WEリーグ選手によるデモンストレーションも。SAITAMA GIRLS MATCH2022

今年で第10回を迎えた「SAITAMA GIRLS MATCH 2022」が5月3日から5日にかけて行われた。

同大会は中学校年代でなかなかプレーする場所がない女子サッカープレーヤーに試合経験の場を創出するべく2013年度にスタートし、今年で10回目(2020年の第8回大会はコロナ禍により中止に)。第4回大会からクラブチームも加わるようになり、変遷を経て現在の形になった。

また、強豪クラブチームが多く参加するようになったことに伴い、前回大会から「トップリーグ」と「チャレンジリーグ」の2リーグ制を新たに導入。『強化』と『普及』の2軸を掲げて行われているのが特徴。「チャレンジリーグ」はトップレベルのバチバチした戦いとは違い、女子サッカー選手の裾野を広げるのがメインの目的となっている。

「すべての女子中学生が気軽にサッカーを楽しむことが出来る場を増やしていくこと」を目的に開催している「スマイルプロジェクト」の選手たちや、「⼩学⽣年代の⼥⼦を対象とし、育成・強化をはじめとして⼥⼦サッカーの普及・拡大」を目的とする「さいたまシティサッカー・夢プロジェクト」の選手たちも参加。真剣に取り組みながらも、普段経験できない試合の場を楽しんでいた印象だ。

今年はチャレンジリーグの4チームを含めた県内外の19チームがエントリー。決勝が行われた浦和駒場スタジアムに加え、レッズハートフルフィールド駒場、与野八王子公園サッカー場、堀崎公園グラウンドと、さいたま市の誇る4つの会場で3日間にわたり熱戦が繰り広げられた。

さらに今年はWEリーグ選手によるデモンストレーションも3日、4日の2日間、各グラウンドで実施された。大宮アルディージャVENTUSからは澁澤光選手、林みのり選手、源間葉月選手、村上真帆選手、杉澤海星選手、吉谷茜音選手、三菱重工浦和レッズレディースからは河合野乃子選手、石川璃音選手、丹野凜々香選手、西尾葉音選手が参加。至近距離でのプロ選手による実演では、プロ選手の迫力あるプレーや技術の高さに、選手達も目を丸くさせて驚く姿や、驚きの声などが上がっていた。また質問コーナーではプロになるキッカケや、技術面での質問が飛び、プロの選手達に直接話が聞ける貴重な場となっていて、盛り上がっていた。今回から始まったこの企画はホームタウンで活動するWEリーガー達を肌で感じることができる良い試みとなった。

決勝は予選グループで2位だったものの、ワイルドカードで1位トーナメントに進出し、準決勝では予選で敗れた府ロクレディースにリベンジした大宮アルディージャVENTUS U-15と、浦和レッズレディースジュニアユースに準決勝でPK勝ちを収めたクラブ与野レディースの一戦となった。

立ち上がりから大宮がボールを持って進める中でクラブ与野が準決勝同様、粘り強い守りを見せていたが、前半終了間際に大宮はCKのこぼれ球にMF長谷川和花(3年)が右足を鋭く振り抜き、ゴールに突き刺して先制。さらに後半1分にはトップ下の茂木未宙(3年)がドリブルで持ち出し、FW飯田かれん(3年)が決めて追加点とし、2-0で勝利して大会初優勝を飾った。

今年4月に就任した小林凜監督は「自分がしたことは本当に少し。本当に一生懸命選手たちが頑張ってくれたので、最後は選手たちの力だと思います」と労う。準決勝では初戦で敗れた府ロク、決勝は県リーグ開幕戦で敗れたクラブ与野と因縁の相手にリベンジ。負けからも学びながら、「勝負を勝ちに持っていくというところでちょっとした声かけであったり、ちょっとしたポジショニングだったりというところで、だんだんと気づいて発信出来るようになってきた選手が増えてきたというところが一番この大会を通して良くなっていたところかなと思っていて、そこが一番の収穫だなと思っています」と語り、短い期間の間でも成長した選手たちに目を細めた。

