第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準決勝 昌平 vs 浦和東

全国高校サッカー選手権・埼玉県予選準決勝。連覇を狙う昌平高校と昨年に続きベスト4の戦いに挑んだ浦和東高校の一戦は3ー0で昌平が勝利し、2年連続3度目の決勝進出を決めた。


準々決勝の西武文理戦からスタメンを3枚変更、トップに運動量のあるFW前田祥玲を起用した浦和東は、立ち上がりから積極的にプレスをかけにいき、攻めの姿勢を鮮明に打ち出す。

一方、昌平もこれに慌てることなく、いつも通り、しっかりとボールを繋ぎながら浦和東のプレスの間隙を縫っていく。徐々にゴールに迫るシーンを増やしていくと先制点は前半13分。縦パスからFW森田翔が鋭いターンで一気に2人を剥がして中央にラストパスを送ると、この攻撃の起点となったMF木下海斗が右に流れながら冷静にネットに突き刺して試合を動かした。

先制を許した浦和東は左サイドからの攻撃でゴール前に迫るが、前半19分のMF横田遥人の決定機はうまくミートせずにゴールキーパー正面に。さらにその3分後にはFW河西輝星のスルーパスから前田が抜け出しを狙うも、これは昌平GK牧之瀬皓太に阻まれ得点には至らない。

すると昌平は前半28分、MF原田虹輝のスルーパスから森田がひとつまたぐと相手守備を外し切らぬうちに左足を一閃。豪快なシュートが逆サイドネットに突き刺さり、追加点とした。

まず1点を返したい浦和東は前半35分に早くも1枚目のカードを切ってFW小川翼を投入するが、終盤は2点のリードを持った昌平が試合をコントロールして2ー0のままで折り返した。

迎えた後半も序盤から連続してチャンスを作った昌平は後半12分に追加点。中盤で持った原田がMF渋屋航平、木下と連続してつけながら運んでいくと、エリア手前で受けた森田が相手ディフェンス3枚を引きつけて、最後は裏に走り込んだ原田がニアサイドに突き刺して3ー0。

浦和東は後半20分にMF中野音央のキープから、MF石塚陸斗とMF田村怜の連携で右サイドを崩してクロスに小川が飛んだが、ヘディングは芯を捉えることができずに枠外。26分にはMF志村直樹を送り出し、DF上原龍を前線に残して3バックに。志村のロングスローや長いボールからパワープレーを狙いにいくが、DF関根浩平を中心とする堅守をこじ開けるには至らず。

逆に昌平は3バックとなって開いたサイドのスペースにMF大和海里が積極的に抜け出してチャンスを作った。終始ゲームを優勢に進めた昌平が3ー0の完勝で連覇にあとひとつと迫った。

“選手権男”森田が1ゴール、2アシスト「インターハイより良いサッカーができている」

準決勝でも1ゴール2アシスト。昌平の“選手権男”森田が今年もその本領を発揮している。

この日は前半13分に鋭いターンから2人を剥がして木下のゴールをアシストすると、28分には原田の縦パスから「準々決勝ではなかなか仕掛けられなかった。あのコースは練習していた」と、相手守備を外し切らぬうちに左足で豪快にゲット。さらに後半12分にはゴール前のギャップで受けると、十分に敵を引きつけて原田のゴールを演出。チームの全3ゴールに関わった。

昨年のこの大会で先発を掴み、準決勝で2ゴール、浦和西とのファイナルは同点とされた直後に決勝弾を決めヒーローとなった森田は今年も3戦で3得点、3アシストと攻撃を牽引する。

準々決勝の正智深谷戦ではなかなかスペースのない中、絶妙ヒールで木下のゴールをアシスト。この試合でも狭いエリアを連携で崩して点に結びつけた。「練習からしっかり話していて連携は高まってきている。いまインターハイより更に良いサッカーができていると思います」。

そのインターハイでは準決勝の桐光学園戦で反撃の狼煙を上げる1点を奪うもあと一歩及ばず。個人としても「もっともっと攻撃面を磨いて、決め所で決めることが大事」と語っていた森田。インハイ後は怪我などで難しい時期を過ごし中で、ひとりで行う自主練習の中でも常にイメージを作りながらシュート練習を重ねてきたことが、この集大成の選手権で結実している。

「最後は選手権で優勝したい夢がある。そこを成し遂げるためにも、まずは決勝戦に勝って優勝したいと思います」。全国3位のその上の景色を見るために、決勝も結果にこだわる。

進化を重ねる原田 今大会は守備でも貢献「結構良い感じです」

攻撃ばかりがクローズアップされがちな原田だが、今大会は守備での貢献度も光る。正智深谷戦では「ちょっと負けたくなかった」と相手のキープレーヤーであるMFオナイウ情滋に果敢にプレスをかけていくと、この日もカウンターの起点を摘み取って逆に攻撃に繋げていった。

「自分は守備が課題でもあった。相方のマル(丸山聖陽)がやっぱりいつも気持ちを見せてやってくれるので、それを見習って自分も守備の意識が高まりました。結構良い感じです」。昨年はバランサー的な役割だった中で今年は関東予選後に点取り屋に変貌、そして今大会では守備でも観客を沸かせるなど、川崎内定のボランチは常に進化を感じさせてくれる選手だ。

後半は真骨頂でも魅せた。中盤で受けると渋屋、木下とどんどんボールをつけながら自らも前線に侵入。森田のポストプレーからモーションでファーサイドに打つと見せつつ、ニアサイドに思い切り突き刺して自身今大会2点目を記録し「自分のプレーが出せたと思います」。

「目標はやっぱり日本一。いままでやってきて、ここで勝たないとやっぱりインハイの悔しさは晴らせない。しかも次は全校応援。昌平の全体が応援してくれるので負けられないですし、連覇を達成したいですね」と原田。客席の応援を力に変えて、背番号8が昌平を連覇に導く。

石黒登(取材・文)

試合結果

昌平 3-0 浦和東
2(前半)0
1(後半)0