【Jrユース指導者インタビューリレー】アレグレが持つ唯一無二の色とは/CAアレグレ・高橋俊行監督インタビュー

緊急事態宣言も解除され、ジュニアユースにおいても少しずつではあるが「サッカーのある日常」が戻ってきつつある。今後も一層の注意を払いながらではあるものの、より本格的な再開、リーグ戦の開幕も待たれる中で、今回からクラブチームの指導者の方々によるインタビューリレーを実施。こんな状況だからこそ、改めて各チームが大切にしていることなどを訊いた。第1回は今季FC東京入りした紺野和也の出身チームで、埼玉県1部リーグを戦うCAアレグレの高橋俊行監督にインタビュー。アレグレというチームが持つ「色」について迫った。(※このインタビューは各クラブご協力のもと、電話取材にて行われたものです)

アレグレ=「陽気で楽しい」

―チームの特徴、哲学を教えてください。

チーム名のアレグレ(ALEGRE)はスペイン語で「陽気で楽しい」という意味です。チームの名前は飾りでもおまけでもありません。みんなが楽しいと感じる場でなければこのチーム名をつけることはできません。だからこそチームの名前にウソをつかないことを大事にしています。

単純に楽しさを「10」知る子供たちは頑張ることも「10」できるとするなら、「100」の楽しさを知ることができた時には頑張ることも「100」できて、また大きな夢であるプロになりたいという想いもまた「100」持つことに繋がると思っています。

写真提供:アレグレ

「中学生は身体の成長期よりも心の成長期」

―子供たちへのアプローチについて。

中学生という時期はよく身体の成長期というような表現をされますが、実際は身体の成長以上に心が成長する時期になります。だからこそクラブは「子供たちの心」を大事にしています。大事なのは指導者の「上手くさせたい」「勝たせたい」ではなく、子供たちの「上手くなりたい」「勝ちたい」という、その想いを大きくすること。そのための「子供たちの心をくすぐる言葉」を大切にしています。

これは余談ですが、指導者を意味する「コーチ」の言葉の語源は「馬車」から来ています。例えるなら運転をする人が指導者であり、乗る人が選手になります。その時に行き先を決めるのは運転をする指導者ではありません。乗る人である選手です。選手が望む場所に送り届けてあげること、砂利道で近い道があったとしても、平らで遠い道の方が乗る選手にとって良いのであればそのアプローチをするのが指導者のするべきことだと思います。

中学生という成長期において、身体の成長期が故に怪我が生まれやすいことがあるように、心の成長期だからこそひとつの言葉の表現として「心に風邪をひきやすい時」でもあります。特にいまの子供たちは自分が心に風邪をひいていることに気づけない子供たちも多い。良くないことをしても、良くないと気づけない。風邪のひき始めや小さな風邪は治りやすいかもしれませんが、そこに気づけないまま大きな風邪になってしまうと治りづらくなってしまいます。だからこそ指導者がそのような子供たちの小さな風邪に気づいてあげて、そして「言葉という薬」を子供たちに伝えてあげることが大きな風邪にならないことに繋がる。ここはクラブの指導者がとても大切にしていることです。

また子供たちに強く伝えるのは「人としての成長」です。

例えば「頑張れる人」と「頑張れない人」、「自分のプレーをこだわる人」と「自分のプレーをごまかす人」、「自分を変える勇気を持てる人」と「自分を変える勇気を持てない人」、「上手くいかないことに向き合える人」と「上手くいかないことに向き合えない人」、また「人がやりたがらないことを進んでできる人」と「人がやりたがらないことを進んでできない人」がいたら、どちらの人の方がサッカーを上手くなれるのか。どのような人なのかによって、サッカーが上手くなれる大きさは違う。だから「サッカーが上手くなれない人」ではなく「サッカーが上手くなれる人」になるために「人としての成長」はとても大事です。サッカーよりも大事なことはいっぱいあります。そしてサッカーよりも大事なことを大事にできなければ、それはサッカーの成長に繋がらないと子供たちに伝えています。

「心をくすぐる」言葉の引き出し

その中で「言葉の引き出し」は大事にしていて、同じことを伝えてもその言葉の表現によって伝わり方は違います。例えば「頑張れ」という言葉に対して子供たちが「頑張ろう」と思えばそれが結果だし、右から聞いて左に聞き流されてしまったらそれも結果だし、「頑張れないよ」と言われてしまったら結局はそれが結果になる。言葉の意味(結果)は発している側が決めるのではなく、聞いている側が決める。だからこそ子供たちの「心をくすぐる言葉」の引き出しを持てなければ、結果的にその言葉の意味、結果が子供たちにまで伝わっていかないんです。

