「同じステージはもういらない」 夏・全国3位のリベンジに燃える昌平が成徳深谷を下し、2年ぶり5度目の優勝! 悲願の日本一へ、今度こそ

第101回全国高校サッカー選手権県予選の決勝が13日、NACK5スタジアム大宮を舞台に行われ、インターハイ予選でも優勝を争った昌平と成徳深谷が激突。後半17分、MF大谷湊斗(1年)がゴールをこじ開けた昌平が2年ぶり5度目の優勝を飾り、冬の全国大会出場を決めた。

「同じステージはもういらない」。夏全国3位のリベンジに燃える昌平が決勝でも強さを見せた。

「今日のゲームに関しては、ボールをしっかりと運ぶ、しっかりとボールを持ちながら主導権を握るというところをベースとして考えた」(藤島崇之監督)。今大会左SHに入ることが多かった長準喜(2年)をボランチに配置。長とMF土谷飛雅(2年)のコンビを中心に支配を高め、FC東京内定MF荒井悠汰(3年)とDF田中瞭生(2年)の右サイドから好機を次々と作り出す。

前半5分、田中の右足の強烈なシュートはわずかにクロスバーの上に。準決勝の埼玉栄戦で負傷のあった荒井も7分、31分と鋭い突破で会場を沸かせると、39分には敵将も警戒していたCBの石川穂高(2年)の正確なフィードから抜け出し、カットインから左足を振り抜く。シュートは成徳深谷の守護神・木村航大(3年)のファインセーブに阻まれたが、決定機を作り出した。

インターハイ得点王のMF篠田翼(3年)は武器の推進力のあるドリブルを発揮。準々決勝・立教新座戦で2得点のFW鄭志錫(1年)も35分、荒井のクロスから惜しいヘディングを放った。

前半は相手の粘り強い守備もあり、得点することができなかったが、後半17分、ついにゲームを動かす。左SBの武村圭悟(3年)がクロスを送ると、DFが弾いたこぼれ球を拾った大谷は「打とうとしたんですけど、敵が来たので1枚交わせるかなと思って切り返した。ゴールあんまり見てなくて、 もう思いっきり振りぬいたって感じです」と鋭い切り返しから左足を一閃。シュートは相手DFに当たってコースを変え、ゴールに吸い込まれた。藤島監督も「私が昌平で指導に関わってきた中でも技術はトップクラス」と賞賛する1年生MFが指揮官の起用に応えた。

守っては年代別代表経験もあるGK上林真斗(3年)が相手の決定的なシュートを飛び上がりながら弾く好守。後半もしっかりとボールを保持しながら、相手の十八番であるセットプレーは多くは与えず、数本あったロングスローも鹿島内定の津久井佳祐(3年)、石川のCBコンビが跳ね返すなど、相手の得意なプレーをしっかりと封じ、昌平が2年ぶり5度目となる優勝を決めた。

一方、成徳深谷は決勝でも「0ベース」を掲げ、DF増子颯竜(3年)やDF辻本晴也(3年)が相手の決定機に飛び込み、最後の砦である木村が好守を見せるなど、今年のチームが誇る堅守で耐えた前半は「プラン通り」(為谷洋介監督)だったが、後半引水前に喫した1点が痛かった。

失点シーンはわずかなミスも。「僕らの練習の中ではやっぱりクリアの高さというのは言っていた。あれはもうヘディングを叩いちゃったので。高さで時間を作って、MFが戻ってこられる時間を作るというのはやっていた中で、相手はやっぱり逃さないですよね」。失点前にはMF安野心富(3年)が決定的なミドルを放っていったが、相手GKに阻まれゴールとはならなかった。

昌平は決勝の前日、2011年から2018年までコーチを務め、FC LAVIDAでも指導していた石田聡さんが逝去。今年の高2、高3はLAVIDAでお世話になった代であり、決勝は喪章をつけてプレーした。石田さんは以前、LAVIDAを取材した際に「もちろんチームとしての結果も大事ですけど、やっぱり選手を(高校に)輩出するということとの両方だと思う。僕らもどちらかひとつだけではつまらないので」と話していた。今年のチームはLAVIDA勢が11人、スタートを固める試合も多く、今大会も登録30人中22人が出身選手。決勝も10人がスタメン出場した。

目標はもちろん「日本一」。今夏のインターハイではあと一歩というところまで迫った中で準決勝で帝京に敗れ、3位に終わった。特に準々決勝の大津戦で大けがを負い最後出場できなかった津久井は「やっぱりインターハイの負けが悔しすぎたので、そこはみんな気持ちを持っていると思う。そういった意味では借りを返すというところで勝ちたい。その想いは自分が一番強い」と話し、荒井は青森山田で選手権優勝を果たしたFC東京の先輩MFの名前を挙げ「日本一はずっと意識している。松木玖生くんも結果を残して全国優勝してからプロの世界に行っているので、自分も同じようにしっかり結果を残してからプロの世界に行きたい」と意気込みを語る。

指揮官は「同じステージ(3位)はもういらない」。「夏の悔しさというのは、あのステージに立ったからこそ感じている部分もありますし、あと一歩が一番悔しいんだなという想いはインターハイでは過去3回経験している。選手権は前回ベスト8で、攻めている時間が多い中でも取りきれないという悔しさがあったので、いろいろとそこのクオリティーを上げながら、且つうちの今年の色も出しながら、しっかりと良いコンディションで日本一を目指して戦いたい」とした。

「同じステージはもういらない」――。盤石の態勢で臨み、今度こそ悲願の日本一に駆け上がる。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 1-0 成徳深谷
0(前半)0
1(後半)0