藤島崇之 昌平高校監督ロングインタビュー(後編)

県内5冠の自信を持って全国に挑む

今年は新人戦に始まり、関東大会予選、インターハイ予選、選手権予選、リーグ戦と前人未到の県内5冠を達成した昌平高校。目前に迫ったプリンスリーグ参入戦、そして日本一をかけて挑む選手権大会を前に昌平・藤島崇之監督にロングインタビューを行い、藤島監督について、サッカー理念、選手権に向けた意気込みを訊いた。(interview by 石黒登)

3冠王者として挑むもインハイでは悔しい経験


——新人戦では佐相くんが得点能力を開花させて優勝しました

やっぱり自覚的に思ってやっていますし、あとはそこにもうラストイヤーだからやらなきゃいけないというところもあると思います。去年は全国3位までいって、それでも悔しい思いをして帰ってきて、「あぁ、これは優勝しかないんだな」という感覚は生徒たちにもあったと思いますし。あとはトレーニングレベルが上がりましたね。というのもやっぱり針谷とか松本があの立ち位置の中でJクラブに引っ張ってもらえたのを生で見ているので、逆に言えば活躍すれば絶対にその場が生まれるという状況を、活躍をすればというところで、夢を見てサッカーをできるという状況はよかったんじゃないですかね。目標は高くなったと思いますね。

——勢いそのままに関東予選も勝って本大会も初制覇しました

関東大会もかなり厳しい試合で勝てたというので大きかったですね。例えば日体柏は技術も高かったですし、ハードな状況もありましたし、バランスのいいチームだったので。しかも0−2から逆転して勝ったというのもすごく大きかったかなと思っています。あのような経験がこの前の選手権決勝もそうですけど、同点に追いつかれても別に慌てずにいけた要因なのかと。慌てないっていうことは確固たる何かを持ってなければいけないというところを、うちはやっぱり技術力だっていうところはフォーカスして出せるようにやっていて、いまも継続的にやれている部分になっているかと思っていますね。

——総体予選を制して埼玉3冠。しかし本大会では初戦の2回戦で敗退でした

予選はそれなりに力が発揮できた試合展開ではあったと思いますけど、やっぱりそのあと本戦でうちがよくなかったので。その前までそんなに悪いわけではないんですけど、何か停滞している感はあったのでそれが出てしまったかなと。勇気を持ってやっていないという言い方は変ですけど、ボールはつなぐけどというところで、ボールは持つけど結果ゴールに向かえないとか。やられたショートカウンターの部分とか、ケアはしているけどやられるという。もちろんそこには相手の強いパワフルさだとか、粘り強さもありますけども、やられちゃいけないところでやられたというのも結果として受け入れないといけないかなと。やっぱり振り返るとあの時こういうイメージをもう少し共有しておけばよかったなというのは多々ありますね。

——本大会では山下(勇希)くんの不調も響きました

その兆候はあったんですけどね。だからインターハイが終わって、もうこれは山下をひとつ前に置いちゃおうかなと。というのも彼は結構ドリブルとかがいいんですよ。でもインターハイの時は彼がボールを持つとみんなピタッと止まるんです。それでそこから原田(虹輝)、古川(勇輝)に切り替えたら循環が良くなってボールが動く、ボールが動けばフリーになる選手も増える状況にもなって山下がフリーで受けたらお前は点を取りに行けっていう話をしていたので。その上でインターハイに負けたあとにちょっとしたフェスティバルに行ったり、それこそ全国の強豪チームとかとやらせてもらっていましたけど、内容的にも選手が何人か抜けていたんですけど、それでも結構戦えるものだなと思いながらやっていましたね。だから夏を機にある意味悔しさというよりも不甲斐なさと、質やクオリティを上げていかなければいけないというところの実感がいまのよくなってきている状況にはつながっているかなとは思いますね。

