成徳深谷が見せた精神的な成熟―。「ゲームプラン通り」の形で3大会連続の4強へ! 次戦は学校初の埼スタ決戦に臨む
自分たちの勝ちパターンに持ち込み、4強入り―。第101回全国高校サッカー選手権県予選・準々決勝が10月30日、浦和駒場スタジアムで行われ、インターハイ予選準優勝の成徳深谷が1-0で狭山ヶ丘を下した。2大会連続のファイナル進出をかけ、6日に浦和学院と対戦する。
成徳深谷は試合開始から秋本光瑛、平井心瑛の2年生2トップを起点とした縦に速い攻撃で押し込み、ゴールへと迫った。すると前半20分、十八番のセットプレーからゴールが生まれる。
インターハイ予選でも存在感を放ったDF鈴木嵐(2年)の右からのロングスローを秋本がニアで反らし、ファーサイドで構えていたDF辻本晴也(3年)がダイレクトで合わせ、先制した。
辻本は昨年までロングスローワーを務めていたが、今年は競り合いの強さを生かして“競る側”へ回った中で「割とポイントポイントの試合でセットプレーで点を取っている」(為谷洋介監督)。選手権予選初戦となった3回戦の西武文理戦でもセットプレーから先制点を挙げていた。相手の背中から回り込み、巧みにゴールを奪った左SBはゴール後、仲間たちの待つスタンドへ。「3年間一緒に過ごしてきた仲間たちに、感謝の気持ちを伝えられて良かった」と喜びを語った。
守備では「(狭山ヶ丘は)サイドに速い選手がいて、24番のところを起点にしてくるのはわかっていたので、そこにボールが入った時にどうボールを奪いに行くかということだけは今週整理してきた」(監督)。「相手ボールの懐に入っていくのがうまい」とい左SHの安野心富(3年)や鈴木がしっかりと相手の要注意選手をケア。そして最後のところでは「そこが安定すれば成徳のペースになる」と指揮官からの信頼も厚い守護神の木村航大(3年)主将、CB増子颯竜(3年)、そして辻本と、昨年から主力を担う守備の重鎮3枚が安定したディフェンスを披露した。
後半も平井や途中出場のMF加藤聖人(3年)が決定機を迎えた中で追加点は生まれなかったが、狙い通りの形でウノゼロ勝利。為谷監督は「先制点とセットプレーがカギを握るんだろうなと思っていた。追加点のところは正直、取れればいいかなという感じだったので、そういう意味ではゲームプラン通りだったと思う。先制点を取れれば、1-0で勝てる自信があった」と明かす。
自信のひとつはスタジアムでの経験値だ。「僕らは関東で経験しているので駒場の芝の深さを知っている」。思えば関東予選で準決勝進出した際は、成徳深谷として4年ぶりの4強入りで現3年生にとっては初のスタジアム。右も左もわからず、ロッカールームの使い方も知らなかった。インターハイ予選では「スタジアムに行く」ではなく、「スタジアムで勝つ」「全国へ行く」を掲げ、準決勝で西武台との激闘を制しスタジアム初勝利。決勝で敗れ全国とはならなかったが、成長した姿を見せた。そして関東予選で敗れた駒場で迎えた4度目のスタジアムは落ち着きすらも感じさせた。その姿に為谷監督も「本当に彼らの成長を見られて良かった」と笑みをこぼす。
主将の木村はいう。「やっぱり苦しい時間帯とかでみんなで声をかけて、イライラしないだとか、慌てないとか、そういうのは大舞台を経験できているのもあって、その余裕とかはちょっとあるかなと思います」。この日は成長した姿を見せて、半年前に泣いた駒場で勝利の笑顔を咲かせた。
次戦は成徳深谷として初の埼スタ決戦。精神的に成熟したチームが2度目の決勝進出を目指す。
一方、これが初の8強だった狭山ヶ丘は、警戒していたロングスローからの失点が尾を引いた。攻撃面では慣れない天然芝でのサッカーに苦戦。西澤正仁監督は「本来であればもっとボールを走らせながらやれたかなと思うんですけど、やり慣れていない環境で足元に入ってしまったり、そういったところでちょっとノッキングしてしまったというのはあった」と振り返った。後半7分にはMF安重真人(3年)が抜け出しキーパーとの1対1を迎えたが、決めきれなかった。
それでも近年はなかなか上位進出がなかった中で、今年はインターハイ予選、選手権予選と2つのベスト8を並べた。「去年は3年生が中心で、一気に変わってどうかなと。性格的に結構、明るい子たちが多いというのと、逆に言えばお調子も多い。だから良い波の時にはすごく良いサッカーができるチームだったんですけど、悪くなると悪くなるようなところが、インターハイ、選手権と経験して、安定したチームにというところは、評価できるかなとは思います」と話す。
選手権の戦いは終わったが、まだもうひとつの目標が残っている。それがS1(県1部)リーグ昇格だ。今年所属するS2A(県2部)では残り3試合を残し、首位の武南Ⅱと勝ち点4差の2位と昇格の可能性を残す。「あいつらにはこれで終わりじゃないよと、お前らでS1に上げて終わるんだよと言っておきます」。競争力を示した学年は後輩たちに道を残し、有終の美を目指す。
石黒登(取材・文)
試合結果
狭山ヶ丘 0-1 成徳深谷
0(前半)1
0(後半)0