期待の新星MF篠田大輝が劇的決勝弾!8強では終われないと刺激となっている弟の存在


途中出場の1年生アタッカーに課せられたミッションはひとつ。それは「ゴールを決めること」。昌平期待のMF篠田大輝は全国デビュー戦でそのミッションをしっかりと遂行してみせた。

出番が回ってきたのは後半23分。得点が欲しい状況でMF大和海里の選択肢もあったが、投入されたのは篠田だった。藤島崇之監督はその理由について「大和の良さもありますけど、篠田のやっぱり狭い局面を最後崩しにかかった時に「振れる力」というか、あの狭い局面でも振り切るという力というのは本当に大きな武器なので、思い切って送り出しました」と振り返る。

その篠田は投入直後からゴールに迫る姿勢を見せていく。後半30分には同じくこの日は途中出場だったMF鎌田大夢とのパス交換から放った右足シュートがサイドネットの外をかすめた。

歓喜の瞬間が訪れたのはアディショナルタイム。

昌平は鎌田の展開からDF大竹琉生が左サイドを抜け出し、エリア内でひとり外して篠田へ。

「監督からゴールが見えたら振り抜けと指示をいただいていた。相手をうまく交わせて、ここで振り抜いたら入るんじゃないかという予感がした」という篠田は素早く左足に持ち替えて一閃。シュートはこの日何度も阻まれてきたクロスバーの下を叩いたが、そのままゴールに突き刺さり、終了間際の劇的ゴラッソとなった。

実は利き足は右足。だが、左右で同等の力のあるシュートが打てるのは篠田のひとつの武器だ。

「小学校の時から左右蹴れる選手っていうのはあまりいないんじゃないかと自分の中で思っていた。片方の足はすごくても、左足はおもちゃだな、左足は使えないなと言われている選手が自分の周りに多かったので自分は右も行けるし、左も行けるぞというのをひとつの武器というか、そういう長所を増やせるように普段から練習してきました」。

練習中から常に利き足ではない左足も意識しながらプレー。磨き上げてきたプラチナの左で昌平を初の8強に導いた。

吉川市出身で3歳からボールを蹴ってきた。レジスタFCに在籍した小学校6年生では全日本少年サッカー大会を制し、日本一を経験。鹿島アントラーズとの決勝では篠田も終了間際にゴールを記録している。中学校年代では浦和レッズジュニアユースへ。残念ながらユース昇格は叶わなかったが、その悔しさもひとつのモチベーションに変えて、自身2度目の日本一を狙う。

またもうひとつ刺激となっているのが弟の存在。弟の翼は今夏FC LAVIDAのキャプテンとして初の全国大会に臨んだ。

「応援しているのもありますし、自分が一度日本一になっているからこそ、弟にもなってほしかった気持ちがあったので応援していました。あいつがキャプテンだったので、『お前がやってやれ』ということは言っていました」。

そんな兄の声援に応えるように翼は予選3日目のレノヴェンスオガサ戦で圧巻の4ゴールのパフォーマンスを見せるなどチームを牽引。全国8強に導く原動力となったが、日本一にはあと一歩手が届かなかった。

「やっぱり弟が果たせなかった分、ベスト8は超えたいというのはあります」。試合後は応援に来ていた弟とハイタッチを交わした。兄として、8強で泣いた弟の分も次も負けられない。

次の青森山田は篠田にとって対戦を熱望していた相手。「青森山田の優勝した代だとかを見てきた中で「自分は山田に入るよりもここを倒したい」という強い気持ちがあって昌平を選んだ。ボランチに1年生の松木玖生選手がいるんですけど、同じ1年として負けたくない。自分が夢見ていた選手権で一番やりたかった相手が目の前にいる。ここを倒せば自分が望んできたことがひとつかなうので、ベスト8で勝って、埼スタに戻りたいなと思っています」と意気込む。

今回は決定力の高さという部分を見せた篠田だが、遺伝と語る足の太さからくるどっしりとした安定感のあるキープも自慢のひとつ。さらに練習ではゴールキーパー以外すべてのポジションでプレーするなど、その抜群のサッカーセンスは指揮官も認めるところであり、今後はさらにさまざまな魅力を放っていくことだろう。昌平にまたひとり、ニューヒーローが現れた。

石黒登(取材・文)