高円宮杯U-18サッカーリーグ2017 埼玉県リーグS2リーグ優勝決定戦 大宮南 vs 浦和学院

2017年S2リーグ順位決定戦。昌平高校グラウンドではS2Aリーグ1位の浦和学院高校とS2Bリーグを制した大宮南高校の優勝決定戦が行われた。試合は前半早々に先制した大宮南が後半にさらに3点を重ねて4ー0で勝利。1年ぶりのS1復帰をS2リーグ制覇という形で決めた。


すでに昇格を決めている両校の一戦は、ベンチも含めて全員が3年生という陣容で開幕した。

そんな中で先制したのは大宮南。前半3分にコーナーキックを獲得すると「キッカーの(MF中村)二葉が良いボールを蹴るのはわかっていた。安心して入り込めばボールがくると思った」とDF山野井歩夢。キックがファーまで流れてきたところを押し込んで試合を動かす。

最高のスタートを切った大宮南だったが、中盤以降はなかなかセカンドボールを拾えずに我慢の時間が続いた。それでも「ボールを握られて少しきつかったが、そこでしっかりと踏ん張ることができた」(山野井)。相手の時間帯を「0」に抑えて1ー0で試合を折り返した。

すると後半は大宮南が試合を掌握した。12分には右サイドハーフの益子雄冴がボールを持つと「10番(FW川口朔弥)が斜めに走ってくれたので守備が釣られてフリーになれた」とFW佐藤玲於。時には中盤のつなぎ役として、時にはFWとしての役割を担う1.5列目のフリーマンは空いたスペースにボールを呼び込むと、最後はキーパーとの1対1を冷静に沈めて追加点。

そのわずか3分後には3点目が決まった。MF西遼馬のアシストから川口のファーストトラップは「少し浮いてしまった」というが、「前を見たらコースが見えたので、そのままボールだけを見て蹴った」という背番号10は前を向くや否や右足を振り抜いてゴールに突き刺した。

さらに後半31分には駄目押しの4点目。フリーキックに「蹴る前にキッカーの(西)遼馬と目が合っていたのでくるのは分かっていた」という川口が相手DFを一気に交わして右サイドを突破。そのまま深くまでえぐるとグラウンダーのクロスに「全部感覚。全然ゴールは見ていなかった」というMF佐藤晃太郎が鋭い反転から利き足の左足で豪快にネットを揺らした。

佐藤晃にとってはこの試合が初のリーグ戦出場。高校2年次は春先に負った怪我でほとんど1年を棒に振った。昨年末に復帰は果たしたが、そこからもリハビリや調整で費やし、Aチームに上がったのは夏の合宿が終わった8月。選手権予選はベンチ外から見守った。それだけに「絶対に点を取ってやる」「結果を残して少しでも監督に使えば良かったなと思わせてやる」と強い気持ちで挑んだ自身高校最後の公式戦で決めた1ゴール。「いままでで一番気持ちよかった」という得点後には駆け寄ってきたフィールドプレーヤー全員から祝福を浴びた。

終盤浦和学院はエースのFW田中和樹を投入して攻勢に出るも、大宮南も最後まで集中したディフェンスを見せてしっかりと零封。4ー0で勝利して今季リーグ戦を優勝で締めくくった。

「年間を通じてのタイトルなので、選手たちが本当に1年間よく頑張ってくれた。また1年でS1に昇格することができて、選手たちの頑張りを讃えたい」と大宮南・田中龍太郎監督。

S1を戦った昨シーズンは1勝1分16敗の勝ち点4と悔しい想いを味わった。1年での1部復帰を目標にスタートした今季は「守備」をメインテーマに掲げた。そんな中でチームはリーグ2位の失点22と奮闘、1点差の際どいゲームを勝ち抜きながら勝負強さをつけていった。

前期0ー3で敗れ「苦手意識があった」という第11節の聖望学園高校戦では「みんなで守備をしてカウンター」(川口)から4ー3で見事にリベンジ。そして勝てばS2B優勝のレギュラーシーズン最終節・市立浦和高校戦でも3ー1と勝ち切って1年でのS1返り咲きを果たした。

「本当に真面目で性格の良い子たち。うまさはないが、3年間で本当に成長したチーム」と田中監督。チームは比喩的な表現でなく、様々な場面でぶつかり合いながらも、お互いに個人としても集団としても成長を重ねていった。個性派ぞろいのチームをまとめ上げたDF山本航主将は「ひとりひとり個性が強いが、それがひとつにまとまってコパ武南やS2のタイトルを取ることができた。本当に大変でしたけど、最後までやり切って終われた」と1年を振り返った。

石黒登(取材・文)

試合結果

大宮南 4-0 浦和学院

1(前半)0
3(後半)0