“苦労人”DFが土壇場で同点弾。成徳深谷がPK戦に及ぶ戦い制す! 選手権の怖さ再認識し、成長に繋げる

選手権埼玉県大会1回戦。成徳深谷と狭山ヶ丘の一戦は、PK戦の末に成徳深谷が勝利した。

現在S1リーグ3位(8勝6分1敗)と好調の成徳深谷だが、苦戦を強いられることとなった。

為谷洋介監督は選手権初戦の難しさを語り、「選手たちには所属リーグは関係ないんだと言ってきた中、リーグ戦が好調だったことで浮かれている部分はあった。リーグと選手権はまったく別物だということは口酸っぱく言ってきたんですけど…」と少なからず慢心があったと振り返る。

「相手がすごく研究してきた」(為谷監督)という前半。狭山ヶ丘は成徳深谷の不安定なところを突いて攻撃を仕掛ける。特にセカンドボールの回収というところでは有利にゲームを進め、敵将も「機転が利く」と評価した10番FW杉山耀建(3年)が持ち出してはチャンスを作った。

成徳深谷は右サイドのFW宮田優(3年)をターゲットにアタック。前半28分にはフリーキックから競ったこぼれ球から「今年はもう誰もが認めるエース」と10番を預けたFW高橋快歩(3年)が強烈なミドルシュートで狙うが、ここは高1時から注目を集めていた狭山ヶ丘の長身守護神・若林学歩(3年)が立ちはだかる。前半の成徳深谷のシュートはこの1本のみだった。

スコアレスのまま後半に入った中で先にスコアを動かしたのは狭山ヶ丘だった。MF五ノ井惇(3年)が中盤で寄せてボールを回収し、一気に縦へ送ると、抜け出したFW田島楓也(2年)がエリア内で倒されてPKを獲得する。これを22分、杉山が丁寧に右に蹴り込んで先制した。

成徳深谷としては初戦敗退となった昨年の2回戦・立教新座戦を思い出す展開。それでも今回は「ベンチも含めて一体となれていた。本当に生徒たちが勝ちたいという想いが強かった」(為谷監督)。

すると土壇場で再びゲームが動く。直前の高橋のフリーキックは若林が掻き出したが、そこで得たコーナーキックから後半40分、ゴール前で混戦となったところを最後に決めたのはDF橋本竜也(2年)。「あいつは本当に苦労人。入ってきた時は1年生の中でも下の方だったんですけど、努力努力でここまで来て、レギュラーを勝ち取った」右SBが窮地のチームの危機を救った。

その後、延長戦でも決着は付かず、勝負の行方はPK戦へ。狭山ヶ丘GK若林が先に後攻の1本目を止めてリードを奪うが、成徳深谷の守護神・木村航大(2年)も1本目から連続してシュートの方向を当てるなどプレッシャーをかけていくと5本目で相手のミスを誘発。サドンデス7本目はキーパー同士となった中、木村がストップし、100分を超える戦いに終止符を打った。

試合後は極限の緊張感から解放されてか、はたまた昨年を思い出してか、1年時からトップチームを経験するエース高橋がしゃがみ込み涙を流す場面もあった。この舞台の怖さを改めて再認識出来たこと、そしてそこで勝利を収め、昨年のリベンジを果たせたことは今後に繋がる。

一瞬ですべてが終わる怖さがあるのも選手権だが、同時に選手を大きく成長させるのもまた選手権という大会だ。為谷監督は「1試合1試合、やっぱり選手権は成長すると思う。本当にいくら練習をやっても、こういう緊張感のあるゲームの中で勝っていくということが自信になっていく。そういう成長というのはしっかり見届けながら、向き合っていきたいと思います」とした。

石黒登(取材・文)

試合結果

狭山ヶ丘 1(5PK6)1 成徳深谷
0(前半)0
1(後半)1
0(延半)0
0(延半)0
5(PK)6