーカスしてしまった」と反省。その中でも「勝ってこの経験ができたので、それをプラスに考えて１週間やっていきたい」とした。

準決勝は今季３冠の武南が相手だ。今年は新人戦の準決勝で対戦があるものの、昌平は一部の主力選手が出場しておらず、本当の意味でのトップトップでの対戦はこの３年で初めてとなる。

10番の長準喜は「次は本当に自分が一番やりたかった敵でもある。今年武南が強いと言われていた中でまだ一回も対戦できていなかったので、本当にみんな燃えていると思う。個人として戦う姿勢っていうのは今日は本当に前半見られなかったですし、それは村松コーチも話していて、根本的な球際の部分で自分たちが劣っていた部分もたくさんあったので、（次の試合は）戦うっていうベースをまずは忘れず、自分たちのサッカーができたら」と大一番への意気込みを語る。

武南の10番を背負うMF松原史季（３年）はクーバー・サッカー・スクールの浦和道祖土校でサッカーをやっていた仲だ。「小さい頃から体育館とかで一緒にサッカーをしていて、本当に仲が良い。ちょくちょく連絡を取っていて、組み合わせが決まった時も順当に行けば準決勝で戦えるね、と話をしていたので本当に嬉しい。でも同じ10番で負けられない」と意欲を燃やした。

石黒登（取材・文）

試合結果

細田学園 １（延長）２ 昌平
０（前半）１
１（後半）０
０（延前）０
０（延後）１