<全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準決勝>西武台 vs 浦和南

13日(日)に行われた選手権埼玉予選準決勝(Nack5スタジアム大宮)。もう一つのカードはともに苦しみながら勝ち上がってきた西武台高校と浦和南高校の一戦となった。

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西武台は初戦・成徳深谷高校にPK勝ち、2回戦は熊谷高校に延長戦で勝利と苦戦を強いられ、3回戦で狭山ヶ丘高校に2-1、準々決勝で埼玉平成高校に4-0で勝って準決勝進出。浦和南は初戦で山村国際高校に5-0と快勝したが、2回戦・浦和西高校、3回戦・浦和高校に2-1と1点差のゲームをものにし、準々決勝で聖望学園高校をPK戦の末下し、ベスト4に駒を進めた。

試合は立ち上がりから目まぐるしく攻守が入れ替わる展開に。西武台は後方から丁寧につなぎながらも、サイド攻撃からチャンスを作ろうとする。対する浦和南は前線から激しくプレスをかけ、奪ってはシンプルに高窪健人、直野椋太にロングボールを入れ、二次攻撃からゴールに迫る。また、絶対の自信を持つセットプレーからも半藤秀などが狙っていく。

試合が拮抗する中、浦和南は前半16分、相手キーパーのロングキックをこの日先発出場した石井将寛がヘディングで跳ね返すと、このボールに「前線からの守備を意識していた」という直野が猛然と詰める。直野は西武台ディフェンスに生まれた一瞬の隙を見逃さず、後ろからボールを奪取。倒れこみながらも冷静に流し込み、浦和南が先制に成功する。

勢いに乗る浦和南は前半26分、高窪が遠いところから狙っていくが、これは西武台の1年生GK高麗稜太が横っ飛びでセーブ。それでも前半29分に追加点。江原航平の左コーナーキックに出口智大が頭一つ抜け出す打点の高いヘディングを叩き込む。江原、出口ともに「練習通りだった」と話すゴールで、浦和南がリードを2点に広げる。

その1分後には敵陣のボールを駒崎寛也、直野ら攻撃陣が追い回すと、パスがずれたところを江原がカット。シュートは西武台GK高麗のセーブに遭ったが、高い位置からのディフェンスで西武台を押し込んでいく。

前半のうちに1点を返したい西武台は左サイドの丸山敦司の突破から形を作ろうとするが、浦和南の高いディフェンスラインに弾かれ、決定機を作り出すまでには至らない。試合は2-0のままハーフタイムを迎える。

しかし後半を迎えると、10分過ぎから西武台が徐々に圧力を強めていく。11分にはエリア前で田中智也、岩本匠吾とつなぐと長島幸平がエリア深くからパス。このボールはディフェンダーにカットされるが、その後も右サイドの岩本、左サイドの丸山を起点に猛攻をかける。

それでも浦和南は「西武台がサイドからくることは予想できた。自分ともう一人のセンターバックで中を守っていれば全部跳ね返せると思い、中央にいることを意識した」という出口と半藤が集中した守備でゴール前に鍵をかけ、西武台にゴールを許さない。

バックの奮闘に応えたいフォワード陣は、後半21分に高窪がミドルシュートを放つも、これはキーパーの正面。さらに右サイド深くで江原がディフェンダー2人を振り切ると中央へクロス。しかし、駒崎のシュートは右ポストに直撃し、追加点とはならず。

西武台は後半23分、田中の縦パスに山口がディフェンダーを背負いながら反転してシュート。しかし、このボールは浦和南GK浅沼樹ががっちりキャッチ。その後も細かくパスをつなぎながら浦和南ゴールに迫るが、得点が生まれないまま、試合はラスト10分を迎える。

後半36分には右からのクロスに丸山が飛び込むが、浦和南DF出口が身体を張って弾き返す。すると直後に浦和南に好機が。GK浅沼のゴールキックを石井が競り合いながらもバックヘッドで前線にボールを送る。「石井さんが絶対にヘディングで勝ってくれると思っていた」という直野が抜け出し、後半38分に試合を決める3点目を突き刺す。

アディショナルタイムには右コーナーキックから西武台・山口がヘディングを放つが、直前に入った浦和南・望月幹太がライン上でかき出してゴールならず。浦和南はこのまま西武台の得点を「0」で抑え、3-0で11年ぶりの決勝進出を決めた。

この日2得点で殊勲の直野だが、8月に右膝を負傷し、復帰したのは9月の終わり。最初は選手権予選のメンバーに入ってはおらず、最後の最後でメンバー入りを果たした。「怪我から復帰後初ゴールなので嬉しい。あとは3年生にはすごいお世話になっているので、自分のゴールで3年生の引退が延びたので嬉しかった」と直野。決勝戦では3年生を全国に導くゴールを狙う。

「今日は得点よりもゼロで抑えたことを褒めたいですね」と浦和南・野崎正治監督。

今年に入り西武台とは5度対戦し1勝3敗1分。2-0で帰ってきたハーフタイムには多少浮ついた雰囲気もあったというが、「何を浮ついているんだ! まだ半分終わったばかりじゃないか! 2-0が一番危ないんだ!」と檄を飛ばし、選手たちの気持ちを再び奮い立たせた。

今年の3年生たちは野崎監督が浦和南に帰還したのを知って、野崎監督を頼って入学してきた最初の生徒たちだ。「俺のいうことを信じてついてきたら勝たせてやる」という指揮官と「野崎先生がこれをやれば勝てるというのを信じてやってきた」(江原主将)という選手たち。『赤き血のイレブン』の意志を継承する選手たちが20日(日)、15年ぶりの選手権出場をかけ、決勝で昨年の代表校・正智深谷高校と対戦する。

一方、西武台・守屋保監督は「今日は完敗。あの3失点をしないように対策をしてきたが、想定していた形でやられてしまった。1点目、2点目と与えてはいけない失点をしてしまったのが完敗の理由。こちらが先に点を獲れていれば3点、4点が奪える試合になったでしょうし、相手に勢いをつけてしまえばこのようになってしまうと思っていたので、どっちに転がってもおかしくはないと思っていた」と試合を振り返り、

「浦和南は1年間を通して力強いチームだった。お互いに潰し合って、次の試合でふっと力が抜けてしまうことがあったので、野崎先生には次の試合では力を抜かないで欲しい」と、この1年間激闘を繰り広げてきた敵将にエールを送った。

「3年生は勝ち慣れていない中でも頑張ってくれて、よくここまで勝ってくれた。また、出直して逞しいチームを作ってきたいと思う」と守谷監督。残念ながら今年は無冠に終わったが、毎年のように強いチームを作り上げてくる指揮官のこと。来年は文字通り“逞しいチーム”となって帰ってくるはずだ。

石黒登(取材・文)
椛沢佑一(写真)

試合結果

西武台 0-3 浦和南

0(前半)2
0(後半)1