全国高校サッカー選手権埼玉県大会 準決勝 西武台 vs 国際学院
第98回全国高校サッカー選手権埼玉県大会・準決勝(10日、Nack5スタジアム)。インハイ覇者・西武台と国際学院の一戦は、2ー1で勝利した西武台がファイナル切符を手にした。
試合は早々に動いた。西武台は前半6分、この日トップ下起用でシュートの意識が高かったというMF村田智哉が果敢に狙っていくとディフェンスに当たってふわりと浮いたボールが中央へ。守備がボールウォッチャーになっているところをFW寺川洋人が大外で詰めて先制した。
早くもリードを奪った西武台だが、「1点取ってわがままなプレーが出始めてしまった。俺は攻めたい、俺はそこを埋めて欲しいといった状況で少しチグハグになってしまった」と守屋保監督。すると徐々に国際学院が迫力のあるセットプレーなどから押し込む時間を増やしていく。
前半25分にはFW大場一翔の落としをMF佐野佑真が左45度に正確なスルーパス。これにFW小河原龍太がダイレクトで合わせたが、シュートはコースが甘くキーパーに阻まれてしまう。
後半も一進一退の中で西武台は6分にサイドアタックからFW西岡健二が抜け出すも決めきれず。9分には国際学院に決定機。佐野がドリブルで1枚外し、エリア右でフリーになったFW齋藤彪雅のシュートは枠を捉えたが、ここは西武台GK伊佐山縁心がファインセーブを見せる。
すると膠着した展開を動かしたのは西武台だった。直前の連続アタックはライン上でクリアされたが、そこで得たコーナーキックから後半18分、寺川の中弾道のクロスをニアで村田智がヘディングですらすような形で決めて欲しかった追加点。国際学院は21分、佐野の左コーナーキックを齋藤が折り返し、大場が右足で決めて追撃の1点を返したが、あと一歩及ばなかった。
1年生CB原田が堂々のパフォーマンス 武器の1対1と空中戦で相手FWに仕事させず
1年生CB原田蓮斗は3年生たちに支えられながら堂々のパフォーマンスで勝利に貢献した。
「10番は前の(今田)剛さん、村田(智哉)くんが止めてくれていたんですけど、裏に抜けた11番と9番は絶対に負けないようにしたので、それはできたと思います」。2つのポイントに対しうまくパスコースを断ちつつ、武器の1対1やロングボールへの対応で強さを見せた。
夏以降にポジションを掴み、今大会は唯一の1年生レギュラーだが、「1年とかはあまり関係ないと思っている。足を引っ張るとかそんなのはなしにもう死に物狂いで守るだけです」。
そんな1年生CBを経験豊富なディフェンスラインの3年生たちがサポート。「佐野さんも森下くんもよく声をかけてくれる。隣の関口くんも常にカバーに入ってくれるので本当に安心してできます」。1年生だからこうしろではなく、ひとりのプレーヤーとして意見を受け入れ、それに対し全力でフォローしてくれる先輩たちにその能力を引き出され、日々大きく成長中だ。
「次は厳しい戦いになるのはわかっているんですけど、勝てば全国なので絶対に守って全国に行けるように頑張りたいです」。高い攻撃力を見せる昌平を零封し、3年生と全国に立つ。
4強敗退も最後まで観客を沸かせた国際学院MF佐野佑真。刺激となり続けた兄には感謝
ただひとつ得点だけが足りなかった。MF佐野佑真は「ゴールという形でチームを楽にしてあげたかったんですけど、それができなかった自分のところが敗因かなと思います」と悔やんだ。
常々「見ている人が面白いと思ってくれるようなプレーをしたい」と話している国際学院の10番は、この日もボールが入れば鋭い突破や斜め45度へのスルーパスでスタンドを沸かせた。
「相手を抜いた時の盛り上がりだったり歓声はすごく聞こえていて、やっていて楽しかったし、幸せな環境だなと思えたんですけど、でもサッカーは勝負なのでそこで負けてしまったら自己満足なので、結果を出せなかったところは本当に後悔というか情けないなって思います」。
佐野日大で全国3位を経験した兄と同じ舞台を追い求めた3年間。「兄ちゃんが全国3位になった姿を見て自分もあの舞台に立ちたいという想いがずっとあって、うまくいかない時とか、自分は1、2年の時から試合に出ていたわけではなかったのでサッカーに対して情熱がなくなってきたりというのもあったんですけど、そういうのを見てきたからこそ、ここを目指して頑張れてきた部分もあるので、そこは兄ちゃんに本当に感謝していますし、もう一回親を全国大会に連れて行きたかったんですけど、本当にできなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです」。
それでも「この高校に来て、10番をつけて、Nackとか駒場でできて、本当に幸せだなっていうふうに思うし、仲間たちにも本当に感謝しています」と国際学院での3年間を振り返った。
選手権を目指した挑戦は終わりを告げたが、まだやることがある。「自分たちも1年生の時は勝てなかったりした中で、全国大会を目指して、ベスト4で終わってしまったけど、こういう景色をインターハイと選手権で見せられた。やっぱりこれ以上の景色を後輩たちには見てもらいたいので、残り数ヶ月になるんですけど伝えられることは全部伝えて、一緒にプレーしてできることはやって、自分の出せるものを全部置いてこの高校を卒業できるようにしていきたいと思います」。初のインターハイ準決勝進出、そして2度目の選手権ベスト4入り。試行錯誤しながらも積み上げてきた自分たちが培ってきたものをすべて伝えて高校サッカーを旅立つ。
石黒登(取材・文)
試合結果
西武台 2-1 国際学院
1(前半)0
1(後半)1