サッカーの知識や引き出しを「10」持てていても、そのことを伝える言葉の引き出しが「5」しか持てなければ結局は子供たちには「5」にしか伝わらないし、「10」の熱を持った熱い言葉でもその熱を伝える言葉の引き出しも同じように「5」だったら結局は「5」になってしまう。「矢印の向け方」や「上手くいかないことにどう向き合うか」、また「相手をどう見るか」、「器の大きさ」などを「心をくすぐる言葉」で伝えることで、より子供たちにその結果と意味がきちんと伝わるようなアプローチを心がけています。

大袈裟に言えば同じ言葉を10人に伝えても、もしかすると10通りの結果になってしまうので、子供たち「ひとりひとりとの会話」も大事にしています。

自分たち指導者のかける言葉が子供たちにはすごく大事だということは各指導者にも伝えていること。何気ない言葉であっても、その何気ない言葉が子供たちにとっては大きな意味を持つことにもなる。だからこそチームが大事にしていることは残念ながらサッカーの会話はひとつもなく、サッカーではない会話で終わってしまうという感じですね(笑)。ただ自分はこのサッカーではない会話が、やっぱりこの中学生という時期は大事だと思います。

―ここまで心へのアプローチを大事にするクラブもなかなかないと思います。

そこはクラブが大事にしていること、クラブの色になります。

「11分の1」の「個の色」を磨き上げる

―サッカーの部分ではどういったことを重視しているのでしょうか。

「個の色」というのはチームとして一番大事にしています。子供たちひとりひとりが「自分はここが得意だ」「ここは絶対にみんなに負けたくない」というような自分の色を持っている。

その「自分の色」に対して、システムであったり、戦術といった「チームの色」もある。11分の11というのがチームという色なのであれば、そのチームの色よりも「11分の1」という「個の色」を大事にする。大事なことはチームの色を強くしてしまって、個の色を消さないこと。例えばドリブルを色に持つ選手に対して「パスしろ」とチームの色を求めて個の色を消してしまうようなことは言いません。

またその色についても特徴を持とうとか、子供たちにそういうアプローチをされるクラブはあるかもしれないですが、「その色の強さが大事」で、ちょっと上手いとか、ちょっと速いとかという弱い色じゃなくて、「強い色」を持つことが大事。オーバーに言えば相手がどんなチームでも自分の色を表現できる色なのか。相手によっては表現できて、相手によっては表現できない色なのか。ただただ個の色を持とうだけじゃなく、強い色を持つことを訴えています。

Jユースや高校のスカウトも11分の11というチームを見に来られるのではなく、「11分の1」を見に来られています。だからこそその11分の1の色が強い選手がまた評価される。子供たちを次のステージに繋げるからには11分の11の色じゃなく、11分の1の個の色を強くしなければいけないと思っています。

魔法の練習はない。そこにどう取り組むか

あと自分は「どんな練習でも上手くなれる」という話をよく子供たちに伝えています。

というのも同じ練習を同じ時間やっても、同じように楽しくて、同じように上手くなれるわけではありません。単純に同じ練習をしていても「子供たちの声が多い練習」と「子供たちの声が少ない練習」とではどちらの方が楽しいのか。「子供たちが頑張っている練習」と「子供たちが頑張っていない練習」、「子供たちに競争がある練習」と「子供たちに競争がない練習」とではどちらの方が上手くなれるのか。

例えばバルサの練習をしているけど全然頑張らない子供たちと、ただただ普通の練習をめちゃくちゃ頑張る子供たちと、どっちの子供たちの方が上手くなれるのか。バルサの練習をしているから上手くなれて、普通の練習だから上手くなれないのではない。指導者は練習を見るのではなくて、子供たちを見なければいけない。練習で何をやるかもとても大事ですが、それよりも大事なことは子供たちがその練習をどう取り組んでいるかであって、その取り組み方によって「楽しさ」と「上手くなれる大きさ」は違います。

上手くなるために大事なことのひとつは「楽しさ」。あとは「上手くなれることを繰り返すこと」。ただ練習をすれば上手くなれるなら、みんなが同じように上手くなれる。でもなぜそこに差が生まれるのか。それはひとりひとりの頑張っている大きさが違うから。楽しさと上手くなれること、頑張ることの繰り返しで「サッカーは必ず上手くなれる」ということを伝えています。

