名将2人が抱く第100回大会への想い。そしてまた未来に繋がっていく高校サッカーの歴史

今年の選手権予選も残すところあと1試合となった。決勝に進んだのは3年ぶりのVを目指す浦和南と11年ぶりの冬の全国を狙う西武台。ピッチ内の戦いも注目だが、第100回大会決勝で野崎正治監督、守屋保監督という、埼玉の高校サッカーを牽引してきた名将が相まみえるというのもどこか不思議な縁が感じられる。指揮官2人が「第100回」という数字に感じる想いとは。

選手権の歴史のほぼ半分に関わっている浦和南・野崎監督は「前に数えたら四十数回関わっている。だから良い想いもありますし、悔しい想いも多々ある。第100回大会ということで、人も、いろいろな想いも込めて、あの舞台にもう一回帰って、3年前のリベンジをしたい」と語る。

西武台・守屋監督が感じているのは「感謝」だ。「長年ずっとサッカーに携わらせてもらった。自分もここまでいろいろな方に協力していただいたり、いろいろな形でやらせてもらえた。やりたくてもいろいろな面で出来なくなってしまうところもあるのに、こうやって埼スタでやらせてもらえたり、また子供たちと一緒になってこういう経験が自分の人生の中で出来たというのは本当にありがたい。そういう道を作ってくれた人たちには本当に感謝したい」と振り返る。

また、「落ち込んでいても、励まして、練習試合をやろうと言ってくれるサッカー仲間がいる。全国が終わると、新しいチームで県外の先生方が「先生、落ち込んでいる暇があるなら試合をやりましょう」とか、いろいろなところで声をかけてくれる。流経だったり市船だったり、桐光だったり久我山だったり、みんながそうやって凌いで、励ましながら、サッカーをやってきたのかなと。それは羨ましいですよ、出た時はみんな。でも出ていない時に辛い想いをしながらも、またすぐに切り替えて、新チームに向けてやれるサッカー仲間がたくさんいてくれたというのは本当に感謝しかない。それがなかったら「よし、次頑張るぞ」とはならなかったかもしれない。周りが一生懸命頑張っている、自分も、それでは次、そういった時に声をかけて、良いチームとまた試合をさせてもらって、夢を見ていこうと。そんな100回なんだなというのは長くやって感じ始めた。30年以上やっていると本当にあっという間にそんなことが」と、目を細めながら話す。

その中で武南・大山照人元監督とのエピソードも。「僕も準決勝で0-4で負けて、その冬休み、新チームになった時に「なんでお前は俺に練習試合の声をかけてこないんだ」と。「武南を倒すまでは練習試合をやりたくないと思った」と言った時には怒られましたね(笑)」と明かす。

「本当にそういう方々がいて、自分も頑張れたのかなという気持ちにもなりますし、いろいろな面で埼玉の中ではいろいろな指導者が頑張っている。これから、またどんどんまた変わっていくんだなと思います。一緒に戦ってきた先生方も、自分の教え子もいろいろなところで指導者になっていますので、またそこから新しい時代も、もう始まっているんだなというのは感じます」。

さまざまな人の想いが繋いできた100回の歴史。決勝はどんなドラマが紡がれるのだろうか。

石黒登(取材・文)