各会場で行われた順位トーナメントの決勝戦には、三菱重工浦和レッズレディースから柴山史菜選手、髙橋美紀選手、栗島朱里選手、大宮アルディージャVENTUSからスタンボー華選手、上辻佑実選手、鳥海由佳選手が駆け付け、試合を観戦したほか、表彰式のプレゼンターも務めた。また、なでしこジャパン(日本女子代表)にも名を連ねるDF高橋はな選手(三菱重工浦和レッズレディース)がサプライズゲストとして登場し、会場を盛り上げた。

参加チームの声

三菱重工浦和レッズレディースジュニアユース 百武江梨 監督

「昨年度初めて参加させて頂いて、今年もコロナ禍でまだまだ大変な中、これだけチームを集めて安全に選手がプレーできる環境と、素晴らしいスタジアムでやらせてもらえる環境を作っていただいていることに心から感謝しています。結果についてはもちろん優勝を目指して頑張っていたので、そこは叶わなかったですけど、まだまだこれからリーグ戦が続くのでそちらの方に切り替えて、これをいかに力にするかだと思っていますので、そういう意味で頑張っていきたいと思います。この大会では、普段の公式戦ではなかなか対戦できないチームとも対戦できましたし、そういう意味では色々と自分たちの経験の無さとかも分かりましたので、良かったと思います」。

大宮アルディージャVENTUS U-15 小林凜監督

「やっぱりさいたま市ということもあって、本当にサッカーに一生懸命な女の子たちがたくさんいて、暑い中だったんですけど、本当にみんなひたむきに一生懸命にやっている子たちが多かったので、すごく良い大会だなというふうに思いました。

(今年の代は)特徴を持った選手がすごく多くて、本当にそこの力を発揮するというところが一番で、それがいろいろな周りの環境だったりとか、こういう舞台であったりと関わらずどこでも発揮出来るような選手になって欲しいなというのは一番思っていること。そういうメンタル面も含めて今大会は少しずつ変わっていったところかなというふうには思います。選手が試合の慣れも含めて、考えて、発信してというところがすごく成長出来たところなので、そこをまたリーグ戦の方にも生かして結果に繋げていきたいなと思います」。

府ロクレディース 高山有史監督

「まずやっぱり良いグラウンドで出来たこと、特に(3位決定戦は)駒場の競技場ということで最後天然芝の良いピッチで出来たというのは選手たちにとってもすごく良い経験だなというふうに感じています。(3日間を通して)けが人も多く、今日の1試合目(準決勝)がかなり大差でやられたので、メンタル面がかなりきつかったと思うんですけども、どうにか子供たちがメンタルを戻してくれて、最後レッズという強敵に対してどう挑むかというところでは最後までよく諦めずに戦ってくれたかなというふうに感じています。

一昨年は関東大会に出たり、去年はクラブ選手権で東京で1位になって、特にWEリーグの下部のチームとか、そういったところとどのくらいの実力差があるのかは実際にやってみて、身体を当ててみて、試してみたかったというのはすごくありました。今日の(準決勝の)試合も大量失点はしましたけど、後半は1-1で終わっているし、前半の修正が出来れば最終的には勝ちを求めることも出来ただろうというような話で、じゃあ最初の入り方だとか、そういったところを我慢強く諦めずにやるようには今回は特に話をしていました。

(この経験を今後に生かして)公式戦の緊張する中でも自分のプレーを出してもらうための経験のひとつにはしてほしい。特にいまは成功の実績を作っていく。そういうことがあると次にチャレンジ出来る選手になるし、それで一皮剥けて次のまた自分の良いプレーを出せるような選手になればチーム力も上がってくるので、そういったところでは自信を持ってやってもらいたいなと常に思っています」。

