8強敗退も王者を追い詰めた昌平。多くの人の心に刻んだ「最後は技術」という信念


敗れはしたが、後半は自分たちのサッカーで押し込んで、王者をあと一歩まで追い詰めた。「45分ハーフだったら…」。そんな声も聞こえてくるほど、ここで負けるのは惜しいチームだった。

前半は相手の身体能力の高さやサイドのスピードをケアしきれずに3失点。攻撃では青森山田の堅守を崩すことができなかったが、「自分たちが積み重ねてきた技術的な部分や最後の質にこだわる部分はしっかり出せると鼓舞して送り出した。ゴールに向かうシチュエーションをどう増やすかというところでは、よりゴールに近い、ゴールに直結するような動きだしという部分、ラインを取る動きというのをよりフォーカスしていこうという話をしました」と藤島崇之監督。

すると後半は昌平がそのクオリティを見せ始める。FW小見洋太が前を向いてプレーして相手のラインに圧力をかけ、2列目のMF鎌田大夢らが起点となって昌平らしいパスワークが増えた。

ボールを持ちながらジワリジワリと押し込むと、それはジャブのように相手に効いていき、後半9分に中盤でパスミスを拾った小見がタメを作って、スルーパスに抜け出したMF須藤直輝が冷静に流し込んで追撃の狼煙。28分には細かく繋いで、DF大竹琉生のアーリークロスから小見のヘディングは惜しくも枠を捉えることはできなかったが、34分には鎌田の浮きパスから途中出場のFW山内太陽がキーパーを外して、倒れ込みながら右足で決めてついに1点差に迫った。

終盤も攻勢を仕掛け続ける昌平に対し、青森山田ディフェンスは前に蹴り返すしかないなど、明らかに冷静さを欠いていた。しかし最後に意地を見せた王者のブロックをあとひとつ崩すことができず。プレミア覇者をあと一歩まで追い詰めながら、昌平の挑戦はベスト8で幕を閉じた。

埼スタ帰還、夢の日本一には手が届かなかったが、それでも今大会の昌平は見ている人の心に大きな爪痕を残したはずだ。「最後は技術」という指揮官の信念のもと、2回戦では興國、3回戦では國學院久我山と同じくテクニック自慢の相手を、技術と判断に裏打ちされた自分たちのサッカーで連破。王者相手にもその姿勢は曲げなかった。藤島監督は青森山田の「勝負強さ」を認めた上で「自分たちの良さという部分はしっかりと、十分と発揮できた部分はある。そこに自信を持って、しっかりとまた質と言う部分も含めて、高めながらやっていきたい」と語った。

石黒登(取材・文)