埼玉県中学校新人体育大会決勝 大谷場 vs 南浦和

令和元年度埼玉県中学校新人体育大会・決勝(17日、埼玉スタジアム)。さいたま市勢対決となった南浦和と大谷場のファイナルは2ー0で南浦和が勝利し、悲願の初タイトルを飾った。

まず仕掛けたのは大谷場。運動量を活かして中盤でボールを回収し速い攻撃。相手の強力な2トップに対しては菊地匠、榊義雄、川島晴空、木下征悟の4枚が2人ずつでついてケアした。

一方、南浦和はやや慎重に入りすぎたこともあり、なかなか武器の攻撃を生かすことができなかったが、ハーフタイムに「自分たちの良さを出そう」と攻撃の部分を確認し合うと、スコアが動いた。後半4分、2列目のMF鳥羽瀬琉貴がディフェンダー1枚を釣り出すと、FW高橋伸太朗がドリブルでエリア左を抉り、グラウンダーのクロスをFW秋本光瑛が決めて先制した。

こうなると勢いは止まらず。畳み掛けるように後半8分には高橋伸がドリブルで切り込み、右足で鋭く突き刺して2点目。大谷場は準決勝・埼玉栄戦でも途中出場から1ゴールを挙げ、逆転の機運を作った“切り札”MF清宮優太がカットインから狙っていくがシュートはコースが甘くネットを揺らすには至らず。そのまま2―0で勝利した南浦和が初の県タイトルをつかんだ。

より濃さを増した「攻撃スタイル」。神立監督4シーズン目で南浦和が初優勝を達成!

就任4シーズン目で初の栄冠。神立朋次監督は「ホッとしましたね。南浦和に来て3年、期待もされる中で簡単なことじゃなかったが、やっとタイトルが取れた」と、胸を撫で下ろした。

今年は尾間木で師弟関係だった清野大輔コーチが赴任し黄金タッグが復活。ちょうど一回りだった前年度は上の代が関東、全国に出場し南浦和としてのステージをひとつ引き上げた。今年のメンバーもスタメン、途中出場を含めて半数弱の選手が全国で貴重な経験を積んでいる。

そんな中で迎えた今年度は市予選を圧勝すると、県でも他の追随を許さず。準決勝後、指揮官は「私立とやっても、いまの高3の尾間木の時くらいは行けるのかなと思っている」と、尾間木でのラストイヤーで全国各地の強豪校で活躍する世代と比べながら手応えを口にしていた。

派手さはないが基本技術が高く安定感のある山下絢斗、橋本佳明のWボランチ、2列目でアイディア溢れるプレーを見せる鳥羽瀬、そしてそれをゴールに結びつけられる秋本光、高橋伸の決定力。中央から連続して押し込み、個の技術で打開する攻撃スタイルはまさに尾間木でやってきた形だ。「3年経ってやっと「神立らしい」尾間木の時のようなチームができてきた」。

後ろは高さもあり、ここに怪我で出場できなかったMF橋本優吾、MF秋本夢嵐が加わるとどうなるのかは楽しみなところ。今年は南浦和を中心に埼玉中体連サッカーは進んでいきそうだ。

大会を通じて12得点と席巻。平石、若松超えを誓うストライカー 南浦和FW高橋伸太朗

大会を通して12ゴールと席巻。決勝も1ゴール、1アシストを決めるなど彼の独壇場だった。

前半はやや慎重に入りすぎてしまったという中で後半4分、エリア左をドリブルで突破するとディフェンスとキーパーの間に低くて速いパスを通し、秋本光の先制弾をアシスト。もちろん“相方”が決めれば「自分も」となるのがストライカーとしての本能だ。その4分後、ゴール左前でボールを持つと「ドリブルして中に切り込んだ瞬間にゴールが見えた。ピッチがスリッピーだったので低いシュートを意識して打ったら良いコースにいきました」。右足を振り抜くと、ボールはキーパーの手前でバウンドし、スピードを増しながらゴール右隅に吸い込まれた。

ポストは課題だというものの、得点感覚やキックの精度、そして仲間を生かせる広い視野と落ち着きなど、FWとしての能力は高いものがあり、現時点では頭ひとつ抜けている印象だ。

それでもまだ手応えを手にしているわけではないと高橋はいう。「去年平石(陸人/原山)くんがもっと点を決めていたし、若松(優大/南浦和)くんとか吉野(龍那/南浦和)くんはもっと自分よりもうまかったので、そこはもっとできるように練習していきたいです」。ひとつ上の代で類い稀なる攻撃性能を見せた原山のエース・平石陸人、強さとしなやかさを持ち南浦和を初の関東、全国大会に導いた若松優大といった昨年度の中体連を代表するストライカーたちの存在を間近で見てきたからこそ、今年は自分が彼らを超えていくという気持ちは強い。

今大会は全試合でゴールしたが、昨年平石が記録した13得点にはあと1ゴール及ばず。「さすが平石くんだなと思ったし、前半決められるところがあったのでそういうところを決めていればもうちょっと楽に試合を運べたと思うのでそこが反省点。今大会を通して結構自信はつきました。でももっと相手を圧倒できるように、自分としてももっと得点力を上げていきたいと思います」。この経験を糧にさらに成長を重ね、先輩たちを超える県No.1ストライカーとなる。

石黒登(取材・文)

試合結果

さいたま大谷場 0-2 さいたま南浦和

0(前半)0
0(後半)2