——S1で西武台高校に負けたのも本大会の前のタイミングでした

あの試合も映像を見直すと悪くはないんですよ。取りきれないとか。もちろん崩しはしていて、最後のシュートの質が低いとかというのはありましたけど、別に悪くはない、けども……というところなんですよね。何か勝ちきれないところでやっぱり最後は得点。最少失点でほぼやっているので、取られても1点というところだと、攻撃陣が奮起しなければいけないというところもわかっているとは思います。あとうちは攻撃と守備のバランスは大事にしているので、その辺のバランス感覚的な部分も悪くはないけど、そこを崩しても取りにいかないといけないとか、一本槍にボールをつなぐというところだけじゃなくて、ゲーム全体のコントロール、90分間のコントロール、高体連のゲームで80分間のコントロールということはいまももちろん話をしています。前も話はしていましたけど多分そんなに理解はなかったかなという感じですね。ただその辺は別に90分を使って勝てばいいという話はしているので、選手権予選決勝の浦和西戦も80分間で勝たなくても別にいい、延長もあるだろと。PKまでトータルして別に勝てばいいんだと。慌てるなよという話で事前にして入っていたので。

貫禄のプレーで選手権制覇 リーグも制し埼玉5冠

——そういった中で選手権を迎えました

3回戦の国際学院戦もチャンスメイクしながらもなかなか取りきれず、セットの流れの中で取られて。これで流れを渡すかなと多分みなさん思っていたかもしれないですけど、そんなに慌てていないというところはありました。こういう展開になってもちゃんと対応しようというくらいのスタンスでいたので。点差より自分たちが最後決めるところを決めて、かつ、最後の質を上げるというところをフォーカスしていけば結果は出るかなというところはありましたね。相手を見て判断するよりも自分たちがやっていることの質を上げろというところだけでやっていたので。それが最後の山下の個の打開から得点につながったのかと思います。

準々決勝の埼玉栄は中盤のところにも前に早い選手がいますし、トップも個の打開力は高い。そういう状況をどううちがコントロールしながらケアしていくか。かつ、やっぱり自分たちがボールを持つ時間を長くしながら仕掛けの部分を明確にできるかというところを考えていたので、その中でセットにしてもそうですし、セットのこぼれから流れの中からも点が取れていますし、決めるところを決められてというのはよかったのかと思いますね。

——埼玉栄戦ではかなり前からのディフェンスが効いていました

去年との違いはディフェンス的な部分が整理されているのはあるかもしれないですね。佐相が結構追うので、やっぱりそこの限定があって少し前からできている。去年はガンガンとハイプレスで行くことはほぼなかったですね。誘い込みながらディフェンスをしていましたけど、いまは両方とも対応できるようにはなってきています。プレスをかけて前線でロングフィードを蹴らせてっていう状況もありますし、わざと縦パスを入れさせてそこを奪いにいくとかもできる部分も増えてきたし、あとは前線のハイプレスで潰しにいくというのもまだまだですけど、そういう部分は選択肢として、ディフェンスも増えてきたかなと思いますね。

——武南戦は大量5得点を奪って勝ちました

武南戦はいい時間帯に点が取れたというのが一番の状況として、もちろんサイドからの展開で奪ったシーンなんかは結果として相手のミスのように見えますけど、やっぱり佐相のひとつ、動き出しの質の部分になってくるので、普段からトレーニングレベルでやっていることをちゃんとゲームの中で発揮するというところがある意味できたことかなと思いますね。あとはセットや森田の技術的な部分も含めて、しっかりと十分発揮できた試合かなと思います。

——山下くんがつかれる中で森田くんはいい意味で形を崩しながら躍動していました

武南がマンツーマンで山下もそうですし、サイドハーフの選手も役割で見にきていたので、ポジションを崩せという話をして。逆にうちはサイドバックの攻撃参加もひとつ形として、塩野なんかも運動量も豊富ですし、堀江(貴大)なんかもスピードもありますし。その状況が生かせるのはサイドハーフのインサイドの取り方かなと思っていたので。山下にもフルタイムで絶対に止められることはないという話をしていましたね。

——決勝は浦和西高校との対戦になりました

理想通りになるとは思っていなかったので、あのスコアになっても勝ち切るというところが大切でした。別にいつも以上のことは求めていないというところは話をしていましたし、いつも通りでいいと。トレーニングでやっていることが出ればちゃんと力を発揮できるという話はしていたので。その力の発揮というところはトレーニングの部分の質の高さというか、だからこそトレーニングレベルを常に大切にしろという話はしてきたので、そこで慌てずにできる状況こそ、勝負、勝利につながるところかなとは思っていました。

