成徳深谷 為谷洋介監督インタビュー

就任14年目でチームを県No.1に

新人戦では支部からの参戦ながら、本大会で浦和学院、昌平、浦和東、西武台と強豪校との接戦を粘り強い守備で制し、初の県タイトルを獲得した成徳深谷高校。就任14年目でチームを県No.1に導いた為谷洋介監督に新人戦のこと、指導理念、そして今シーズンについて訊いた。

一度は諦めたサッカーの道に再び戻って指導者の道へ

―成徳深谷高校は98年にサッカー部ができたとのことですが、為谷監督がチームに関わるきっかけはなんだったのでしょうか

私が深谷のサッカーOBだということで、声がかかったのがそれから5年後くらいでしたね。その当時は都内で働いていて教職免許を持っていませんでした。指導者のコーチライセンスを取りに川越初雁高校でラインセンス講習を受けている時に、そこにいま本庄東のコーチをやっている小林武男先生がいらして、成徳深谷がサッカーを強化しようとしているんだけどお前どうだって言われたのがきっかけでした。そこから履歴書を送って、教職免許を持っていなかったので、外部コーチから始めました。私自身もちょうど次の職に行くとしたら30歳までにどうにか片をつけたいなと思っていました。30歳をとにかく目標に変わろうと思っていたので、それを決断したのが28歳だったと思います。そこから深谷に引っ越してきて、教職の免許をとるための勉強をしながら監督を始めました。

僕はプロを目指していたんですが、プロにはなることが出来ずに、サラリーマンになりました。でもやっぱりなんか違うんだよなと思いながら、その中でいろいろと自分の人生を模索しながら30歳をめどに、次の転職をするんだったらこのタイミングしかないなということで思い切ってこの道に進みました。

凡事徹底― 当たり前の質を上げる

――為谷監督の指導理念を教えてください。

3年前に「凡事徹底」というスローガンを作ったんですよ。当たり前のことを当たり前にやろうと、当たり前の質を上げようということでその言葉を掲げたんですけど、僕はそれかなと思います。特に成徳に来る選手はどうしてもトップトップではない子が多いから刷り込みが大事だと思うんですよ。当たり前の基礎的なことだけどそれを人並み以上に、強豪校の人並み以上に上げていくことが大事だと思うので、その言葉は好きなんですよね。

――その辺りが新人戦は発揮されたと。

かなと思います。守備の刷り込みもそうだし、当たり前の基準をこっちで設けて、最低ラインというところは選手も理解してくれたと思うので、そこは少しその言葉に近づけたかなとは思います。いままで破れなかった壁が少し破れたので自信に繋げられたというところと、今後はさらに凡事徹底の質をもう1ランク、2ランクに上げられるようにしていければなとは思います。それは別にプレーだけじゃなくて生活面でも言えること。結局サッカーを通した人間教育だと思うので、そういったところは落とし込んでいきたいと思います。

――グラウンドなど制約は多いと思いますが、練習で徹底していることはありますか?

やっぱり反復回数を増やすこと。そのためにはグラウンドの中でダラダラしたことはしない。僕は「グズ」と「ボケ」って言うんですよ。グズグズしてるっていうのと、ボケてるっていうのは必ずそれは隙になる。だからそういう隙を見せないようにするということは練習中から言っています。それで逆に相手の隙を、どんな強豪校でもグズった部分とボケの部分って出てくると思うので、そこは逆につけられるかなと。そのためにはこっちがグズとボケの状況を少しずつ排除していかないといけない。それは日々の練習からじゃないとダメだと思うんですよ。

うちの練習は同じトレーニングを長い時間やることが多いので飽きちゃうんじゃないかと言われることもあるんですけど、まずそこの段階が刷り込まれないと次の段階にいけないなというのが私の考えにある。そのこだわりは持ってやっていこうかなというのはあります。

