正智深谷が8年ぶり3度目V!大会を通じて安定感の光った守備、決勝は有力世代・武南を零封

自分たちの持ち味を発揮し、まずは1冠目―。4月30日、関東大会埼玉県予選の決勝が浦和駒場スタジアムで行われ、正智深谷と武南が対戦。延長までもつれ込む死闘となった中で正智深谷が延長後半のMF外立翼(3年)のゴールで勝利し、2014年以来3度目の大会優勝を果たした。

決勝でもやることは変わらない。しっかり守って、試合の中で必ず訪れるチャンスを決めきって勝ち切る。正智深谷・小島時和監督は「武南はうまいし、スカウティングした通り丁寧にやってくるチームでやられてもおかしくない場面はあったんですけど、相手のミスとか、うちのキーパーが崩されてもぎりぎりで止めたりとかでよく0で防いだという形だった。その中でしぶとく取ったといううちらしい勝ち方。選手たちはよく頑張ってくれたなと思っています」と労った。

正智深谷は前半から武南の10番MF松原史季(2年)にボールを入れさせないことを意識しながらハイラインを保ちつつ、相手のパスワークにはスライドしながら連動した守備で対応。最後の部分ではDF小屋結世(3年)、DF岩崎佑槻(3年)のCBコンビが抜群の安定感を見せる。

また、課題となっていた攻撃の部分でも「比較的よく判断出来ていた」と指揮官も言うように成長の証。奪ったボールをサイドにつけながら、主にDF宮崎健吾(3年)、MF八木咲成(3年)の右サイドから攻撃を仕掛ける。前半20分には八木の奪取からFW古橋颯(3年)を経由し、FW菅野智稀(2年)が抜け出し。引き付けてのマイナスのクロスにMF初雁龍(3年)のシュートは相手GKに阻止されたが、これまではあまり見られなかった狙いを持った崩しも見せた。

一方、武南はボールを持って進めながらも「前半は入りが悪くて、持たされてしまって、消極的なパス回しになっていた」とMF山田詩太(3年)が話したように、なかなかそれを前向きのエネルギーに変えていくことが出来ない。その中でも前半22分、サイドチェンジから左SB加藤天尋(3年)のクロスをMF山田藍大(3年)がヘディングで狙ったシュートがポストに。38分には山田詩が起点となり、山田藍のアーリークロスにMF櫻井敬太(3年)が内に絞りながら左足を振り抜いたシュートは惜しくも枠の上に外れたものの、チャンスは作りつつ前半を終えた。

後半は武南が攻勢を強め、何度もゴールに襲い掛かる。2分に右CKから再び山田藍がヘディングで迫り、11分にはFW杉沢旭浩(2年)のキープから山田詩が右に叩き、DF江川颯軌(3年)のクロスに松原が高い跳躍で合わせたヘッドがわずかにゴール上に。34分にもショートコーナーからのこぼれ球を途中出場のDF高橋秀太(2年)が狙うが、決めることが出来ない。

正智深谷は後半なかなか相手のゴールに迫ることは出来なかったが、幅広い範囲をカバーする小屋主将を中心に全員が集中力を切らさずに守備。25分には怪我明けの外立を投入するなど布石を打つ。両軍ともに譲らない試合はついに80分を超え、延長戦に突入することになった。

迎えた延長後半2分、武南はこの試合最大の決定機。コーナーキックのこぼれ球をMF正木里津(2年)が右足ミドルで狙う。シュートは枠を捉えていたが、ここは正智深谷の新守護神・望月奎杜(2年)が飛び上がりながらワンハンドで掻き出すファインセーブを見せてチームを救う。

武南は延長前半4分、守備を支えてきたDF鈴木翔汰(3年)主将がプレー続行不可となり、DF田村賢司(3年)がピッチへ。さらに延長後半に入り、松原に代えて1年生MF河西琥を投入する。正智深谷も187cmの長身FW伊比瞳弥(3年)と攻撃カードを切り、最後の10分に臨む。

正智深谷は延長後半2分、FW春山朔也(3年)のクロスにMF小川陽向(3年)がファーサイドに飛び込むもGKがキャッチ。武南も4分に山田詩が決定機を迎えるが、シュートはGKの正面をついてしまう。このままPK決着かと思われた中でスコアが動いたのは8分だった。正智深谷は敵陣左中間でFKを獲得。DF富岡佑太(3年)がゴール前の混戦に蹴り込む。これに伊比と岩崎が競ると、こぼれ球に外立が右足を振り抜いて100分に亘る戦いに終止符を打った。

今年も守備力が光るチームだが、「練習試合も含めて、いままでで一番出来がいいんじゃないのとミーティングでも話した。この関東予選をずっと見てきた中で、僕自身も前半後半は落ち着いて見ていられた」と小島監督。1年時から主力を務める小屋を中心に有力世代の武南に仕事をさせなかった。2年生GKの望月も「もう絶対に守備は0で行くというのを全員で話し合っている。そこは0で行ける自信があります」と胸を張る。また攻撃の糸口が見えてきたのも収穫だ。

今季1冠目を果たしたが、チームが目指すのはその先。小島監督が「目指すはやっぱり全国で勝って、埼玉を上位に持っていくこと。そういう期待に応えられるチーム力を作っていかないといけない。(関東大会で)また勉強してもらえれば」と言えば、望月も「全国も狙っているんですけど、自分たちは全国で勝つことを目標にしている。しっかりそこは有言実行したい」と語る。

昨年はインハイ予選で優勝したものの、全国大会では1回戦で神村学園に0-3で完敗。今年は全国で勝っていけるチームになるために。まずは本大会で高いレベルを経験し、成長に繋げる。

石黒登(取材・文)

試合結果

正智深谷 1-0 武南
0(前半)0
0(後半)0
0(延前)0
1(延後)0