敵の「怖さ」を知り、自分たちの「怖さ」を出す。チーム一丸、西武台が11年ぶりの選手権へ! 目指すは前回超えのベスト4

「第100回全国高校サッカー選手権埼玉県大会」決勝が14日に行われ、西武台と浦和南が対戦。延長戦の末に西武台が1―0で勝利し、第89回大会以来11年ぶり4回目となる優勝を決めた。

「敵を知り、己を知れば、百戦殆(あや)うからず」。

敵の「怖さ」を知り、自分たちの「怖さ」を出す。4発快勝だった準決勝・武南戦とは大きく毛色の違う試合にはなったが、西武台はこの日も相手の怖さを理解し、その上で勝利に結びつけた。

立ち上がりは互いにロングボールを蹴りながら、セカンドボールを回収してフロントコートでサッカーをしていこうという意志を示していく中で前半から西武台がペースを握ったが、浦和南の集中したディフェンス陣を前に、なかなかエリア内に切り込むようなシーンは少なかった。

一方、浦和南はしっかりと守りながら十八番のセットプレーから好機を作り出す。前半14分、MF宇山友貴(3年)のコーナーキックからニアで合わせたFW坂本空翔(3年)のヘディングがポストを直撃。その5分後にはコーナーのこぼれ球から10番MF大里直也(3年)のミドルはわずかに上に外れる。40分にはDF坪井優太(3年)主将のフリーキックがぐんぐんと伸び、ゴールへ。ここは西武台GK淺沼李空(3年)が掻き出したが、決定機の数で相手を上回った。

西武台は前半、相手のコーナーキックやスローインを警戒し、MF岡田端生(3年)、MF丸山実紀(3年)、MF山本匠馬(3年)をトリプルボランチ気味に並べ、CBが弾き返したセカンドボールの回収率を高める作戦だった。結果として「正直なところ前半は重すぎちゃったなというところはある」と守屋保監督は振り返るが、ある程度単調になるのは割り切った形での策だった。

後半は自分たちの「怖さ」というところにフォーカス。「もう積極的に仕掛けていけと。何しろペナの中に入って、自分たちの良さを出して終わろうという形に持っていきました」(監督)

普段から練習ゲームの中でも特定のスタメンは定めず、システムごとに人数を絞りながらじゃんけんで紅白戦を決めているというチームは「戦う流れの中で変えられるというのはある」。後半はフォーメーションも変更し、人が入ってくるごとに配置を換えながらアタックを展開する。スピード自慢のFW細田優陽(3年)とFW松原海斗(3年)を両サイドに置く形やMF和田力也(2年)や丸山といった選手も次々と違うポジションでプレー。FW市川遥人(3年)もトップ下の位置に落ちるなど、変幻自在に形を変え、ゴールに迫るようなシーンも増えた。

その中でも浦和南は安定感を信条とする守護神・黒田海渡(3年)を中心とした堅守を維持。最後の場面ではゴール前でDF安田航大(3年)がヘディングで弾き出すなど決死のディフェンスを見せてゴールは割らせず。第100回大会は80分を超え、延長戦に突入することになった。

そして迎えた延長後半6分。西武台は右サイドでDF原田蓮斗(3年)主将がスローインを放ると、丸山がワンタッチでクロス。これに飛び込んだのがDF安木颯汰(3年)。2ボランチにしたことで攻め上がる機会を増やした左SBはもともとFWだった攻撃性と空中感覚の高さを示し、今大会無失点を続けてきた名手・黒田の牙城を破った。そして終了のホイッスル。1年の頃から自分たちが3年になる今年を見据えていた「第100回世代」の挑戦が結実した瞬間だった。

戦前には浦和南の「怖さ」というのを再度確認。守屋監督は「これだけ長い時間戦ってきて、野崎先生の怖さを僕は知っている。その怖さをしっかり子供たちに伝えるべきだと試合が決まった時に考えました。世界1周、海をヨットで渡ろうとした時に波の怖さやハリケーンの怖さを知らないと1周は出来ない。山を登る時にがけ崩れの怖さやいろいろな怖さというのを知らない限り御することは出来ない。そこを今回は徹底的に相手の怖さを知って戦おうと」したという。

昨年の同予選準決勝の武蔵越生戦、今年のインターハイ予選3回戦の浦和東戦ではその部分の準備がまだ自分たちの中になかった。夏以降は「相手の怖さをしっかり認める」というところから入れるようになり、自分たちでその怖さを御したり、たとえ高波やがけ崩れのようなことがあったとしても予測してしっかりと対応出来るように。この試合でも原田主将が話していたようにPKまで考えて準備をしていたことが最後まで焦らずに落ち着いて攻められたことに繋がった。

前回から11年が経ち、「もうないかと思っていた」と指揮官がいう優勝には選手、スタッフ含め、一丸となれたことが大きかったという。教え子で自分のすべてを伝えてきた黒岩宏明コーチや関根雄太コーチの存在。また今大会はけが人も多かった中でOBで理学療法士の向後裕樹トレーナーが選手たちが間に合うようにリハビリや治療に当たってくれたのもチームを助けた。

また、メキシコ五輪銅メダル獲得の名手で、指導者としても日本代表監督、浦和レッズ監督を歴任し、埼玉県サッカー協会会長も務めた横山謙三氏をアドバイザーとして招聘したものチームに大きなプラスに。守屋監督自身も「まだまだ先人に教わることはたくさんある」と実感したという。

そしてもちろん選手たちも一丸に。今大会は前述のようにけが人も多かったが、そこをミスの少ないプレーで埋めたDF武田蒼平(3年)や武器の空中戦に加え2得点を奪ったDF河合陸玖(2年)などもチームのためにプレー。そして最後は3年生の存在が大きかったと指揮官はいう。

「今年はよくコミュニケーションが子供たちで取れて、言い合えるというのは見ていてある。コーチ陣と選手がコミュニケーションを取って、それで悩んだ時に自分も入って話し合いをする、それがうまく回っていますね。子供たちも一方的に聞いているわけじゃなくて、自分たちで意見だとか、考え方だとか、言えるというのもある。練習の中でもやっぱりよくぶつかってますね。ちょっとそこがやっぱり全国に行くチームになってきたのかなというのは感じていました」

「お調子者の市川、安木ですとか、松原、細田、でもそれを冷静に見る武笠、吉野ですとか、それをまとめる原田がいて、原田が一方的にやっているわけじゃなく、そこのところのバランスは取れるチームになっていって、やっぱり3年生が中心にあったというのは大きい」

11年ぶりの選手権の舞台へ。指揮官は「もっともっと上げていかなければ」としたうえで「やれない子たちではない」と信頼を口にする。「まだ県リーグも残っていますし、そこで首位も取れればプリンスの入れ替え戦もある。自分たちがどのくらいのレベルまでいくかというところで1日1日が、大事な1日と大事な試合に変わっていくんだろうなと思います。そこである程度自信をつけさせたい。ここから後は自分たちも戦えるという勇気を持って選手権に臨めるように持っていけたらと思います」。「県リーグ制覇からのプリンス昇格で自信を持って選手権へ」が最高のシナリオ。チームの目標は前回大会に記録した最高成績ベスト8を超えるベスト4だ。

石黒登(取材・文)

試合結果

浦和南 0-1 西武台
0(前半)0
0(後半)0
0(延前)0
0(延後)1