FCフェミニーノ川越 木住野勇史コーチ

「今年1年生も10人ほど入ってきた中で、リーグ戦は公式戦なので勝ちにこだわるところではどうしてもメンバーが固定されたり、ベンチ登録人数も決まっていて、なかなかベンチに入れない子もいますので、今回リーグ戦の途中でこういう良い大会に呼んでもらえたので、当然結果もこだわらなければいけないんですけど、結果以上に全員が試合にしっかり参加して、こんな良いグラウンドですし、その中で全員がレベルアップ出来るようにというところを目的でやっています。その中で点数だけ見れば厳しいところもありましたけど、それ以上に子供たちひとりひとりが一生懸命戦って、持てる力を出してくれているので、そういう面では満足しています。

当然1年生というのは小学生から中学生になり、グラウンドの大きさからゴール、ボールともう全然違う環境の中でやっていますので、約1ヶ月トレーニングをした中でほとんど試合が始めてという子もいます。そういう中でまずサッカーを楽しんでもらいながら、自分に何が足りないのか、やっぱり周りにこれだけうまい子がいるんだというところでも良い影響になって、良い目標になる。それはチーム全体としてですけど、本当に良いタイミングで大会をやらせてもらって、良い経験が出来ているので、本当に感謝しています。

今日(初日)も1試合目のVENTUSさんみたいな選手を見れば、やっぱりああいうのを目標にしてほしいし、中にはそこで通用したプレーもあるので、そういうところは自信に繋げて今後のさらなるトレーニングのひとりひとりの課題に繋げてくれれば、良いところは伸ばす、足りないところは補っていくというのが成長していく中では一番大事なところだと思いますので、そういうふうに繋げてくれれば価値ある大会だと思います」。

SHIBUYA ARTISTA FC 長田順平監督

「本当に一瞬たりとも気の抜けないゲームが必然的にあるというのは僕ら指導者としてはやりやすい。東京もリーグ戦が始まっていて、うちもいま1勝1敗で、またちょっとてこ入れをしていくという中で、強度の高い大会なのですごくありがたいです。次のリーグ戦に勝つために、もっと修正という感じでやらせていただいています」。

すみだ女子U-15 清水裕三 監督

「中学生年代でやっている子達の受けた皿として、墨田区のサッカー協会が主体となって作ったチームで8年目になります。東京都の女子連盟のリーグ戦に参加していますが、中学生だけではメンバーも増えない状況の中で小学生も何人かきてもらって活動をしています。今回のこういうレベルの高い機会を通じて、一人一人を伸ばしていければ良いかと思っています。また墨田区自体にサッカーができる環境が少ない。区のグラウンドもありますが、なかなか占有で使えないですので、このような人工芝のグラウンドでプレーさせて頂ける機会は、ありがたいです」。

PORTALA 水戸 LADIES 柴山真由美 コーチ

「前回初めて参加させて頂き、今回が2回目の参加になります。去年はコロナの影響もあって今の2年生と、今の3年生が怪我で来られなかったので、念願叶ってようやく来れた子たちが多かったので、昨年とちょっと違った意気込みで望めた大会になりました。なかなか県内では味わえないような強度の所からスタートができるので、特に1年生は女の子の中のトップを知らない子達がいるので、そこを見れて1年後悔しさをバネという、いいモチベーションになっています。

昨年の悔しい思いが、みんなの中にあるので、去年よりも成長した戦い方ができるようにというモチベーションで頑張れています。オフの過ごし方でも、例えば食事の部分の意識も勝手に変わっている感じがして、本当食べれない集団だったのが意欲的にお代わりをするのが当たり前みたいな空気だったり、ミーティングの質なども自分達の内から出ている部分が変わっている。ここが良い基準としてスタートを切れるので、参加しての変化は非常にて感じていて、有難い環境でやらせて頂いています。

茨城の方でもチーム数がどうしても少なくて、同じ顔ぶればっかりになってしまいあまり刺激がなくなってしまうので、均衡した試合もそうですし、逆にすごくレベルの高いチームとやるのは、選手達も我々指導者も新たな刺激が得ることができます。また、夏の合宿で試合を組んで頂いたり、県内のチームとやることしかなかった環境から大きく変わったのは、この大会で繋がりを持たせて頂いたおかげだったのでありがたいです」。

取材:埼玉サッカー通信(椛沢佑一、石黒登)
写真:イシクラ、埼玉サッカー通信