[S1]聖望学園が初のS1制覇!攻撃サッカーに加わった守備の強度とフィジカル、より「リアリティ」持たせ念願の公式戦初タイトル
高円宮杯U-18サッカーリーグ2024埼玉1部リーグ(S1リーグ)は8日に最終節となる第18節を行った。前節初優勝を決めている聖望学園は浦和南に6-0と快勝し、リーグ戦を締めた。
聖望学園は前戦の立教新座戦を2-0で勝利。2位・昌平Ⅱ、3位・正智深谷が揃って負けたため前節で初優勝を決めていたが、最後もチャンピオンチームらしい強さを見せて快勝で締めた。
聖望学園はGK望月健冴(3年)が選手権後のリーグ戦から復帰。右WGには下條優歩(3年)が入った。一方、浦和南はオール2年生でスタート。MF森田開成がキャプテンマークを巻いた。
立ち上がりから押し込んで進めるとスコアが動いたのは前半16分だ。攻守の核であるMF小山晃也(3年)を起点にMF遠藤浬(3年)、右SBペイトン有玖主(3年)と繋ぎ、エリアに潜り込んだ遠藤のクロスからハンドを誘う。これを小山が右足できっちりと蹴り込んで先制した。
32分にはディフェンスの処理ミスをさらった遠藤がキーパーとの1対1を沈めて2点目。38分、41分には選手権でも存在感を見せていた184cmの大型FW太仲貴哉(3年)のポストプレーから2年生10番の田中翼が連続得点を奪った。「(2本目は)貴哉に入った時に自分が裏に抜けるっていう形は練習していて、その形が出た」(田中)。2本とも最後は得意の左足で仕留めた。
後半に入っても勢いは止まらず。3分にはHT明けからピッチに入ったFW海沼隆一郎(3年)がPKを獲得。これを小山がど真ん中に蹴り込んでリードをさらに広げる。さらに30分には遠藤の右CKから小山が今季チームトップの15得点目を流し込んでハットトリックを達成した。
浦和南はDF稲垣嶺(2年)が距離のあるロングスローを度々放り込んで迫ろうと試みるが、試合を通じてなかなかシュートシーンを作れず。終盤はMF日高大佑やDF小林大悟といった今季の主力だった3年生たちを投入したが、一度傾いたゲームの流れを取り戻すことはできなかった。試合を通じて流れを握った聖望学園が6-0と完勝でリーグ最終節を有終の美で飾った。
攻撃サッカーに加わった守備の強度とフィジカル、「リアリティ」持たせ初タイトル
聖望学園はリーグ戦も含め、県内公式戦で悲願の初優勝。山本昌輝監督は「新人も関東も選手権も惜しいところまでは行っていたんですけど、あと1個勝ちきれないっていうのがしばらく続いていた。正直リーグ戦での優勝が一番難しいかなっていうのは思っていたんですけど、それが最初に取れたっていうのは、もう本当に今シーズンの選手の頑張りだと思います」と振り返る。
昨年は選手権予選準決勝で浦和南に1-5で敗れ、「フィジカル的な要素」「守備の強度」で課題を実感。新チームはフィジカルトレーニングに取り組み、約3か月をかけて肉体改造も行った。
また、サッカー的な変化、進化も。オランダサッカーに原点を持つ山本監督のもと、1点取られても、1点多く取り返す攻撃的なサッカーを標榜していた中で昨年の選手権での負けから守備の部分も整理。「方向性は変えていないんですけど、より『リアリティ』を持ってトレーニングに励めるようになったかなと思います」。選手権準々決勝の昌平戦で見せたような打って出る良さは変えず、その中でも守備を強化し「本当に勝負強いチームになったかなと思います」と話す。
開幕節こそ5-4の打ち合いとなったが、その後はクリーンシートや取られても最少失点で抑えるなど、粘り強く戦えるチームに。その中で指揮官も「可能性があるんじゃないか」と感じたという前期の正智深谷戦、昌平Ⅱ戦を皮切りに9連勝を記録した。選手権はインターハイ日本一の昌平を下し大きな驚きを届けたが、準決勝で正智深谷に敗れ4強敗退。選手たちもショックが大きく、「落ちた」部分はあったが、「チームみんなでもう本当に「取りにいく」ってミーティングをしてそこは統一していた」(小山)。しっかりと切り替え、2連勝で初のタイトルを飾った。
今年の代は山本監督が聖望学園に赴任した2006年に生を受けた選手たちだ。「なんかちょっとそういう運命的な巡り合わせを感じて。ちょうど僕が赴任したときに生まれた子たちが優勝を持ってきてくれたのも嬉しい」。また、指揮官はS1の環境を残してくれた昨年の3年生たちにも感謝する。高校卒業後、アメリカにわたり、現在はメジャーリーグサッカーでプレーするFW塚田悠太郎らがいた2019年も力を持った代だったが、その前年にチームはS2に降格。「本当にそういうタイミングが合わないと、S1の優勝っていうのはできないので」と言って目を細めた。
14日からはプリンス関東2部参入戦に臨む。小山は「ここで満足してもダメで、自分たちは最初からプリンス参入を狙っているので、2個しっかりと勝って、来年のみんなが良い環境でできるようにしたい」とし、太仲は「選手権では自分のゴールで勝てなかったので、絶対に自分のゴールで勝って、後輩たちにプリンスっていうものを残したいです」と語った。中高一貫の聖望学園中も本格強化第一世代が昨年新人戦を制し、今年も続く世代が連覇を達成。高校年代もプリンス参入となればより良いサイクルに入る可能性もあるだけに、勝って上げて後輩たちに繋げる。
石黒登(取材・文)
試合結果
聖望学園 6-0 浦和南
4(前半)0
2(後半)0