埼玉の高校は十分全国で勝つレベルにある<指導者インタビュー・聖望山本監督>

聖望学園高校サッカー部 山本昌輝監督

ここ最近の全国大会で苦戦を強いられている埼玉県勢。しかし、聖望学園高校・山本昌輝監督は「噛み合わせ一つで勝ち上がる力は十分にある」といいます。今年の全国高校総体(インターハイ)で全国大会初出場を果たした同監督に、チームに関すること、そして埼玉サッカーに対する熱い想いを語ってもらいました!(※このインタビューはインターハイ前に行われたものです)

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原点はトータルフットボール

——まずは聖望学園高校のチームスタイルを教えてください。

山本:大学時代にアーリ・スカンズ氏(元大分トリニータHC)の指導を受けて、オランダサッカー、いわゆるトータルフットボールに魅力を感じました。聖望学園でも攻撃スタイルをベースに、フォワードからディフェンダーのライン間をコンパクトに保ちながら相手陣地でボールを奪うこと、後ろにできたスペースはゴールキーパーも含め11人で埋めながら相手の嫌がるスペースをついていけるようなチームを目指しています。

——インターハイ予選でも高いディフェンスラインが印象的でした。

山本:よく「オフサイドトラップを狙って」ということを言われますが、チームとしては全くそこを狙っての戦術ではありません。コンパクトにしている一番のメリットは、相手陣地に近いところで守備にかける人数を増やせること。相手がいい状態で前進できないような形、常にプレッシャーを受けながら攻撃しなければならないというような状況を作り出すために、できるだけ前に人数をかけたいという意図でやっています。

——それを実現させるためには高い連動性が求められます。

山本:マイボール時の距離感、ディフェンスラインのアップダウンについては特に時間をかけて練習しています。とは言っても時間のかかる作業なので、今まではいつも形になるのが選手権の時期になってしまっていました。しかし、昨年秋に人工芝のグラウンドが完成し、照明も全面につくようになって、効率性を重視した部分と徹底的に落とし込まなければいけない部分のバランスがだいぶ近づいてきたのかなと感じています。

聖望学園の下川崎グランドサッカー場は昨年秋にフルコート1面にフットサルコートが人工芝となった。

聖望学園の下川崎グランドサッカー場は昨年秋にフルコート1面にフットサルコートが人工芝となった。

目標の明確化、選手の目の色が変わった

——山本監督の指導方針について教えてください。

山本:僕の指導の仕方としてはこういうことをしたいというのは示しますが、それでは、そこに近づけるためにどうしたらいいかというのは選手にやってほしいと考えています。今年の選手たちは新チームになった時から自分たちでミーティングをやったり、練習に関してもこちらから多くを言わなくても勝手にできる選手たちだったので、そういう意味では伸びるかもしれないなと感じていました。個人の能力でいけば今までと比べても特出した子がいるわけではないですが、だからこそ組織としての強みを見出そうと考えて、素直に取り組んでくれる子たちが多かったのでそこがうまくはまったのかと思います。

——選手たちの自主性を大切にしているんですね。

山本:時にはオーバーコーチングになってしまう時もありますが、一番大事なのは11人全員が自分たちで判断できるような状況を作ることです。選手一人一人が考えて、そういった選手たちが集まって議論をしてチームになる。監督の兵隊がいっぱいいるという状況じゃなく、監督がいてその周りに選手たちがいるような状態を作りたいと思っています。

——他に大事にしていることはありますか?

山本:「勝負事は準備で決まるぞ!」というのはずっと言っています。あとは目標設定。ここ数年「全国出場」を目標にやってきましたが、最初の頃は何試合勝てば全国に出られるか選手たちは知らなかったんですよ。「4試合勝ったらお前ら全国にいけるんだぞ!」と言った時に選手たちの目の色が変わった。今年のインターハイ予選に関しても、浦和東高校に勝って初のベスト4だったんですが、もっと大騒ぎになるかと思ったら「よし、あともう一個だ!」と言ったんです。僕自身も全国にいくつもりではいましたけど、本当にいけるんじゃないかと思ったのは、あの瞬間の彼らを見た時でしたね。

 

「噛み合わせ一つで勝ち上がる力は十分にある」

——埼玉の高校サッカーについて山本監督の意見を聞かせてください。

山本:僕が聖望学園に来て一番始めに建てた目標が『全国優勝』。だけど元をただせば埼玉で一番になりたいと思ったんです。今までの歴史を紐解いても、埼玉で勝つことの重みを感じています。やっぱり埼玉で一番を目指すんだったら、全国で一番を目指さなければダメだと思い、選手たちにもこれが最大目標だと話しています。

——しかし、ここ最近は埼玉勢の全国大会での苦戦が続いています。

山本:いろいろ言われてはいますが、僕は埼玉って相当レベルが高いと思っています。16強以降は全国大会に出る力のある高校がたくさんありますし、面白いことに各チームにそれぞれの色がある。今は全国大会で勝てていない時期が続いているかもしれませんが、これも噛み合わせ一つで勝ち上がる力は十分にあると思います。というのも、流通経済大学柏高校の本田裕一郎監督が『オーシャンカップ』という大会を開いていて、年に2、3回呼んでもらっているんですが、全国の強豪校が集まる大会でうちもやれている部分もあります。埼玉の高校は分散化しているから全国に出るのは難しいけど、全国に出たら勝てないだとか、そういう通説みたいなものは全くもって違うと思います。

インターハイでは初戦で徳島市立高校を下し全国初勝利。続く鹿島学園高校にPK戦の末敗れ、目標のベスト8には手が届きませんでしたが、全国大会の常連校を相手にあと一歩というところまで迫りました。「選手権までにもう一回り成長できる可能性がある」という今年の聖望学園サッカー部。冬の選手権が楽しみになってきました!

石黒登(取材・構成)

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