そのひとつとして1年生の初めに必ず「テニスボールのリフティング」をやっています。もちろんそれを行うことによって、ボールコントロールであったり、技術的な要素も上手くなれるんですけど、ただそれが目的ではありません。サッカーは上手くなっていることがわかりづらいスポーツだと思うんです。例えば陸上だったら何秒速くなったとか、何m高く飛べたとか、上手くなっていることが数字で表れるけれども、サッカーはそういうふうに数字で表れることがほとんどありません。でもリフティングは数字で表れる。1年生も初めは10回、20回しかできないテニスボールのリフティングが1ヶ月やっていくとそれこそ100になり、200になり、1000になりという子供たちが出てくる。そうやって頑張っていることが数字で表れてくれるので、子供たちが「頑張っている大きさ」が「上手くなれる大きさ」に繋がることを感じられるんです。だからこそまずそこを子供たちに感じてもらうためにテニスボールのリフティングをやっています。

選手たちの可能性を広げる高校・Jユースとの繋がり

―進路についてもお話をおうかがいできますか。

やはり子供たちの大きな夢であるプロに向けてはこの中学生3年間だけではなく、次の高校への進路がとても大事になります。そういった部分ではJユースや高校のスカウトに試合を見に来ていただける機会があります。

昨年は前橋育英高校、尚志高校、市立船橋高校、山梨学院高校、矢板中央高校、鹿島学園高校、関東第一高校、日体柏高校、中央学院高校、武南高校、西武台高校、正智深谷高校、浦和学院高校、浦和南高校、浦和西高校、浦和東高校といった高校と練習試合を行いました。

またクラブでは下の学年から上の学年に入る選手はいますが、AやBといったチーム分けはせず、高校との練習試合には3年生みんなで行って、もちろんみんながゲームに出場します。そのため公式戦でゲームに関わっている時間に関係なく3年生みんなを見てもらえて、いろいろな高校から子供たちのその個の色を評価していただいています。

浦和東・古澤将吾選手

今年浦和東高校のキャプテンをしている古澤将吾は山梨学院高校に進んだ鈴木健世と、一個下に一昨年のキャプテンでその後流経柏高校に行った石川陽立という2人のFWがいたので常に公式戦に出るような選手ではありませんでした。それでも古澤はフィジカルの強さやヘディングという色を持っていたので、それを浦和東高校には評価していただいて、2年生から10番をつけていますからね。

今年も眩いばかりの個を持った選手たちのプレーに注目!

―最後に今年についてお話をいただければと思います。

正直このような状況なので自分は本当に子供たちみんなとまたクラブでサッカーができる日と、グラウンドに子供たちの笑顔が溢れる日が1日でも早く来ることだけをいまは願っています。

一押しは正直みんなです(笑)。3年生は新人戦でアルディージャにも勝つことができ、本当に「個」という色を強く持っている選手が多くいます。3年生は2年生の新人戦で試合をした時にちょうどコーチに赤ちゃんが生まれて、それを聞いた子供たちがこちらからどうこうではなく、ゴール後にそのコーチの前でゆりかごダンスをやって、それを見たコーチも少し涙目になっていました。自分は本当に良い選手に恵まれていると思います。

写真提供:アレグレ

2年生においては昨年U-13関東リーグが悔しい結果になったのでこの結果をこれからに繋げていこうと思いますし、1年生は元気な選手が多くいるのでとても楽しみにしています。

―今回いろいろお話を聞かせていただいていて、心へのアプローチであったり、子供たちの意欲を引き出すのがすごく上手いクラブだなと感じました。

結局指導者はその「きっかけ」を作ることが大事。何か言葉を伝えて「頑張ろう」というのもきっかけ、時に試合に負けてそこからのアプローチから「もっと上手くなりたい」というのもきっかけ。どれだけ子供たちが変わろうと思えるきっかけを作ってあげられるかが、子供たちの上手くなることにも繋がると思うので、何かをさせようとかではなく、子供たちが心を変えようとするきっかけをより多く作れればなというふうには思います。

先程の会話についての部分も含めて、ほかのクラブチームとは少し違う色と空気を持っていて、少し違う角度から子供たちとサッカーを見ていると思います。例えば同じものを見ていてもその見る角度によって見えるものはもちろん違う。そこに魅力を感じてくれる子供たちやその子供たちを支える保護者の方も含めて、本当に嬉しいことに毎年のようにセレクションに多くの子供たちに参加してもらっています。

結果に魅力のあるチームはもし負けてしまえばそこに魅力はなくなってしまうけれども、チームに魅力のあるチームは結果に関係なく、子供たちは来てくれる。練習会では保護者の方にチームの名前や成績ではなく、チームを見てくださいと伝えますし、指導者にも「結果に魅力のあるチームはやめよう」「チームに魅力のあるチームになろう」というのはよく言いますね。

―そこの色と空気感がアレグレというチームの一番の根幹なんですね。

そうですね。今日お話をさせていただいた「楽しさ」の部分や、「子供たちの心をくすぐるアプローチ」、「11分の1」、「上手くなれる大きさ」などが、このチームの魅力だと思います。

石黒登(取材・文)

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