[高円宮杯U-15]浦和JYが11年ぶりVに王手!ともに新たな環境へ旅立つ指揮官とともに最高のフィナーレを目指す
25日、高円宮杯 JFA 第36回全日本U-15サッカー選手権大会の準決勝が行われ、浦和レッズジュニアユースが1-1からのPK戦の末にサガン鳥栖U-15を下し、11年ぶりとなるファイナル進出を決めた。同日には女子も4年ぶりの決勝進出を決め、アベック優勝に王手をかけた。
「攻守ともに前半から良かった印象」と金生谷仁監督が話したように浦和JYは守備ではしっかり全員で取りどころを共有。攻撃面では「相手が少しコンパクトな守備をしてくるチームだったので、コンパクトになったときの逆サイドっていうのを意識してやっていました」というDF岩﨑篤斗(3年)主将、DF松坂碧生(3年)のCBコンビからの好フィードでチャンスを作った。
11分に岩﨑が持ち出し、斜めのパスからMF笠間遼世(3年)が決定機。25分には縦パスに抜け出されピンチも迎えたが、ここはGK河合颯佑(3年)が至近距離の1対1を冷静にシュートストップしてみせた。33分にはMF西川碧斗(3年)の右CKからファーサイドで186cmの長身左SB瀬戸駿(3年)が豪快にヘディングで迫り、35分にはスローインからMF和田武士(3年)やFW井原桜太(3年)が連続してゴール前に詰めたが、ゴールを割るには至らなかった。
後半8分には井原が抜け出し、切り返しでディフェンスを外して決定的な場面を迎えたが、左足のシュートは相手GKの好守に遭い、西川の追撃も惜しくも枠を捉えきることができなかった。
浦和JYは疲れの見えた笠間、西川を交代し、FW三角隼人(3年)、MF萩原悠雅(3年)を投入し、CFでスタメンした井原を右サイドへ。「(井原は)カットインとかドリブルが好きなので、それでまたあいつの良さが出てくれたらいいなっていう、そういう意識で右に代えました」(監督)。するとこれが奏功して先制点に繋がった。28分、井原のクロスに2列目からエリアに入り込んだMF横山慧(3年)が反応。バックヘッド気味にすらして、ついに試合の均衡を破った。
34分には井原がドリブルで切り込み、惜しいシュート。35分、左クロスからニアで触られ同点ゴールを許し、勝負の行方はPK戦にもつれ込んだが、チームに焦りや動揺の色はなかった。
「初戦でPKになったときに、そこで勝てたっていう、その経験がやっぱり大きくて。PKになっても「別に大丈夫でしょ」みたいな。その雰囲気がすごい子供たちから感じるし、僕自身も別に本当に不安がなく、本当に心から信じて、子供たちと一緒にいるので。そこはPKになっても、失点しようとも、慌てることはなかったし、選手も同じ想いだったんじゃないですか」(監督)
PK戦では河合が躍動。「もう本当に緊張がひとつもなくて、勝てる自信しかなかった。(PK戦の前には)『ヒーローになれ』と言われていた」。名古屋U-15戦でも2本のPKストップをしていた守護神は2-1で迎えた後攻の相手の2本目を左に飛んで阻止。その後、3、4本目を失敗して思わぬ激戦となったが、河合が4本目を今度は右に飛んで止めて、またしてもチームを救う。最後は5人目のキッカーとなった和田がしっかりとゴールに蹴り込んで歓喜の瞬間を迎えた。
浦和JYはDF橋岡大樹、MF伊藤敦樹らを擁して日本一に駆け上がった2013年以来、11年ぶりのファイナル進出。金生谷コーチは「そのとき(2013年)もコーチでいたので、やっぱりどういう大会かっていうのは、僕自身感じたものっていうのはあったので、それをずっと伝え続けて、それがここまで来られたっていうのはひとつ嬉しいなっていう想いはあります」と話す。
「ずっと言っているのは、もう本当にこの大会は、仲間と過ごす時間をかけた戦いだっていうことと、あとは感謝っていうのを表現する大会だっていうのをずっと言わせていただいて、それをみんなが感じてくれているんじゃないかなっていうのは思います」。主将の岩﨑からも「もうあと一個っていうところなので、しっかり自分たちが楽しんでプレーすることと、最後チームにしっかり感謝を届けられるようにしたいです」という言葉が聞かれたのは偶然ではないはずだ。
今年の代をジュニア、ジュニアユース年代と見守って来た金生谷監督も来季、FC琉球のトップチームコーチになることが内定済み。3年生たちとともに決勝を最後に新しい環境へと旅立つ。
「特別なことはないかなって。あの子たちと一緒に臨む試合をとにかく楽しむだけ。それが一番ですかね。いろいろなものが、こみ上げるものはあると思いますけど、でもやっぱりこのメンバーで、保護者もクラブスタッフもコーチもみんなでやる最後の試合なので、それをとにかくとことん楽しもうっていう、もうそれしかないですね」。河合は「小6のときも全国埼玉県予選決勝で負けちゃって、やっぱり勝たせてあげられなかったので、感謝とかも返せなかったから、ここで、もう舞台は揃ったので、あとは勝たせて、背中を叩いて送り出せるようにしたいです」とし、岩﨑は「しっかり監督に最後、“浦和の漢”になってもらえるように、頑張りたいと思います」と意気込みを語った。お世話になってきた指揮官とともに、勝って、笑顔で、新たな環境へ向かう。
石黒登(取材・文)
試合結果
サガン鳥栖U-15 1(1PK3)1 浦和レッズジュニアユース
0(前半)0
1(後半)1
1(PK)3