浦和西もブロックを敷きながら、いい距離感を保ってきてこれは動き出しにくいなという状況はありました。うちもサイドハーフのところでもう少しラインを取ったりという動きもあったらよかったかなというところは反省としてありますけど、でもやっぱりすごくいいチームなのでうまく守られたというか、良さはうまくすべてが発揮できなかったかなとは思います。ただやっぱり先制点を取ったのはセットプレーからですし、次に取られても1分後に取れたというのは最後は技術が出たかなとも思うので、そういう意味では今後につながるという部分で言えばやっぱり森田の成長はいい部分だと思いますね。

——今大会では森田くんが大爆発しました。

もともと彼はよかったですから。彼は1年生の4月頭のリーグ戦にスタメンで出てますからね。1年生の時はちょっと腰を怪我して、半年くらいやれていなかったんですよね。細いですけど技術は高いと思いますよ、うちの中でもトップトップになってくると思いますね。ああいう選手が伸びてきてくれたから、いま良い形になっているのかなと思う部分はあります。

いざ、プリンス参入戦、そして選手権へ!

——今年はサブも含めて意識が高さを感じます。

モチベーションは高くはなっていると思います。リーグ戦も最終節前の西武台との試合が正念場だったんですが、その試合は石井(優輝)が大学入試で出ていないんですよ。これはどうしようかなと思ったら河合(友也)がよくやってくれましたし、最終節の武南戦は全部入れ替えて出してもそれなりにやってくれた。トップトップとはサッカーの質は違いますけど、選手が違うのだから当たり前と思いながら、そういう意味ではいい部分は出てきたとも思います。チームの練習、トレーニングレベルの高さがある意味、チームにとしての活性化にもつながるなと思っていますね。1年間やってきたベースは大きくは変わらないと思いますけど、そのベースをアップできるような選手が出てくれば1ランク、2ランク、大会を通して成長していける状況にはなるかなと思うので、そこはそういった意味では期待はしていますね。

——全国の前にまずは参入戦が待ち構えています。

選手権も大切ですけど、1年間の長丁場を考えたらプリンスリーグに参入できればそれは次年度のいい経験になる。選手も公式戦でもう負けないという気持ちも強いですし、去年は上がれる寸前のところで負けている悔しさもあります。プリンスに上げて選手権も勝って終わりたいというのが彼らの理想だと思うので、しっかりと充実した形でチームとしての層も上げながらというのはベースで考えていかなければいけないかなと思いますね。

——全国を前に強度の高い試合をできるというのも大きい。

大きいと思いますね。やっぱり本気の試合の方がしっかりとした充実した形が出るという部分はもう間違いないと思うので。どことやってもというところは変えずにいければとは思います。ただ矢板中央さんも身体も大きいですし、パワフルな状況というのは変わらないと思うので、そこでうまく僕らもちゃんと自分たちのスタイル的な部分だけにこだわりすぎず、やっぱり幅を広げる展開ができればと思っているので。なんとか勝ちたいなと思いますね。

——それが終わればついに選手権が始まります。

広島皆実さんは全国優勝経験のあるすばらしいチームだと思います。僕も選手としての年越しもしていないのでそこは鬼門の部分になりますが、ただチームとしてのベクトルは常に日本一というのは一番弱い時代から言い続けているところで、逆に言えばそこが達成できるチャンスがあるというところは間違いないので、ひとつひとつですけどそこを見据えながらチームとしてのベクトルは合わせながら、しっかりと頑張っていきたいなと思いますね。

——やはり日本一を求めていくと

やっぱりやるからにはというところですね。選手権予選で埼スタではやらせてもらっているので、あそこでやらせてもらったらまたやりたいと思いますよね、高校生だったら間違いなく。そういうモチベーションはすごく重要かなと思うので。注目をしていただけるということは逆に言えばプレッシャーにもなりますけど、そのプレッシャーが選手の固さにつながらないようにするためには、最初に話したように技術レベルの発揮ができる環境をトレーニングレベルでしっかり作り出せるかだと思っているので、なんとかそこをしっかり我々がいまできることをちゃんとフォーカスして完成度を高められればと思っていますね。

石黒登(インタビュー・文)

(2017年12月昌平高校にて)