第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準々決勝 成徳深谷 vs 市立浦和

全国高校サッカー選手権・埼玉県予選準々決勝。初のベスト4を狙う成徳深谷高校と5年ぶりの頂点を目指す市立浦和高校の一戦はスコアレスで進行する中で後半アディショナルタイムにスーパーサブのMF北原港が劇的決勝点。チームとして初のNack5スタジアム行きを決めた。

序盤からペースを握ったのは成徳深谷。相手ボールホルダーに対し素早く寄せて連続して敵陣に押し込むと、DF長谷玲央のロングスローやセットプレーから力強くゴールに迫っていく。

前半17分には長谷のロングスローの二次攻撃からFW竹間世和がオーバーヘッドを狙いにいくと、21分にはFW戸澤雄飛とのコンビでエリア内に侵入したMF石川怜磨が決定機を迎えるが、市立浦和GK髙梨恭も最後までボールを見て足でセーブ。29分には再び長谷のロングスローからセカンドをMF石川遼がダイレクトで放っていったが、シュートはクロスバーの上を越えた。

一方、多くの時間で自陣でのプレーを強いられた市立浦和もDF深谷悠人を中心にディフェンスラインが身体を張り最後の部分ではやらせず。スコアレスのまま立ち上がりの40分を終える。

成徳深谷は後半11分に今大会3得点の北原、FW新井飛雅、14分にMF藤田温杜と攻撃的なカードを連続して投入。26分にはロングスローのこぼれ球をDF成澤圭梧がプッシュし、混戦から藤田が右足を振り抜いたが、市立浦和もMF髙橋豪がブロックに入ってゴールを死守する。

徐々にボールが回り始める中で水色の壁を前になかなかゴールに迫れずにいた市立浦和は後半35分にこの試合最大の決定機を迎える。ゴール前でフリーキックを獲得すると深谷のキックはポストを直撃。さらにこぼれ球を吉田が狙ったが、シュートは枠を捉えることができない。

成徳深谷も後半38分から39分にかけて左サイドから長谷が連続してロングスローを投げ込むと、混戦から北原がシュートを放っていくがこちらもポストに嫌われてゴールとはならず。

そのままゲームはアディショナルタイムに突入。このまま延長戦かと思われた中でついにゲームが動いた。後半41分、この試合何度目かという長谷のロングスローが左サイドから投げ込まれると、混戦から決めたのは北原。実に15本目のシュートでついに市立浦和の堅守を破った成徳深谷が、2年前のベスト8で敗れた相手にリベンジを果たす形で初の準決勝に駒を進めた。

北原が決勝点「99回ダメでも100、101回叩いていく」成徳スタイルが詰まったゴール

「100回でもし崩せる壁があるんだとしたら99回やって諦めちゃうんじゃなくて、100回も101回も何回もやる。そういう意味で最後の最後になんとか崩せたのは良かった」と為谷洋介監督。雨垂れが石を穿つようにスタイルを貫き通した成徳深谷が最後にオレンジの牙城を崩した。

徹底して狙い続けたのはセットプレー。なかなか得点がこない中でも焦らずに続けていくとそれが実ったのが後半ロスタイムだった。この試合何度目かという長谷のロングスローから最後混戦を決めたのは北原。「その前にポストに当てたのがあったんですけど、それでも絶対に自分が点を取れると信じていた」。今大会途中出場から4得点を挙げるスーパーサブは応援席に駆け寄り、新人戦準決勝以来という”クリロナパフォ”を解禁。仲間たちと喜びを分かち合った。

今年は新人戦、関東予選を制し2冠を達成したが、「自分たちのプレーに迷いがあった」(北原)というインターハイ予選は準決勝で昌平に敗退。各々が考えるスタイルにズレが生じてくる中でチームはいま一度、チャレンジャーとしての立ち位置、自分たちの武器を再確認した。指揮官のもと再び一枚岩となった集団は迎えた今大会、3回戦で西武台をロングスロー2発からのPK戦の末撃破、この日も自分たちのストロングを生かして初の4強にたどり着いた。

準決勝の相手は浦和南。今年は成徳深谷の3勝だが、主将のMF佐藤蒼太は「ひとつひとつ目の前の相手に自分たちがチャレンジャー精神を持って挑むことができなかったらもうそれは勝負にもならない。しっかりと自分たちがチャレンジャーだという心を持って臨みたい」とした。初のNack5スタジアムもチャレンジャースピリットを持って、成徳らしくぶつかるだけだ。

「この経験生かす」髙橋は市高OB戸嶋のように一般受験から4年後のプロ入り目指す

「ここを勝ちたかったので悔しいです…」。市立浦和の10番髙橋はそう言葉を絞り出した。

前半は耐える時間が多かった中で後半は攻撃の起点として形も作ったが、「惜しいシーンが何回かあった中で決めきれなかったのと、最後の失点はやっぱり自分たちの弱さ」と悔やんだ。

今年は春先の怪我で長期離脱。最後のこの選手権予選にかけてきた。「チームにも迷惑をかけちゃって、その間みんなで俺がいない中で頑張ってくれたので、この大会は自分がみんなのために頑張る時だと思っていた。その期待に応えられなくて申し訳ないかなと思っています」。

ともに戦ってきた3年生には「感謝しかない」とし、後輩たちには「この悔しさをバネに強い市高を取り戻すじゃないですけど、俺たちを越えていってもらいたい」とその夢を託した。

「4年後にしっかりとプロになれるように、この経験を生かして頑張りたいと思います」。一般受験から筑波大に進学、今シーズンよりプロの道に進んだ市立浦和OBのMF戸嶋祥郎(現アルビレックス新潟)のように大学サッカーで大暴れして、4年後のプロ入りを目指す。

石黒登(取材・文)

試合結果

成徳深谷 1-0 市立浦和

0(前半)0
1(後半)0