あとはチーム内のコミュニケーションですよね。刷り込みっていうとどうしてもこっちからのティーチングみたいなイメージになっちゃうんですけど、そうじゃなくてそれを受け取った人間がどうやってアウトプットしていくのかっていうのも大事だと思うので、そこのところは判断だと思います。それはトレーニングの中でいまのは良い判断だったな、いまのはどうだったということは問いただしながらやるようにはしています。あとは選手の中でそういう話が自然とできてくるようなコミュニケーションが取れればいいなとは思いますね。

サッカーってどうしてもいろいろなことの複合になってくるから、最終的にはプレーの中でそいつが判断をいくつ持っていて、どの判断をチョイスするのかっていうことが大事だと思うので、それはトレーニングの中で刷り込みながらゲームでオープンにして、反省をもとにまたやっていくみたいな、そういうサイクルでやっていくようにはしています。

――現役時代に指導を受けた大山照人監督からの影響というのは?

武南高校の練習ってピンと緊張が張り詰めているんですよ。あれは大山先生しか作れないと思います。常にアラートな状況でトレーニングをしていたから、大きな公式戦でも緊張しないですよね。なんかこう相手のプレーが遅く見えたりするくらい動けていた感覚があります。よく「練習は試合のように、試合は練習のように」と言いますけど、それがもう自然にできていたので、そういうところで経験できたことはすごく大きいなと思います。やっぱりその環境って大事ですよね。大山先生のもとで全国大会だとか関東大会、インターハイも出させてもらえて、行ったものにしかわからない経験をたくさんさせてもらったなというのはあります。大山先生はすごくいろいろなことを俯瞰的に見られている方なので、常に頂点からの逆算ということはすごくされていた方だと思う。大一番の試合の前の接し方とかも全然やっぱり違うので工夫されていたんだと思いますね。いまでも直立不動になっちゃうんですけど、でも例えば大一番の前の試合のところはなんか変に優しかったりとかありましたね(笑)。

――そういった高校時代の経験でいまの指導に生かされているところはありますか?

高校時代はがむしゃらにやっていただけでしたけど、やっぱり監督はモチベーターじゃないといけないと思うんですよね。そういう意味では大山先生のモチベーターとしての力、イメージ力はすごいなと思います。よく選手を観察しているなというのは感じました。ちょっとしたことも見逃さない目は怖いなとは思ったんですけど、でも、そういう観察力がないとダメだと思うんですよ。気づかないふりとかそういう演技もしていたと思うし、逆にそこのところをガツンとこられたこともいっぱいあるし、愛のムチをくらったこともある。いろいろな日々のことの中でやっぱりよく選手を見ているというのはありました。

だから私も選手の様子は見ないといけないなと思います。機嫌を良くするとかそういうことじゃないけど、やっぱり見て「こいつなんかおかしいな」とか、「こいつなんか今日やけにハイテンションだな」とか、いろいろ見て観察した上で、じゃあどのようにアプローチしていこうかっていうことが大事なんだなというのは感じています。大山先生とは全然性格も何も違うんですけど、ただよく見るっていうことは大事だなと思いました。大山先生は見てないよというかもしれないですけど、僕の中ではやっぱりちょっとしたこちらの感じ方とか、考えとかを見抜けるなと、よく見てるなというのは感じたことがあったので、そのくらい見ているんだなというのはいま思うとあるんですよね。人間って安定しているわけじゃないから変化するじゃないですか。そこのところの浮き沈みが見分けられるようにしながら、人は十人十色なので人によって少しアプローチを変えられたらいいかなとは思います。その辺りはスタッフの力を借りながら、より人を変えていくアプローチをしていくということで、選手が人間としても選手としても成長していけるようにできればいいと思いますね。

――最後に直近の関東、そしてインターハイ、選手権に向けて意気込みをお願いします。

県No.1という目標を達成できたのは良い意味で自信として、またもう一回0からスタートするつもりでここから関東予選に向けて良い準備をしていきたいと思います。埼玉の代表になるというのが次の目標。簡単なことではないですが、やりようはあると思います。そこに向けてもう一回締め直してチーム一丸となってやっていきたいと思います。頑張っていきます。

石黒登(取材・文)

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