武南が12年ぶりの新人戦V! 決勝は堅守・武蔵越生を4発で一蹴、「全国」を基準にさらなる成長を目指す

ここがスタート地点だ。19日、「令和4年度高校サッカー県新人大会」の決勝が埼玉スタジアム第3グラウンドで行われ、武南が4-0で武蔵越生を下し、12年ぶり10度目の優勝を飾った。

目指すところはあくまでも全国。だからこそ、この内容ではまだまだ物足りない。武南・内野慎一郎監督は「落ち着いてできた部分もあったが、正直これじゃ絶対に全国には出られないですし、この内容だったらたとえ全国に出ても勝てない」と話し、選手たちにさらなる奮起を求めていた。

前日の昌平との準決勝からメンバーを数枚入れ替えた武南は、2トップに杉沢旭浩と文元一稀(ともに2年)、ダブルボランチの一角に田和俊祐(2年)、右SBに飯野健太(2年)が入った。

立ち上がりから押し込むと前半6分、右SHでスタートした髙橋秀太(2年)の縦パスから杉沢に“武南ジュニアホットライン”が繋がる。これを杉沢が右足で思い切りよく蹴り込んで先制した。

その後も武南は右サイドで髙橋秀との連携から「自分の武器であるスピードだったり、ドリブルが生かせた」と話す県大会初スタメンの飯野が好突破を連発しゴールに迫る。29分には逆サイドを起点に、右SBの島崎貴博(2年)の横パスを杉沢が絶妙なヒールで落とし、昌平戦では貴重な劇的同点ゴールを決めたMF川上旺祐(2年)が右足で丁寧に流し込んで追加点を挙げた。

後半も武南ペースで試合は進み、11分には杉沢の右クロスから途中出場のMF髙橋俊祐(2年)が決めて3点目。後半はメンバーを入れ替えつつ、途中からは髙橋秀が中央にシフト。俯瞰の視点を持つ8番が長短のパスを交えてゲームをコントロールする。チーム4点目はその髙橋秀。36分、髙橋俊とのパス交換でエリア内に侵入すると、最後は右足のトーキックでネットを揺らした。

一方、武蔵越生は成徳深谷戦で零封に貢献したキャプテンのCB松本航(2年)が累積警告で出場停止。さらに左SBの丸山来真(1年)が怪我で早々にアウトするなど、大会前の離脱者も含め難しい側面もあった。その中で後半は攻撃に打って出るシーンも。25分には右サイドを抉ったMF河合達哉(2年)のクロスからMF荻上叶羽(2年)が決定的なシーンを迎え、セットプレーからは187cmの長身CB鈴木彪真(2年)がゴールを狙ったが、最後まで1点が遠かった。

武南は大山照人監督に代わり、当時コーチだった内野氏が指揮を執った2011年度大会以来、12年ぶりの新人戦V。内野監督体制となってからは2019年の関東大会予選以来2の冠目となった。

数字だけ見れば4-0の完勝だが、内野監督は全国を目指す上では「これではまだまだ」と話す。

「繋がっているようには見えると思うんですけど、「見えて欲しいところが見えていない」ところはたくさんある。例えば前が空いているものに対して、縦パスが入ったものを止めてから何かを動かすとか。1発フリックで入っていってもいいわけですし、そういうスピード感はこれから必要になってくるのに、ボールが持てるからとあえてスピード感がないような展開にしてしまって、あそこは上に行ったら必ず喰われる。相手の速い寄せに対して、どうそこを回避していくかは、これからもっとテーマになっていくと思う」。髙橋秀がボランチに入って以降は、相手のラインを下げることに成功し、連続攻撃に繋がった部分もあったが、「それでもこの攻撃は遅い」。県では剥がせるプレスでも、全国に行けば一歩が違ってくる。そのスピード感は次なる課題だ。

昨年はある程度、春先からメンバーを固定化していたが、今大会は支部予選から9試合を戦った中で「競争」を求めた。すべては全国に戻り、躍動するためだ。髙橋秀は「自分たちが見ているのはここじゃない。インターハイや選手権で全国に出て、昔から武南を応援してくれている方々を喜ばせたいという気持ちはみんな持っている。全国に出て活躍するために、もっとスピード感を上げていかないとダメだと思うし、そこはしっかり練習から意識して、また一からやっていきたい」と話した。それぞれが「全国」の基準を持ちながら、成長して大舞台への復帰を目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 4-0 武蔵越生
2(前半)0
2(後半)0