第97回全国高等学校サッカー選手権大会 埼玉県予選会決勝トーナメント準決勝 成徳深谷 vs 浦和南

全国高校サッカー選手権・埼玉県予選準決勝。新人戦、関東予選2冠の成徳深谷高校と今年のインターハイ校・浦和南高校の一戦はスコアレスで延長戦に突入する中、延長後半6分にFW草野皓が決めた1点が決勝点となり浦和南が1ー0で勝利。2年ぶりの決勝へと駒を進めた。

ともに守備がベース、セットプレーが武器と似たところの多い両校のミラーマッチは序盤から長いボールが飛び交う中、成徳深谷は武器のDF長谷玲央のロングスローやセットプレーからゴールに迫るが、浦和南も相馬海音や庄司千暁の両センターバックを中心にしっかりと対応。

なかなか攻めに転じられなかった浦和南も前半25分にFW佐藤智隆との連携から、この日は一列前で先発した草野がエリア内に抜け出すが、成徳深谷DF山田宏心が足を出してシュートまでは持ち込ませない。両軍ともに前半はシュート「0」と持ち味の堅守が目立つ展開となった。

迎えた後半1分、成徳深谷はロングスローの二次攻撃から長谷がダイレクトで入れるとDF堀井皓士郎が頭で合わせたがキーパーの正面。これが両チーム合わせて最初のシュートだった。

その後も共にセットプレーから得点を狙うが、浦和南・正野友稀、成徳深谷・神尾龍汰の両守護神がハイボールにしっかりと対応。守備陣の集中力も高く、なかなか決定機には至らない。

成徳深谷は後半10分に準々決勝・市立浦和戦で決勝弾のMF北原港、17分にFW新井飛雅を投入。すると29分、カウンターから一瞬のスピードで左サイドを抜けた新井のクロスに北原が飛び込んだが、ダイレクトで合わせたシュートは枠を捉えることができず。思わず頭を抱えた。

浦和南は後半アディショナルタイムにFW三浦遼介、DF大谷祐介と、この試合で初めての交代カードを連続して切っていく中で、80分を越え勝負の行方は20分間の延長戦にもつれ込む。

延長前半1分には再び成徳深谷がゴールに迫る。後方からのハイボールに北原が抜け出すと、一度は前に出たGK正野がスライディングで防いだが、そのセカンドボールを拾った新井が一気にエリア内に侵入。正野も戻りきれず決定的かと思われたが、しかしゴール前に戻った相馬が最後切り返してきた相手に対し、右足を残してボールをカットしてこれも得点には至らない。

延長後半も半分が過ぎPK戦もよぎり始めた6分、ついに試合が動く。浦和南は自陣からのスローインを三浦が競ると、中盤の混戦を拾った大谷がひとつ運んで右足アウトで絶妙なスルーパス。これにディフェンスの背後から走り込んだ草野が冷静に左足で突き刺して均衡を破った。

残り4分で1点が必要となった成徳深谷は延長後半から入ったMF間中実来の突破やセットプレーで1点をもぎ取りにいく。終盤には連続して長谷のロングスローから押し込みにかかるが、最後まで粘り強く守った浦和南が3戦連続の1ー0ゲームを制し、ファイナル進出を決めた。

浦和南が「狙い通り」の守備で3戦連続の零封 17年ぶりVへ、2年前のリベンジ!

「攻めはちょっと恥ずかしいですけど、守りは意図通りの展開ができた」と野崎正治監督。3戦連続の零封で決勝進出。「真面目だけが取り柄。よくやってくれている」と選手を讃えた。

ロングスロー対策は1週間みっちりと重ねてきた。「市高の場合はキーパーが前に出ずに失点していた。そこはしっかりと対策できました」と相馬。この日は正野が出られるところは正野が、出られないところは相馬と草野でしっかり弾き返してゴール前に分厚い壁を形成した。

セットプレー練習では「南高の中で一番強い」(相馬)という184cmの濱田駿コーチを相手のポイントである“仮想”成澤圭梧に当てつつ、ゲームの中でもワンハンドで投げ込んでもらいながら対策。試合を通じて身体を張った守備を見せた正野は「結構練習から厳しく来られていたので、試合になってやってみると意外とできたなという感じですね」と練習の成果を語った。

昨年はまさかの1回戦敗退。この世代は「10月14日を忘れるな」を合言葉にスタートした。そんな中で「野崎先生が『俺の言うことをちゃんと聞いて、それを体現できれば勝たせてやることはできる』と毎回言ってくれるので、自分たちはその言葉を信じて野崎先生の後についていく。そこをしっかりとやってきたから、いまのチームがあるんだと思います」と相馬はいう。

2年ぶりの決勝進出を果たし挑むは昌平戦。相馬は「2年前もすごい悔しい負け方をして、野崎先生自身も本当に悔しい想いをしたと思う。自分たちはその想いを汲み取って、今回こそは昌平を破って全国に連れて行きたいと思います」とし、正野も「本当に野崎先生と全国に行きたい気持ちはみんな強い。最後の大会なので悔いのないようにしっかりと戦っていきたい」と意気込みを語った。17年ぶりの優勝を果たし、今度こそ指揮官とともに選手権の舞台に立つ。

敗戦も最後まで示した成徳スタイル チーム牽引した佐藤「今後の人生に生かしていく」

「前半から狙い通りのことはできていた中で、まだ自分たちには足りないものがあったんだと思う。それが何かっていうのはまだはっきりとはわかっていないんですけど、それは1、2年生が見つけて、必ず全国に行って欲しいと思います」。主将の佐藤蒼太はそう振り返った。

0ー0で進む中で相手よりも多く決定機も作り出したが、延長後半に一瞬の隙を突かれ失点。終盤もセットプレーから得点を狙ったがあと一歩及ばず、初の全国の夢は後輩たちに託した。

「自分は中学の時、試合に出られなくて悔しい想いをして成徳に来た。ここで最高の仲間と出会うことができて、たくさん本当に苦しい想いもしましたけど、すごく成徳に来て良かったと思っていますし、仲間にはありがとうと言いたい」と佐藤。今年は新人戦で初タイトルを獲得すると、関東予選も制して県内2冠を達成。本戦でも準優勝とチームの歴史を作り上げた。

この選手権予選でも初のベスト4に進出。「監督を勝たせてあげられなかったことは悔しい」としたが、為谷洋介監督のもと、この1年間貫いてきたスタイルは最後までピッチで示した。

「現実っていうのはどれだけ準備しても、どれだけ行けると思っていても厳しいものがあった。もうサッカーが終わってしまうチームメイトもいますけど、この後の人生っていうのは長いし、大切なので、そこで生かせるようにしたい」。これから先の人生で何度も壁にぶち当たることはあるだろう。努力は必ずしも報われないかもしれない。でもそんな時こそ「99度ダメでも何度でも扉を叩いていく」成徳スピリットで、今後それぞれの舞台での活躍を期待したい。

石黒登(取材・文)

試合結果

成徳深谷 0-1 浦和南

0(前半)0
0(後半)1