2冠狙う南稜は大勝も「消化不良」の一戦に。関東大会後『進化』選んだチームは大会の中で成長してもう一段上へ
女子選手権予選3回戦。第1シードの南稜は6-1で庄和を退け、準々決勝進出を決めた。
初の県優勝となった学校総合大会との2冠を狙う南稜にとってはこれが選手権予選初戦だったが、最高の立ち上がりを見せる。開始わずか44秒でMF中村莉瑚(3年)のアシストからMF四潟心絆(1年)が先制ゴールを決めると、前半4分にはエースFW山中薫子(3年)が追加点。さらに7分にはMF野村実紀(3年)のコーナーキックに山中が合わせて3-0とした。
「初戦ということで、入り15分だけはセーフティファーストで、とにかく相手陣地でやろうと。その中でブレイクの時に3点以上差が開いた時には指示を出すから、そうしたらトレーニングを積んできたビルドアップしていくようなサッカーをやっていこうと」(南稜・桑山秀家監督)
入りに関してはまさに狙い通りの形。このままクーリングブレイクを迎えればプラン通りだったが、ひとつのミスがゲームプランを変えることになる。逆にここを逃さなかった庄和は前半11分、カウンターからMF渡邉芽生(1年)のパスをFW近藤麗(2年)が決めて1点を返した。
それでも地力で勝る南稜は前半26分、山中が直接フリーキックを突き刺して再度突き放し。後半は選手を入れ替えながら12分に野村の裏へのパスから四潟が自身2点目を決め、14分にはエリア内でボールを収めた山中がターンから左足で叩き込んだ。山中はこの日4ゴールの活躍だった。29分には途中出場のFW佐藤風季(3年)がゴールを決めるなど収穫もあったが、1失点が響き、前半はセーフティなサッカーから踏み切ることが出来ず、「ちょっと今日は消化不良ですね」と指揮官。山中主将も「あまり自分たちのサッカーは出来なかった」と悔やんだ。
6月の関東大会では「欠点がいくつも見えた」という中で、これまでのバランスを崩してもチームを大きく変えるべきか、話し合いが行われたが、「やっぱり関東まで行って、ベスト4に入ったチームが、ベスト4でいいよね、関東に行ければいいよね、というサッカーはやっちゃいけない」とチームが選んだのは現状維持ではなく、進化の道。そういった中でこの夏はリビルディングの大事な作業が行われるはずだったが、緊急事態宣言による活動制限で練習ゲームも十分に組めず、決して組み立て切れたとは言い切れない。また、選手たちにしてもやってきたことが果たして正しかったのか、という確証が得られないままこの大会に臨んでいるという状況もある。
それでも少しずつ変化の予兆はある。この日はエースの山中が関東大会以降、意識して取り組んできたターンからのシュートを何本も放ち、得点も記録するなど試合の中で成長を披露。「次も当然強いチームですし、そこで勝てれば力になると思います」(監督)と大会の中で力をつけていく。茨の道にはなるが、「彼女たちはそこにチャレンジをしようとやってきている」と選手たちが臨んだ成長への道。ここを勝ち進んだとき、これまで以上のチームになっているはずだ。
石黒登(取材・文)
試合結果
南稜 7-1 庄和
4(前半)1
3(後半)0