けが人続出も選手層豊かな西武台が4強へ! 充実の指導スタッフのもと各カテゴリに目を光らせる

選手権埼玉県大会準々決勝。最後の試合は西武台が2-1で武蔵越生に勝利し、4強に進出した。

けが人を多く抱える西武台はMF岡田端生(3年)が中盤底に入り、トリプルボランチ的に構える戦術を選択した。対する武蔵越生もいつも通りの4-3-3でスタート。ともにトリプルボランチを用い、前の3人が鋭い攻撃でポイントを作る「ミラーゲーム」のような展開となった。

西武台は前線にロングボールを入れながら相手陣地に侵入し、セカンドボールを拾ってスピーディな攻撃へ。さらにそこで得たセットプレーからゴールに迫る。一方の武蔵越生も守備陣が粘り強く耐え、シンプルな縦パスからFW伊藤稜賀(3年)のスピードを生かした攻撃を見せる。

その中で先制したのは西武台だった。前半26分、自陣でボールを奪うとワンタッチパスで前進し、MF丸山実紀(3年)が斜めに刺すパスを通す。FW市川遥人(3年)が時間を作りエリア左に叩くと、これを受けたFW細田優陽(3年)は落ち着いてひとつ切り返し、左足で決めた。

攻勢を強める西武台は前半40分、ロングスローから味方の落としを岡田が強烈な右足ミドルを見舞うが、ここは武蔵越生の守護神・関根拓郎(2年)がしっかりと弾き出してゴールを許さない。すると武蔵越生は41分、自陣ゴール前からのロングカウンターを発動。FW石本浩大(3年)とスイッチする形で抜け出た伊藤が右足で決めきって同点に追いついて、前半を終えた。

後半に入り西武台は怪我明けのMF吉野光(3年)がピッチへ。岡田とのダブルボランチにシステムを変えると、セカンドボールの回収率も上がり、またピッチを広く使った攻撃も増えた。

後半13分には交代したばかりの吉野のミドルがわずかに右に外れたが、着実にゴールに迫っていく。そして迎えた21分、岡田の右コーナーキックをニアサイドで市川が反らし、DF原田蓮斗(3年)主将が触れると、最後はファーサイドのDF河合陸玖(2年)が決めて勝ち越し。守備面でも対人に強いDF武笠隼季(3年)を中心に後半はしっかりと「0」で抑えて勝利した。

西武台は今大会DF長谷川智紀(2年)やDF安木颯汰(3年)が怪我を抱え、吉野や細田についても復帰明けで限定的な出場に留まるなど、主力にけが人が続出する難しい台所事情もある。

守屋保監督は「本当に今回はひとつひとつ、まだまだ子供たちの輝いているプレーじゃない中で、よく1日1日を伸ばしてくれているなと。逆に言うと、自分たちで自分の成長の場を作っているということだけ、彼らはしぶとい」と、苦しみながらも踏ん張りを見せる選手たちを称える。

そういった中で際立つのが選手層の厚さだ。この試合では決勝点の河合が長谷川の抜けた穴を、DF武田蒼平(3年)が安木の穴をしっかりと埋めた。特に守屋監督は。「いきなり入って、こういう舞台で、ノーミスでチームのバランスも崩さないで戦ってくれる」と武田のプレーを評価。河合についてもある程度すべてのプレーで平均点以上を叩き出す安定感に信頼を示していた。

この層の厚さは黒岩宏明コーチや関根雄太コーチといった指導スタッフが各カテゴリに目を光らせ、そこからの吸い上げがうまくいっているからこそ。守屋監督は「自分ひとりでやってきた時代から、ちゃんとコーチ陣がいて、各カテゴリを見てくれる。使って欲しい選手がいればチョイスしてくれる。ひとりの目よりいろいろなスタッフの目というところで選手たちもどこでも頑張れるようになった」とひとりで100人以上を見ていた時代から現在の充実ぶりを語った。

石黒登(取材・文)

試合結果

武蔵越生 1-2 西武台
1(前半)1
0(後半)1