尾間木中が9年ぶり2度目の新人戦V! 個で剥がす伝統のドリブルスタイルに個性をプラス、「それだけじゃないチーム」が今年のテーマ

令和4年度新人体育大会・準々決勝が13日に行われ、ともに優勝経験を持つさいたま尾間木中と新座第二中の実力校2校が激突。2-0で勝利した尾間木が9年ぶり2度目の優勝を飾った。

持ち味の攻撃的なサッカーを展開しV。髙橋淳監督は「それはチームとして目指しているところ。攻めて、攻めて、勝つという想いでずっとやってきた」とフラッシュインタビューで話した。

「彼ら(新座第二)のストロングポイントが前の速い子たちが、足元もありながら、シンプルにショートカウンターも入れてくるので、基本的には相手陣地に押し込みたい。その時に相手がどうやって来るかというのを見極めて、これしかないサッカーっていうのはちょっとやらないようにしようというので、裏に入れるボールもあれば、クロス上げてもいいし、あとはドリブルで侵入していくようなことをうちはチームとしてやってくるんですけども、いろんなことをやっていこうというので、バリエーション豊富に、発想を豊かにやろうということでやっています」。

立ち上がりは緊張もあり、固さも見られた尾間木だったが、中盤でボールを握りつつ、足下の技術の高いMF矢口友翔(2年)やMF加藤大瑚(2年)主将がドリブル突破で仕掛け。10番のFW川口寛人(2年)は果敢に裏抜けを狙うなど、徐々に攻撃の圧を高めていく。すると前半19分、右サイドで起点を作り、矢口友のクロスがそのままゴールネットに突き刺さり、先制した。

シュートは狙った形ではなかったが、「やっぱり押し込んでいるからこそ、あれが入る」と高橋監督は説明する。21分には準々決勝、準決勝と2戦3発のFW腰原煌樹(2年)を投入した。

後半もひとりひとりが各ポジションで1対1を剥がし、数的優位を作って相手陣地に攻め込む。6分、クロスに10番FW川口寛人(2年)が首を振りながら合わせたヘディングは新座第二GK中島光輝(2年)のファインセーブに阻まれたが、その後も攻め続け22分に追加点。左SBの髙島翔(2年)がサイドを変え、腰原のクロスにニアに走り込んだ加藤が右足で合わせ沈めた。

また守備の部分では、指揮官がこの日のMVPに推した矢口大翔(2年)、渡邉虎太郎(2年)のCBコンビがよくコミュニケーションを取りつつ、相手の強力3トップを0で切って抑えた。

一方、13年ぶりの優勝を狙った新座第二は技術力のある小野寺快斗(2年)、大久保航大(2年)、丸田陽斗(1年)の3トップをポイントにしたダイナミックな攻撃が今年のチームのスタイル。しかし、「ちょっと相手の守備の強度にだいぶ押された部分があって、ボールを持つ位置なんかも低くなっていた。ゴールに迫るっていうところで、もう一崩し届いてなかったかな、というような印象です」と阿部悠希監督がいうように、あと一歩ゴールに迫り切れないところがあった。

後半23分、ショートパスを繋ぎ、丸田の落としを呼び込んだ10番MF林信孝(2年)が右足ダイレクトで狙ったシュートはポストを直撃。ATには準々決勝、準決勝で連続ゴールを決めたMF小川孝太朗(2年)がミドルシュートを放っていったが、惜しくもゴールとはならなかった。

2019年からチームを預かる髙橋監督は就任4年目で初のタイトル。「今回こうやって限られた中での応援ですけど、OBや地元の少年団、地域の方もたくさん来てくれて「尾間木中にぜひ勝ってほしい」と。本当にそういうところで、ひとつ成果を出せてよかったなと思います」と話す。

この日は今年の選手権予選でも活躍し、浦和学院4強進出の立役者となったOBの上田海輝人も応援に訪れていた。また、今夏の学総では道路を挟んだ“お隣”の東浦和中が優勝したこともひとつ刺激に。「多分うちが今度は行ってやるぞという気持ちにはなったかなと思います」と語る。

尾間木といえば中央を切り裂いていく伝統のドリブルサッカーがひとつスタイル。その一方で「自分の個性がある子がもう結構いる」という新チームは選手の個性と掛け合わせた、ハイブリットスタイルを目指している。準々決勝後、髙橋監督は今年のチームについてこう話している。

「技術的には、まだまだ上げなきゃいけないところはたくさんあるんですけれども、(新チームは)自分の個性がある子たちがもう結構いる。仲良く、激しくやるような子たちの集まりだから、そういったところではパワフルな部分もいままでのところに加えながら、スピードも持っている子もたくさんいますし、そういった個性も殺さないようにしながらも、やっぱり個で剥がせるようにというのは尾間木中の方でいつもやっている、力としてつけていきたいものなので、それもなくさないようにうまくやりたい。いまはこっちが良かったなというのが、見極めづらいなというのはあるんですけど、ただ「それだけじゃないチーム」というのはいいなと思っている。そこら辺がうまくマッチして、個人で判断できるようになるといいのかなと。まだ成長段階です」

新チームでスタートに入るメンバーのほとんどは、ひとつ上の代でも試合出場するなど経験値もある。「ボールも蹴れるし、足下の感覚やサッカーセンスがある」(監督)という加藤や矢口大、矢口友の双子の兄弟に加え、「(存在は)やっぱり大きい」と話す川口、腰原の2トップはどちらもアジリティ、スピードがあり、昨年度も身体の大きなDFたちと渡り合ってきた強さもある。

「自分たちのプレーはいろいろな個性がある。いろいろな尾間木らしさというのを見せていきたいです」と主将の加藤は自信を持って話す。伝統のドリブルスタイルに、ひとりひとりの個性という+αを加えて、「それだけじゃないチーム」に。今年の尾間木は一筋縄ではいかなそうだ。

石黒登(取材・文)

試合結果

新座第二 0-2 さいたま尾間木
0(前半)1
0(後半)1