名門・武南が10年ぶりの夏の全国に王手!さまざまな人の思いを背負い、いざ決勝へ

名門・武南が10年ぶりの夏の全国に王手。令和5年度全国高校総体・県予選準決勝が14日にNACK5スタジアム大宮で行われ、今季2冠の武南が3-0で正智深谷を下し、決勝に進出した。

武南は前半20分、敵陣右中間でFKを獲得すると、MF髙橋秀太(3年)の左足のキックは「ちょっと長くなった」というものの、「うまく気持ちも乗ってゴールに入ってくれたのかなと思います」。狙いとは少し違ったが、相手GKの伸ばした手を越えてゴールに吸い込まれ、先制した。

しかし、前半は先制点を挙げたものの、「勝ちたいという雰囲気が、やっぱり後ろが重くなってしまった。だからアップダウンの「アップ」っていうところはなかなか今日はコントロールできなかったですよね」と内野慎一郎監督も言うようにペースを握るというところまではいかない。

今季S1リーグ首位を走る正智深谷は、4-1-「4」-1の真ん中2枚、MF大石桔平(3年)とMF大島あらた(3年)がライン間に入りつつ、相手のプレスバックをうまく掻い潜ってアタックを牽引。左サイドのMF白岩龍(2年)が鋭いドリブル突破からチャンスを作っていた。

後半も中盤までは同点弾を狙う正智深谷が攻め込み、引水前には大島のシュートが枠を捉えたが、ここは前半も好セーブを見せていた守護神の前島拓実(3年)がはじき出し、難を逃れた。

ディフェンスラインの奮闘もあり、相手のアタックを0で凌いだ武南は27分、MF松原史季(3年)を起点に、髙橋秀が繋ぎ、右SBの齋藤瑛斗(3年)がクロス。前半も先制点に繋がったFKを獲得するなど、前線でボールを収めていたFW戸上和貴(3年)は「結構、難しい態勢だったんですけど、絶対に決めてやるという気持ちで良いコースに決められた」とファーサイドで少しバックステップを踏みながら、ヘディングで突き刺して欲しかった追加点をチームにもたらす。

「点を取れたことがすべて」(内野監督)というように、チームの絡まっていた緊張の糸をほぐし、勇気を与えた追加点で一気にペースを手繰り寄せる。終盤は髙橋秀と宮里丞(3年)のダブルボランチが相手の中盤のキーマン2人を捉えながらコントロール。宮里は「前に空いたスペースをうまく前に上がって埋めつつ、バックラインもうまく押し上げて、なるべくコンパクトに攻守にトランジションしていけたらというのを意識していた。後半は前半よりはできた」と話す。

先制点の5分後にはエース松原の攻撃的な姿勢が3点目を生んだ。左サイドに流れた宮里のパスにエリア内にインナーラップしクロスを送ると、途中出場のFW文元一稀(3年)がニアサイドで点で合わせた。関東本大会では2ゴール、1アシストを決め、優秀選手にも輝いたが、「自分の点よりもチームの勝利」と悔しがった10番。指揮官も「そういうところにやっぱり顔を出すというか、ちゃんと結果を出す。前半はちょっと仕事ができなかったので、やっぱりあいつなりに意識を持って、3点目はやっぱりあそこで、決定的なシーンを作ってくれた」と評価した。

前半はバタついた場面もあったが、終わってみれば3-0の完勝で新人戦、関東大会予選に続く、県内3冠に王手をかけた。18日の決勝では10年ぶりの夏の全国をかけて浦和南と対戦する。

自身もOBの内野監督は「本当にあの経験というか、今日のNACK5での試合もそうなんですけど、こういう経験は絶対にさせてあげたいと思うので、インターハイは本当に連れて行ってあげたい」と語る。「良い経験というか、思い出作りじゃ決してなくて、それを選手権のためにどうやって今度は繋げていくかという経験はさせてあげたい。それと夏の強化。これは絶対だと思う。真剣勝負はちょっとしたいと思うので、この3日間真剣に考えたいと思います」と大一番を見据えた。

下部組織の武南Jr出身で、武南“6年目”の髙橋秀は「(武南Jrで)大山(照人)先生にずっと教わってきて、武南の偉大さだったり、いろいろな人の支えというのを中学時代から感じている。そういうところで大山先生を始め、いろいろな人に結果で恩返ししたい」と意気込みを語った。

古豪復活へ。さまざまな人の期待を背負いながら、10年ぶりの全国を決め、その狼煙を上げる。

石黒登(取材・文)

試合結果

武南 3-0 正智深谷
1(前半)0
2(後半)0