高校総体埼玉県 西部支部予選1回戦 城北埼玉 vs 狭山ヶ丘
高校総体西部支部予選1回戦。狭山ヶ丘高校は城北埼玉高校を2ー0で下した。狭山ヶ丘は続く2回戦も鶴ヶ島清風高校に3ー0で勝利。5日の代表決定戦では細田学園高校と対戦する。
立ち上がりからゲームを支配した狭山ヶ丘は前半6分、MF高木慎太郎が右サイドで仕掛けてクロスをMF三原弘誠が左足ダイレクトで決めて先制。その後もボールを保持して左右に展開しながら試合を有利に進めると、21分にDF岡部佑哉のパスから裏に抜け出した左サイドハーフの吉野斐斗が出てくるキーパーを見て、冷静に逆のサイドネットに突き刺して追加点とする。
一方、城北埼玉はFW杉本太一、MF小俣慎一朗が前からプレスをかけてボールを奪い、ショートカウンターに繋げたい意図は見られたが、前半はなかなか決定機を迎えることはできず。後半7分に左サイドバックの江見健吾が持ち上がって狙ったが、シュートはゴール右に外れた。
後半は城北埼玉GK古屋将紘のビッグセーブもあり結局スコアは動かなかったが、最後までボールをしっかりとポゼッションをしながら攻め続けた狭山ヶ丘が2ー0で危なげなく勝利した。
前任の西澤正仁監督が総監督に、今年4月にGKコーチから監督となった荒井佑久也監督は「選手はピッチコンディションに関係なく、自分たちのやりたことを表現できていた。ちょっとスコアが足りなかったですけど、いまはプロセスを大切にしていて、そのプロセスを自信を持ってやれていたので、成長した姿が見られたと思って楽しかったです」と笑顔で振り返った。
変わりゆく狭山ヶ丘の中心 10番高木が80分を通して重要な役割を完遂
昨年まで「堅守速攻」を掲げてきた狭山ヶ丘だが、選手権からは「自分たち主導でアクションを起こしていく」サッカーにシフトチェンジ。今年はこのスタイルで練習に取り組んでいる。
発展途上だった新人戦は支部でふじみ野高校に敗れ、県大会、関東大会予選を逃したが、「目の前の大会にとらわれることなく、自分たちがどうなりたいか、どうありたいかに向けてアクションしながらやれた」と荒井監督。熟成期間を経て、選手たちもスタッフ陣も意欲満点だ。
その変わりゆく狭山ヶ丘の中心にいるのが10番でキャプテンの高木慎太郎だ。この日は数多くボールに関わりながら、味方が苦しい場面では必ずといって良いほど姿を現してサポート。
「自分はボランチなのでまず絶対にボールを奪われないことを意識して、もしチームがダメな時でも自分のところで落ち着きどころを作るのが自分の目指したいことなのでそれができて良かった」と高木。ポゼッションを志向するチームで重要な役割を80分を通して完遂した。
指揮官は「今度はゴールに向かう姿勢が出たり、点を決める選手になったら一皮剥けて、本当にひとつ上の世界にいけるんじゃないかと思います」とNo.10のさらなる覚醒に期待した。
高卒プロ入りを掲げるGK坂本 CKの攻撃参加は夢の実現に向けたチャレンジのひとつ
またこの試合で異彩を放ったのが敵陣コーナーキックのたびにフィールド然とゴール前に入っていったGK坂本涼太。得点こそならなかったが、高さを生かしたヘディングで会場を沸かせた。
坂本は高卒プロ入りを掲げるゴールキーパーだ。「高校に入る時にはもう高卒プロを目指したいと思っていて。そのためにいま詰められるところはどんどん固めて、卒業した後にすぐに声がかかって行けるようにしていきたいなと思っています」。前述のコーナーキックでの攻撃参加も夢の実現に向けたチャレンジのひとつ。明確な目標があるからこそ、そこに迷いはない。
理想は「無失点に終われて、点も決められて、チームから信頼されるゴールキーパー」だ。
坂本についてGKコーチ出身の荒井監督は「みなさん結構リスクがあるんじゃないかと。それすらも乗り越えるメンタリティがないとプロにはなれない。それを彼には植え付けたいなとチャレンジしています。高校サッカーだけの器に収まってほしくないというのが想いとしてあるので、その器を超えて世界に向けてアクションしてほしい」とそのチャレンジを後押しする。
まだ2年生だが、高卒プロを目指すプレーヤーはすべからく下級生の時から活躍している。「今年1年はやっぱりチームとして全国大会に出るというのを目標にしているので、そこに1本の柱となっていけるように、自分が頑張ってチームを支えていきたいと思います」と坂本。
チームには新人戦の守護神で仲間からの信頼厚い3年生の五本木康太、ガーナ人とのハーフで1年生ながらすでに大学からも注目を集める若林学歩と好キーパーが揃うが、そこの競争を勝ち抜き、チームの精神的支柱として初の全国大会に導いて、自らの夢=高卒プロを掴み取る。
石黒登(取材・文)