令和元年度 全国高校総体 埼玉県予選R16 浦和南 vs 西武台
インターハイ予選3回戦。新人、関東4強の西武台高校は浦和南高校と激突。1ー2で迎えた終盤に同点とするとPK戦の末に勝利し、準々決勝に進んだ。次戦は正智深谷高校と対戦する。
大雨でボールはまったく走らない状況。浦和南はFW佐藤智隆のロングスローやセットプレーから力強い攻め。西武台は右サイドから攻撃を試みるが決定機は作れないまま前半を終えた。
そういった中で先にゲームを動かしたのは浦和南だった。後半9分、DF中田幸乃の右コーナーキックから混戦をMF近藤佳輔がダイビングヘッドでゴールに突き刺して均衡を破った。
追いかける展開となった西武台は後半15分に怪我明けのMF池田上総介を投入。勝負に出る。
すると後半19分、右サイドハーフの村田智哉のアーリークロスにファーサイドで合わせたのはFW寺川洋人。前戦2ゴール、5戦連続ゴール中だったFW西岡健二が怪我で離脱する中、代わってスタメン出場した背番号11が息もぴったりな2年生ホットラインから結果を残した。
しかし浦和南もすぐさま反撃。失点からわずか3分後の後半22分、セットプレーから今度はセンターバックの大石季侑が高い打点のヘッドを逆ネットに運んで、再度勝ち越しに成功する。
猛攻をかける西武台と凌ぐ浦和南。刻一刻と進む中で時計はアディショナルタイムを迎えたが、西武台は後半40分にゴール前でフリーキックを獲得すると、FW谷直哉のシュートは壁に弾かれたものの、こぼれ球に池田が左足を振り抜いて、土壇場で再度試合を振り出しに戻した。
両軍譲らぬゲームは延長戦でも決着がつかずPK戦に突入。西武台は延長後半にPKキーパーとして投入された高橋クリスが相手の2本目を完全に読み切ってストップすると、キッカー陣は5人全員がしっかりと決めて勝負あり。雨中の激戦を制し、西武台がベスト8に進出した。
「高校3年間の中でのインターハイ、選手権というのは強さが一番表現される舞台。トーナメントが決まった時、内容云々より人間的に強くなるような試合をさせてあげたいという想いがあった」と守屋保監督。今大会では「戦う」という部分を追求。1ヶ月間準備を重ねてきた。
この試合も延長含め100分間自分たちのサッカーができたとは言い難い中で難しい時間でもしっかりと耐えて、プレー、精神面で最後までファイトする姿勢が見られたのは大きな収穫だ。
心優しき背番号1がPK阻止で勝利に貢献 高橋「どんどん止めまくってアピールしたい」
悔しい想いを隠そうとはしない。それでもしっかりと自分に与えられた役割を果たした。
延長後半、PK戦に向けて投入された高橋クリスは持ち味のシュートストップを遺憾なく発揮。1本目からいきなり手に当てると、2本目は相手エースストライカーが出てくる中で得意の右で仕留めて雄叫び。ちなみに5本すべてでキックの方向を当てるなど抜群の感覚を見せた。
昨年トップデビューを飾ったが、今年は新人戦は同級生の仲山晃平が、関東、そしてこのインターハイ予選では2年生の伊佐山縁心がゴールマウスを務めるなど、なかなか出番はなく。「正直めちゃめちゃ悔しいし、PKキーパーっていうのも悔しい」という気持ちももちろんある中で、誰よりもやってやると目をぎらつかせてこの1本に臨み、チームに勝利をもたらした。
練習終わりにはPK練習があるが、高橋は大人気だという。「みんながクリスもう1本、もう1本って。嫌だと言わずに全員の相手になってくれる。本当に優しい子」と守屋監督がいうように基本申し出は断らずに受ける。それが自分のレベルアップにも繋がっていると高橋はいう。
もちろん正守護神を諦めたわけではない。「正智戦でもPKになったら思いきって飛んで、またチームを勝たせたい。どんどんアピールして、止めまくって、試合に出られるように、スタメンを取れるように1日1日を頑張っていきたいです」と、ポジション奪取に意欲を燃やした。
石黒登(取材・文)
試合結果
西武台 2(5PK4)2 浦和南
0(前半)0
2(後半)2
0(延長前半)0
0(延長後半)0
5(PK)4